地球システムの中の人間 要約 意味調べノート 解説 あらすじ 筆者の主張

『地球システムの中の人間』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、実際に文章を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本文のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『地球システムの中の人間』のあらすじ

 

本文は、前段と後段の二つに分けることができ、さらに前段を二つ、後段を四つに分けることができます。以下に、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介します。

あらすじ

前① 生物の歴史上、当時生存していた種の大半が絶滅する大絶滅は、地球の物理化学的システムの異変による可能性が大きい。大絶滅が起こると、その時生存していた種の大多数が絶滅するが、生き残ったものの中からやがて新しい多数の種が生まれる。その結果、再び高度に複雑な生態系が成立する。

前② 地球の物理化学的システムと生物システムあるいは生態系とは、相互に密接な関係にある。

後① 生物種が相互に依存する関係は生態系と呼ばれる。生態系の概念あるいは生態学からは、世界観、自然観、あるいは倫理的な結論が導き出されることがしばしばある。

後② それには二つの方向がある。一つは生物間の生存競争を意味し、生物間で生存を賭けた闘争が常に行われており、その結果進化が行われるというものである。これは、いわゆる社会ダーウィニズムや白人優越論、人種主義という思想を生み出した。だが、生存競争は常に個体と個体の生死を賭けた闘争を意味するわけではない。また、このような考えは進化を進歩と同一視する傾向がある。

後③ もう一つは、これとは反対に生態系は生物種の共存と調和を表しているとするものである。ここからは、人間は生態系を攪乱したり生物種を滅ぼしたりしてはならないという倫理的な命題が導かれる。だが、生態系の論理は、決して予定調和を示すものではない。また、現在、地球全体の生態系を人間の力を除いて考えることは不可能である。生態系の論理の中には、人間中心主義の善も悪も存在せず、生態系の調和はすべての種の自己中心主義の衝突の結果として生ずる不安定な均衡にすぎない。

後④ 明確なのは、生態系の論理からは人間行動の倫理的規範を導くことはできないということである。

『地球システムの中の人間』の要約&本文解説

 

200字要約地球の物理化学的システムと生態系は相互に影響し合い、大絶滅を経てもやがて新たな生態系が形成される。生態系は生物間の生存競争や共存を含むが、そこには予定調和も倫理的善悪も存在しない。すべての種による自己中心主義が絶えず衝突することで、不安定な均衡が生じているにすぎず、安易にそこから道徳や行動規範を導くことはできない。したがって、生態系の論理からは人間行動の倫理的規範を導くことはできないのである。(198文字)

この文章は、「人間」と「地球の自然システム(生態系や物理化学的な仕組み)」の関係について考察したものです。特に、「人間は自然に対してどう生きるべきか?」という倫理的な問いに対して、「生態系の仕組みから何か正しい行動を導くことができるのか?」という問題を掘り下げています。

1. 地球システムと生物の関係

まず最初に、筆者はこう述べています。

  • 地球には大きな自然のサイクル(物理化学的システム)があり、それが原因で生物の大量絶滅が起きる。
  • しかし、絶滅のあとにはまた新しい命が生まれ、時間をかけて複雑な生態系が再構築される。
  • 地球の自然の仕組みと、生き物たちのネットワーク(生態系)は、密接に結びついている。

つまり自然界は、破壊と再生の循環を、長い時間をかけて繰り返す仕組みによって成り立っているということです。

2. 生態系の見方と人間社会への影響

次に筆者は、「生態系」について私たちがどう捉えてきたか、そしてそれがどんな考え方に結びついてきたかを二つの方向から紹介しています。

① 生存競争を強調する考え方

  • 生き物たちは限られた資源をめぐって争っている。
  • この考え方からは、「強い者が生き残る」という社会ダーウィニズムや、人種差別的な思想(例:白人優越論)に結びついてしまったことがある。
  • ただし、この見方は一面的であり、進化=進歩という誤解も含んでいる。

② 共存と調和を強調する考え方

  • 生態系を「すべての生き物がうまくバランスをとって共存している」と見る立場。
  • ここから、「人間は自然を壊してはいけない」といった倫理が導き出される。
  • しかし、実際の生態系はそんなにきれいに調和していない。各生物が自分勝手にふるまった結果、不安定なバランスが保たれているだけである。
  • さらに、今や人間の存在を抜きにして生態系は語ることはできない。

このように、どちらの見方にも一理はあるものの、生態系の実態はそれほど単純ではないと筆者は批判的に考えています。

3. 筆者の主張(結論)

この文章で筆者が最も言いたいことは、次の一文に集約されています。

生態系の論理からは人間行動の倫理的規範を導くことはできない。

つまり、生態系がどう成り立っているかを知っても、「人間はこうあるべきだ」「こう生きるべきだ」といった道徳やルールをそこから直接導くことはできない、ということです。

私たちはよく「自然の法則に従って生きるべきだ」とか「生態系のバランスを守ることが倫理的だ」といった言い方をします。しかし筆者はそれに対して、「自然や生態系のあり方自体に“善い”も“悪い”もない」と主張します。

