真実の百面相 解説 要約 教科書 意味調べノート 漢字

『真実の百面相』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『真実の百面相』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『真実の百面相』のあらすじ

 

本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①カメレオンや着物の生地に本当の色はない。また、演奏会の生の音が、この座席でこそ本当の音だと言えることもない。物の色や音には、ただ一つの本当の色、本当の音というものは存在しない。真実は、一つという貧しく偏頗なものではなく、豊かな百面相なのだ。

②人間の真の姿もただ一つではなく、状況や相手次第でさまざまな形であらわれる。それらの断片を集めてとりまとめれば、人の百面相の真実ができあがる。

③世界の姿もただ一つではなく、百面相であらわれる。小石一つとってもその姿は無限に変化し、どの姿も等しく真実の姿である。本物と写しの関係ではない。一つの本物の世界(客観的世界)とその十人十色の写し(主観的世界像)、という図柄で世界を捉えると、真実の世界からは、さえぎられへだてられることになる。

④遠目に見えた人影と岩を見誤るような場合の誤りは、その一刻の面相を永続する堅固な面相だと思い込んだ誤りである。しかし、この「誤り」は真実に対しての誤りではない。真実の百面相の中でわれわれの命の安全と生活の安穏の目印になる面相を「正しい」とし、われわれを誘導しやすい面相を「誤り」とする、生活上の分類である。だから、この分類は世界観上の真偽の分類ではなく、動物的、文化的な分類である。それを取り違えて真実と虚妄の分類とすると、客観的世界と主観的世界像の剥離の幻影に陥ってしまう。そしてわれわれは世界とはじかに接触できず、主観的映像というガラス戸越しにしか世界を眺められないといった虚妄にはまるのである。

『真実の百面相』の要約&本文解説

 

200字要約物事の感じ方には固定された正解はなく、色や音、人の性質、世界の姿は多面的なものである。それらはどれも真実の一部であり、一つに決めつけるのは偏った見方である。正しい・誤りといった区別は文化的・生存的な目的によるものであり、絶対的な真理ではない。このような生活上の分類を真実の基準と取り違えると、世界を直接見ることができず、主観に閉じ込められたような錯覚に陥る。真実は一つではなく、豊かな百面相である。(199文字)

私たちは普段、色や音、人の性格や世界の見え方に「正しい」や「本物」があると思いがちです。

しかし、この文章『真実の百面相』では、「真実は一つではない」「いろんな見え方や感じ方があって、それら全部が真実である」という主張がされています。

哲学的な文章なので難しく感じられますが、誰にでも分かるように丁寧に解説していきます。

① 色や音に「本物」はない

カメレオンの体の色は、周りによって変わります。着物の生地も、光の当たり方や見る角度で色が変わることがあります。同じように、コンサートホールの演奏も、座る場所によって音の聞こえ方が違います。

しかし、ここで筆者は「これこそが本当の色」「これが本当の音」などと一つには決められない、と述べています。

つまり、ものごとは見る人や状況によっていろいろに変わる。それら全部が“真実”なのだという考えです。

② 人間の「本当の姿」はない

人間も同じです。ある人があるときは優しく見えても、別のときは冷たく見えることもあります。そのどちらも、その人の一面です。どちらかが「本物」で、どちらかが「偽物」ではありません。

そのため、筆者は、人の真の姿は「いろんな面の集まり」=「百面相」だと述べているのです。

③ 世界も「十人十色」で見える

世界の見え方も人によって違います。たとえば、ある小石を見て「きれい」と感じる人もいれば、「ただのゴミ」と思う人もいるでしょう。

ここで筆者は、「客観的に見える一つの本物の世界がある」と決めつけると、人それぞれの世界の感じ方=主観的世界とズレが生まれ、かえって真実から遠ざかってしまうと警告しています。

④ 間違いとは何か?

遠くに人影が見えて「人だ」と思ったら、実は岩だった…こんな「思い違い」はよくあります。しかし筆者は、「それは真実に対する“間違い”ではない」と言います。

なぜなら、「正しい/間違い」というのは、あくまで私たちが生活の中で使いやすいように区別しているだけのことだからです。つまり、人間や動物が生きやすくなるように決めたルールにすぎないのです。

これを「真実そのもの」と混同すると、「世界とは直接つながれず、頭の中のイメージ(主観)を通してしか見えない」という誤った考え方に陥ってしまいます。

【まとめ】筆者の主張は?

