バグダッドの靴磨き 要約 あらすじ テスト問題 解説 意味調べノート

『バグダッドの靴磨き』は、米原万里によって書かれた文学作品です。教科書・文学国語にも掲載されています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『バグダッドの靴磨き』のあらすじや要約、テスト問題などをわかりやすく解説しました。

『バグダッドの靴磨き』のあらすじ

 

本文は、大きく六つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①靴磨きの少年のアフメド(僕)は、日本人のお客さんに話を聞きたいと頼まれた。そこで10ドルをもらい、話を始めた。僕は金を貯めたいが、足が悪いため、靴磨きをして稼いでいた。四月九日にアメリカ軍がバグダッドに入ってきたとき、僕は家でいさかいを起こして街に飛び出してしまい、足を負傷したのだった。

②僕は、母と祖母、妹二人と、長持ち一つを持って防空壕へ避難した。空襲で家も商売道具も失い、僕の家に転がり込んできたムニール叔父さんも一緒だった。叔父さんは父の弟で、僕の母に夢中だった。気を揉んだ父が、戦争で前線に送られる日に、母にそうしないよう誓わせていたにもかかわらず、母はひと月もしないうちに叔父さんを家に住み込ませてしまった。叔父さんは知識が豊富で物語が上手だったため、妹もなつき、防空壕の中でも評判だった。叔父さんは普段は靴磨きに出かけ、母にも家事手伝いの仕事を紹介してくれた。僕は癪に障るが、生活のため我慢するしかなかった。

③四月二日、僕が出かけていた間にアメリカのミサイルが落ち、僕の家は瓦礫の山と化した。僕は祖母や妹たちを探したが、三人は帰らぬ人となっていた。そこへ叔父さんが帰って来たが、しばらくの間呆然と立ちすくんでいた。それから三人の痕跡を集め、黙々と瓦礫を片付けてバラックを作った。暗くなってから帰ってきた母は、その場にへたりこみ、叔父さんが集めた痕跡を抱きかかえて一晩中語りかけた。母は必死に堪えていたが、ついにある日、自分から叔父さんに抱きついて泣き崩れた。僕は無性に腹が立って、叔父さんについ心ないことを口走り、家を飛び出した。それはちょうどアメリカ軍がバグダッドを陥落させた四月九日で、そのときに僕は膝を負傷したのだった。叔父さんは僕の世話をこまめにしてくれたが、僕は叔父さんにつらく当たるようになった。

④六月のある日、アメリカ軍への抵抗組織のチラシを見たことから、僕はその手伝いをするようになった。ある日、自宅には持ち帰るなと言われていたチラシをバラックに持ち帰ってしまった。そして、僕の家に押し入ってきた米兵に見つかってしまう。僕は恐怖のあまり金縛りになったが、叔父さんが何かを申し出て、僕に母を頼むと言ったまま連行された。そして二週間後、叔父さんは亡くなった状態で戻ってきた。

⑤十一月二十八日、ラマダン最後の日に、母の仕事先の邸をアメリカ兵が突然取り囲み、多くの人々が犠牲になった。母はその中にいて、僕が駆けつけると息を引き取った。僕は母に対して、叔父さんとの愛を認めてあげなかったことを後悔し、涙が枯れるまで泣いた。

⑥僕は今、孤児院に住んでいて食べ物と屋根には困っていない。だが、金がいるので学校を抜け出して稼いでいると、「お客さん」に言った。感傷的になったお客さんから僕は、さらに五十ドルをもらった。僕は、その金で力を得て、占領者に立ち向かおうという思いを強く抱くようになった。

『バグダッドの靴磨き』の要約&本文解説

 

200字要約バグダッドの少年アフメドは、戦争で祖母と妹二人を失った。母は叔父に対して寄り添うようになるが、叔父は抵抗組織のチラシを持っていた僕を庇って連行され、命を奪われた。その後、母も米軍の襲撃で命を落とすことになる。孤児となったアフメドは、靴磨きで稼ぎながら生活し、日本人客に身の上を語る。彼は家族を失った悲しみと、叔父や母の存在を受け入れられなかった後悔を抱えつつ、占領者に立ち向かおうと決意を固める。(198文字)

この文章は、イラク戦争下で生きる少年アフメドの体験を描いたものです。

僕(アメフド)は足を負傷し、家や家族を失い、母と叔父の関係に葛藤しながらも生き抜こうとします。戦争がなければ、彼は学校に通い、普通の子どもとして成長できたはずですが、現実は孤児院に身を寄せ、靴磨きで稼がなければなりませんでした。

物語の中で象徴的なのは、「叔父の存在」です。僕にとって叔父は母を奪うような憎い相手でありながら、実際には家族を支え、最終的には抵抗組織のチラシ事件で身代わりとなって命を落とします。

少年の目には受け入れがたい存在だった叔父も、実は大切な犠牲を払った人間でした。この点から、戦争は単に占領といった外的な被害だけでなく、家族の絆や人間関係を複雑にし、子どもの心を深く傷つけることが分かります。