自然はただ「そうなっている」だけであり、そこに私たち人間が倫理や道徳を持ち込もうとすると、かえって誤った思想(例:人種差別、予定調和の幻想)につながってしまう危険があるということです。

この文章は、人間が自然や生態系をどう理解し、それとどう向き合うべきかを問いかけています。筆者は、生態系という科学的事実から、人間の生き方の正解を導き出そうとする考えに慎重であるべきだと警告しています。

生態系や自然は、私たちが“倫理”を語るための根拠にはならない」——これが本文の中心的な主張です。

『地球システムの中の人間』の意味調べノート

 

【生態系(せいたいけい)】⇒生物とその生息環境が、相互に関係し合って成り立っている自然の仕組み。

【繁栄(はんえい)】⇒勢いが盛んになって栄えること。

【いうまでもない】⇒言わなくても明らかなことである。

【土壌(どじょう)】⇒植物が育つ地面。または、ある事柄が生まれ育つ環境。

【概念(がいねん)】⇒物事の大まかな意味内容や考え方。

【優勝劣敗(ゆうしょうれっぱい)】⇒強い者が勝ち、弱い者が負けるという自然の道理。

【困窮(こんきゅう)】⇒生活に必要なものが足りず、苦しむこと。

【命題(めいだい)】⇒ある物事についての論理的な判断を言語的に表したもの。

【いわゆる】⇒世間でよく言われている。一般的にいうところの。

【文明(ぶんめい)】⇒人類の生活や文化が進歩・発展した状態。

【征服(せいふく)】⇒力で相手を打ち負かして支配すること。

【優越(ゆうえつ)】⇒他よりすぐれていること。

【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒頭の中だけで考えていて、具体性に欠けるさま。

【観念(かんねん)】⇒頭の中でまとめられた考え。

【いわんや】⇒まして。なおさら。

【同一視(どういつし)】⇒異なるものを同じものと見なすこと。

【はびこる】⇒よくないものが勢いを増して広がること。

【思潮(しちょう)】⇒その時代や社会に広まる考え方の傾向。

【予定調和(よていちょうわ)】⇒あらかじめ決められた通りに、物事がうまく収まること。

【相互作用(そうごさよう)】⇒互いに影響を与え合うこと。

【手を加える】⇒何かに少し手直しや加工をすること。

【手を借りる】⇒他人の助けを受けること。

【放棄(ほうき)】⇒権利や義務などを自ら捨てること。

【主体的(しゅたいてき)】⇒自分の意志と判断に基づいて行動するさま。

【云々する(うんぬんする)】⇒あれこれと話題にすること。

【思い上がる】⇒自分がえらいと思って、いばること。

【錯覚(さっかく)】⇒実際とは異なるように感じたり思ったりすること。

【一見(いっけん)】⇒ぱっと見た感じ。ちょっと見ること。

【倫理的規範(りんりてききはん)】⇒人として守るべき善悪の基準となる考え方や行動の決まり。

『地球システムの中の人間』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①恐竜はゼツメツした生物だ。

ソウゴの理解が必要である。

ビミョウな違いに気づく。

④細胞がゾウショクする。

キンコウが崩れてしまった。

解答①絶滅  ②相互 ③微妙 ④増殖 ⑤均衡
問題2「地球の物理科学的システム」と密接な関係にあるものを本文中から三文字で抜き出しなさい。
解答生態系
問題3「このような考え方が、生物の種の間には密接な相互関係があり、~」とあるが、「このような考え方」とはどのような考え方か?
解答生物の間の生存競争の結果、進化が行われるという理論から、優勝劣敗の論理「力こそ正義である」という命題を導こうとする考え方。
問題4「もう一つの問題点」とあるが、ここでの「もう一つ」とはどのような問題点に対してか?
解答生態系の論理は、決してすべてが調和に向かっているという予定調和を示すものではないという問題点。
問題5

次のうち、本文の内容を最も適切に表しているものを一つ選びなさい。

(ア)生態系は本来、すべての生物種が調和しながら共存する安定した仕組みであり、人間もその調和を維持すべきである。

(イ)生存競争こそが生態系の本質であり、その過程で進化が進むのだから、人間社会でも競争を重視すべきである。

(ウ)生態系の中で人間は特別な存在であり、自然をコントロールすることでより良い進化を促すことができる。

(エ)生態系は生物種の自己中心的な行動がぶつかり合うことで成り立つ不安定な均衡であり、そこから人間の倫理的な行動規範を導くことはできない。

解答(エ) 本文では、生態系は予定調和的でもなく、倫理的善悪を内包するものでもないと述べられており、人間の行動規範を直接そこから導くことはできないという主張が展開されているため(エ)が正解。他の選択肢は、本文で否定されている考え方(調和の理想化や社会ダーウィニズム、人間中心主義)を肯定しているため不適切。

まとめ

 

今回は、『地球システムの中の人間』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。