筆者が伝えたいのは、「真実は一つではない。見る人や状況によって変わる多様な“百面相”であり、どれも本物だ」という考え方です。

「正しい」「間違っている」「本物」「偽物」という分け方は、私たちが生きるために便利な区別であって、真実そのものを分けるものではありません。だからこそ、一つだけの「真実」にこだわると、かえって真実を見失ってしまうというのが筆者の警告なのです。

『真実の百面相』の意味調べノート

 

【百面相(ひゃくめんそう)】⇒さまざまな顔つきや表情をすること。

【偏頗(へんぱ)】⇒かたよっていて公平でないこと。

【えてして】⇒とかく。ある傾向になりやすいこと。

【品定め(しなさだめ)】⇒品物などの価値や良し悪しを見きわめること。

【評言(ひょうげん)】⇒批評の言葉。

【云々する(うんぬんする)】⇒あれこれと言う。とやかく言う。

【千変万化(せんぺんばんか)】⇒さまざまに変化すること。

【行動様式(こうどうようしき)】⇒ある集団や個人に特徴的な行動のパターン。

【パターン】⇒類型。図形。

【大盤振舞い(おおばんぶるまい)】⇒気前よく人に物を与えたり、ごちそうすること。

【衆生済度(しゅじょうさいど)】⇒すべての人々を救済すること。仏教用語。

【本元(ほんもと)】⇒いちばんのもと。

【正真正銘(しょうしんしょうめい)】⇒まぎれもない本物であること。

【否応なく(いやおうなく)】⇒いいも悪いもなく。

【特権的(とっけんてき)】⇒他の人にはない特別な権利を持っているさま。

【いびつ】⇒形がゆがんでいること。

【至極(しごく)】⇒この上なく。きわめて。

【発端(ほったん)】⇒物事のはじまり。起こり。

【十人十色(じゅうにんといろ)】⇒人それぞれに好みや考えが異なること。

【幻影(げんえい)】⇒実際にはないのに、あるように見えるもの。

【まごうことない】⇒疑う余地のない。間違いない。

【当事者(とうじしゃ)】⇒その物事に直接関係している人。

【常態(じょうたい)】⇒ふだんと変わらない、いつもの状態。

【虚妄(きょもう)】⇒事実ではないこと。

【安穏(あんのん)】⇒心が穏やかで落ち着いていること。平和なさま。

【誤導(ごどう)】⇒誤った方向に導くこと。

【剥離(はくり)】⇒はがれ離れること。

『真実の百面相』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①絵画をフクセイする。

トッケンを乱用してはいけない。

③事件のホッタンは些細な一言だった。

ゲンエイを追いかけて迷う。

アンノンな日々を願っている。

解答①複製 ②特権 ③発端 ④幻影 ⑤安穏
問題2「百面相の真実」とは、どのようなことか?
解答人の真実の姿は一つではなく、さまざまな面を持ち、それぞれの断片を集めて成り立つ多面的な存在であるということ。
問題3「人の真実は水深ゼロメートルにある」とは、どのようなことか?
解答「人の真実」は、どこか奥深くに隠されているわけではなく、表面からむき出しにさらされているということ。
問題4「危険な世界観」とは、どのようなものか?
解答自分で見た物が実は錯覚か幻影であると思い、それはただ自分の心の中だけにあったもので、客観的な真実は別にあると考え、自ら世界とじかに触れていることを否定する危険につながる世界の捉え方。
問題5「大脳生理学や精神病理学はこの比喩をベースにした言語で語られているように見える。」とあるが、「この比喩」とはどのようなものか?
解答本物の世界(客観的世界)と人間の十人十色の写し(主観的世界像)があり、人間のレンズやフィルムがゆがんでいれば、実物でない幻影が生じ、その世界は真実の世界から隔てられたものになるというもの。

まとめ

 

今回は、『真実の百面相』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。