政治的思考 要約 解説 テスト問題 意味調べノート 同質性の神話

『政治的思考』は、杉田敦による評論文です。教科書・現代の国語にも収録されています。

この記事では、『政治的思考』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。

『政治的思考』のあらすじ

 

あらすじ

①一般に、政治に過度に期待するのはあまりいいことではない。期待が裏切られると、政治そのものへの絶望につながることになる。ただし、政治との間に距離をとると言っても、それは政治をなくせばいいという話とは違う。政治的思考にとって大切なことは三つある。

②第一に、政治はさまざまな価値観に関わるものであり、多様な価値観の間の調整こそが政治だと理解することだ。政治的意見には、それぞれ部分的な正しさがある。どちらが正しいなどの唯一の答え以外は要らないという姿勢は、もはや政治的ではない。

③第二に、他の人との間の距離の感覚だ。みなが自分と同じようなものだと考えてはいけない。人間は全面的にはわかり合えないものだ。「みなが同じ」とする文化は、人と違った考え方をすることを抑圧する。極端に距離をとればいいわけでもなく、距離のないべったりとした関係に入ってもいけない。

④第三に、複雑で先を見通せない不透明性の世界の中に、政治はあるということを考えなくてはならない。政治は、利害関係を異にする人間たちの対立を前提として、調整する作業をしなくてはならない。これは複雑な活動である。さらに、政治は意図せざる結果の連鎖で物事が決まっていく。当然、その過程には不透明さがつきまとう。

⑤政治の複雑性や不透明性をたえず意識し、自ら当事者として関与しながらも、政治に距離をとるのが政治に対する向き合い方だ。それは簡単なことではないが、政治への距離のとり方は経験を通して学ぶことができるはずだ。

『政治的思考』の要約&本文解説

 

200字要約政治的思考にとって大切なのは、第一に、多様な価値観の間の調整こそが政治だという理解、第二に、他の人との間の距離の感覚、第三に、複雑で不透明な世界の中に政治はあるという考えだ。政治に対する向き合い方は簡単なことではなく、単純化して伝えられるものでも言語化できるようなものでもない。だが、政治への距離のとり方は経験を通じて学ぶことができるはずだ。今、政治的思考をどう身につけていけるかが問われている。(198文字)

筆者は政治学者でもあることから、様々な角度から政治について持論を述べています。まず、政治的な思考をする上で大切なことを三つ挙げています。

一つ目は、「多様な価値観の調整をすること」です。政治的意見には、それぞれに正しさがあります。

例えば、政府の介入を極力小さくして、市場に委ねるべきだという考えは、頑張った人が頑張った分だけお金持ちになれるという自由で公正な社会だと言えます。

一方で、政府の市場への介入を大きくし、その再分配機能に期待するという考えも、人間の生存権や平等を重視した認められるべき社会だと言えます。

このように、政治における考えはどちらもそれぞれ成り立つため、政治の場で議論をし、多様な価値観を調整していくことが必要だと筆者は考えているのです。

二つ目は、「他の人との間の距離の感覚をもつこと」です。筆者は、政治においては極端に距離をとっても、逆にべったりと距離を縮めてもよくないのだと主張します。

例えば、外交において、他国に対して自分と同じ考え方をするはずだと思って接するような態度は、大きな障害をもたらすことになります。なぜなら、自国と他国というのは、歴史的な背景、地理的条件、経済的条件などがすべて異なるからです。

人間というのは考えていることがそれぞれ異なります。そのため、人が自分と同じようなものだと考えて接してはいけないと筆者は考えているのです。

そして三つ目は、「政治は複雑で不透明性の世界の中にあるという考えをもつこと」です。

政治は、複雑な活動です。まず、利害関係が異なる人間たちの対立を調整する作業をしなくてはいけません。基本的に多数決で物事を決めるため、すっきりとした結論が出ないのは当たり前です。

また、どこに権力があるかも分からず、いろいろな人の動きの中で物事が決まっていくため、その過程には不透明さがつきまといます。政治的に何かを変えようとする場合は、手探りの作業になってしまいます。

したがって、筆者は、政治の複雑性や不透明性をたえず意識し、自ら当事者として関与しながらも、政治に距離をとるということが、政治に対する向き合い方なのだと述べています。

さらに、それは経験を通じて学ぶことができるはずだとも結論付けています。

『政治的思考』の意味調べノート

 

【過度(かど)】⇒度を過ごすこと。程度が過ぎること。

【紙一重(かみひとえ)】⇒数量や程度の差がきわめてわずかなさまのたとえ。

【逆説的(ぎゃくせつてき)】⇒真理にそむくようでいながら、実際には真理をついているさま。

【倫理的(りんりてき)】⇒倫理にかなうさま。「倫理」とは「人として守り行うべき道・善悪の判断規準となるもの」などの意味。

【極論(きょくろん)】⇒極端な論じ方。極端な議論。

【介入(かいにゅう)】⇒当事者以外の者が入り込むこと。

【委ねる(ゆだねる)】⇒すべてを任せる。

【貪欲(どんよく)】⇒非常に欲が深いこと。

【従来(じゅうらい)】⇒これまで。

【神話(しんわ)】⇒根拠もないのに、絶対的なものと信じられている事柄。

【差異(さい)】⇒違い。差。

【ないがしろ】⇒大切な事柄を軽視し、軽んじること。

【抑圧(よくあつ)】⇒無理やり押さえつけること。

【欠如(けつじょ)】⇒必要な物事が欠けていること。

【臨む(のぞむ)】⇒予想できる事態に対応した態度で人に対する。

【不可解(ふかかい)】⇒理解できないこと。わけがわからないこと。

【ユーモア】⇒人の心を和ませるようなおかしみ。上品なしゃれや冗談。

【利害(りがい)】⇒得することと損すること。利益と損害。

【連鎖(れんさ)】⇒鎖のようにつながること。また、そのようなつながり。

【帰す(きす)】⇒最終的に一つのところに落ち着くこと。

【手探り(てさぐり)】⇒確実な方法がわからないまま、あれこれと模索すること。

【センス】⇒物事の微妙な感じをさとる働き・能力。

『政治的思考』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①将来にゼツボウする。

②政府が市場へカイニュウする。

ドンヨクに知識を得る。

④厳正な態度でノゾむ。

⑤結果のレンサで物事が決まる。

ドクサイ政権が終わる。

トウメイな水。

解答①絶望 ②介入 ③貪欲 ④臨 ⑤連鎖 ⑥独裁 ⑦透明
問題2冒頭から七行目までで、筆者が強調していることは何か?本文中から10文字で抜き出しなさい。
解答政治に距離をとること
問題3『第二に、政治的思考にとって大切なのは、他の人との間の距離の感覚です。』とあるが、「距離の感覚」はどのようなものだと説明されているか?本文中から11文字で抜き出しなさい。
解答「間合い」のようなもの
問題4「利害関係を異にする生身の人間たちの対立を前提として、調整する作業」は、どのように言い表されているか?本文中から11文字で抜き出しなさい。
解答多様な価値観の間の調整

まとめ

 

以上、今回は『政治的思考』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。