また、母の最期も重要です。母は叔父への愛を隠しながらも必死に生き、最後には戦争の犠牲となってしまいます。僕は母の愛を認めてあげられなかったことを後悔し、深い喪失感に沈みます。

ここから、戦争は人の生き方や感情を歪め、後悔や憎しみを残すものであるというテーマが読み取れます。

最後に、僕が「お客さん」からお金を受け取り、それを「占領者に立ち向かう力」に変えていこうとする場面があります。

これは、戦争が子どもの心にまで深い傷を残し、将来にまで悲しみや対立を引き継いでしまう現実を象徴しています。戦争は人命や生活だけでなく、未来への希望までも奪い、子どもを闘争へ駆り立ててしまうのです。

まとめると、この文章は一人の少年の語りを通じて、戦争が家庭や人生を壊し、人々に深い悲しみと憎しみを残すという現実を訴えています。

読者にとっては、戦争が遠い国の出来事ではなく、子どもの日常や心に直接影響を及ぼす深刻な問題であることを考えさせられる内容です。

『バグダッドの靴磨き』の意味調べノート

 

【ジャーナリスト】⇒新聞・雑誌などの記者・編集者の総称。

【恩に着る(おんにきる)】⇒人から受けた親切をありがたく思う。

【差し当たって(さしあたって)】⇒今のところ。当面。

【いさかい】⇒言い争い。けんか。

【貫通(かんつう)】⇒物が通り抜けること。

【自業自得(じごうじとく)】⇒自分のしたことの結果を自分で受けること。

【癪に障る(しゃくにさわる)】⇒腹立たしく感じる。

【華奢(きゃしゃ)】⇒細くて弱々しいさま。

【風采の上がらない(ふうさいのあがらない)】⇒見た目や人柄にぱっとしたところがない。

【露天商(ろてんしょう)】⇒屋外で商品を並べて売る商人。

【亡命(ぼうめい)】⇒政治的理由などで自国を離れて他国へ逃れること。

【二束三文(にそくさんもん)】⇒値打ちがなく、とても安いこと。

【気を揉む(きをもむ)】⇒心配してやきもきする。

【一笑に付す(いっしょうにふす)】⇒ばかばかしいとして相手にしない。

【円満(えんまん)】⇒穏やかなさま。

【成り行き(なりゆき)】⇒物事が自然に進んでいく過程や結果。

【気が晴れる(きがはれる)】⇒悩みや不快感がなくなってすっきりする。

【前線(ぜんせん)】⇒戦場の敵と接する最前の位置。

【本の虫(ほんのむし)】⇒本を熱心に読む人。

【目抜き通り(めぬきどおり)】⇒町の中心的な通り。

【一目散(いちもくさん)】⇒脇目もふらずに全力で走ること。

【むずかる】⇒子どもが不機嫌で泣く。

【正視(せいし)】⇒まっすぐに正面から見ること。

【陥落(かんらく)】⇒要所などが敵に攻め落とされること。

【関の山(せきのやま)】⇒精いっぱいのこと。それ以上はできないこと。

【水入らず(みずいらず)】⇒他人が交じらず、身内や親しい者だけで過ごすこと。

【不穏(ふおん)】⇒穏やかでないさま。

【拘束(こうそく)】⇒捕まえて自由を奪うこと。

『バグダッドの靴磨き』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

フウサイが上がらない男。

ロテン風呂に入る。

ケンオの感情が芽生える。

ソウトウ作戦が決行された。

カンゴクから脱出する。

解答①風采 ②露天 ③嫌悪 ④掃討 ⑤監獄
問題2

以下は、本文中の「気」を使った慣用表現である。それぞれの意味を簡単に答えなさい。

①気が利かない  ②気を揉む  ③気が晴れる

解答

①配慮が行き届かない。

②心配でやきもきする。

③つかえがとれてすっきりする。

問題3「本当は疲れただけなのに、そのことを母さんには言えないで足のせいにしている。」とあるが、「母さんには言えない」のはなぜか?
解答叔父さんは母さんのことが好きなので、「疲れた」などと言って自分の弱みを見せたくないため。
問題4「僕は居たたまれなくなって、」とあるが、それはなぜか?
解答母の心細さを分かっていながら、自分勝手で軽率な発言をして母を悲しませ、さらに叔父から怒りではなく悲しみに満ちた目で見られて、それ以上その場に居続けることが耐えられなくなったから。
問題5「さらにとげとげしくつらいものにしてしまった」とは、どういうことか?
解答僕が叔父さんとの愛を受け入れず、反発したりつらく当たったりしたことに加え、ついには僕の身代わりとなった叔父が命を奪われたことで、家族を失ってただでさえ悲しみと不安の中にいた母を、よりどころもなく気の休まない状態へ追い込んでしまったということ。

まとめ

 

今回は、『バグダッドの靴磨き』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。