生物と無生物のあいだ 簡単に 要約 問題 動的平衡 意味調べノート

『生物と無生物のあいだ』は、高校国語の教科書に載せられている評論文です。ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。

そこで今回は、『生物と無生物のあいだ』のあらすじや要約、語句の意味、テスト対策などを簡単に解説しました。

『生物と無生物のあいだ』のあらすじ

 

本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①小学校の低学年で、私は都内から千葉の松戸へと引っ越した。この場所は、地理的に東京とその郊外が接する界面であると同時に、時間的には戦後が戦前と接している界面でもあった。私は、おそらく工兵学校の校舎の一部だと思われる建物の前にある貯水池に足しげく通った。そこでは、トンボやカエルなどの無数の生物がいて、毎日が驚くべき発見であった。

②アオスジアゲハの産卵と羽化は、春先から秋まで何度もそのサイクルが繰り返される。私は春先初めてのアオスジアゲハを見たくなり、秋の終わりにサナギを採集し、その虫かごを物置の中に置いておくことにした。ところが、私はアオスジアゲハのことをすっかり忘れてしまった。春になり、夏が近づき、ゆうに七か月がたったとき、虫かごを見てみると、十個以上あったサナギは全て羽化しており、完全に乾燥していた。蝶たちは、まるで生きているかのように鮮やかなブルーを保っていた。

③ある日、私はトカゲの卵を見つけ、それを持ち帰って毎日観察した。卵が孵化するには通常二か月以上かかるが、待ちきれなかった私は卵に小さな穴を開けて内部を見ようとした。すると、中には小さなトカゲの赤ちゃんが静かに眠っていた。私は自分が取り返しのつかないことをしてしまったことを悟った。いったん外気に触れたトカゲの赤ちゃんは、徐々に腐り始め、形が溶けていった。この体験は、私にとってのセンス・オブ・ワンダーでった。

④生命という名の動的な平衡は、いずれの瞬間でも危ういまでのバランスをとりつつ、同時に時間軸の上を一方向にたどりながら折りたたまれている。それは決して逆戻りのできない営みであり、どの瞬間でもすでに完成された仕組みである。これを戻すような操作的な介入を行えば、動的平衡は取り返しのつかないダメージを受ける。私たちは、自然の流れの前に跪く以外に、そして生命のありようをただ記述すること以外になすすべはないのだ。

『生物と無生物のあいだ』の要約&本文解説

 
200字要約私は幼少期にアオスジアゲハのさなぎを虫かごに入れて保管し、そのまま忘れてしまった体験と、トカゲの卵に穴を開けて内部を見てしまった体験をしたが、これは私にとってセンス・オブ・ワンダーであった。生命という名の動的な平衡は、決して逆戻りのできない営みであり、同時にどの瞬間でもすでに完成された仕組みである。私たちは自然の流れの前に跪き、生命のありようをただ記述すること以外に、なすすべはないのである。(197文字)

筆者は、「貯水池のオタマジャクシ」「アオスジアゲハのサナギ」「トカゲの卵」という三つの体験を語っています。

この内、「操作的な介入」にあたる体験というのは、「アオスジアゲハのサナギ」と「トカゲの卵」の二つによるものです。

筆者はアオスジアゲハのサナギを虫かごに入れて保管したものの、いつのまにか忘れてしまい、そのまま放っておいてしまうということをしました。また、トカゲの卵に穴を開けて、内部を見たことで、中の赤ちゃんを死なせしまうということをしました。

筆者は、この操作的な介入というのは、「生命という名の動的な平衡」に対して取り返しのつかないダメージを与えるのだと主張します。

「生命という名の動的な平衡」とは、「いずれの瞬間も危ういまでのバランスをとりつつ、同時に時間軸の上を一方向にたどりながら折りたたまれ、決して逆戻りのできない生命の営みのこと」だと本文中では説明されています。

この事を分かりやすくするために、「生命と環境との相互作用が一回限りの折り紙」などと本文中では表現されています。折り紙というのは、一度折ってしまえば元の形に戻るということはありません。

生命に関しても同様で、一度でも人間が都合のいいように手を加えてしまうと、それは決して逆戻りはできないということです。

最終的に筆者は、私たちは自然の流れの前に跪き、生命のありようをただ記述する以外になすすべはないのだと結論付けています。

これはつまり、私たちは自然の流れに対して、敬服するかのごとく敬意を払い、生命のありさまを文字として残していく以外に方法はない、という意味です。

全体の構成としては、最後の第四段落に筆者の主張したい内容が集約されていると言えます。

『生物と無生物のあいだ』の意味調べノート

 

【宿舎(しゅくしゃ)】⇒公務員などに提供される住宅。

【抽選(ちゅうせん)】⇒くじ引き。

【開発(かいはつ)】⇒天然資源を活用し、住宅や工場、農場などをつくり、その地域の産業を盛んにすること。

【途上(とじょう)】⇒途中。

【新居(しんきょ)】⇒新築や転居による新しい住まい。

【廃墟(はいきょ)】⇒建物などの荒れはてた跡。

【残骸(ざんがい)】⇒跡形もないほど破壊された状態で残っているもの。

【コンクリート塊(かい)】⇒建物の取り壊しなどで発生したコンクリートの廃棄物のこと。

【工兵学校(こうへいがっこう)】⇒旧日本陸軍の兵科の一種について学ぶ学校。「兵科」とは、軍隊で直接戦闘に従事する兵の職域を表す。

【転用(てんよう)】⇒本来の目的を他にかえて用いること。

【変貌(へんぼう)】⇒姿やようすが変わること。

【相互作用(そうごさよう)】⇒接触している二つの物が影響を及ぼし合うこと。

【点在(てんざい)】⇒あちこちに散らばって存在すること。

【愛着(あいちゃく)】⇒慣れ親しんだものに対して、深く心が引かれること。

【感傷(かんしょう)】⇒物事に感じて心をいためること。

【打ち捨てる(うちすてる)】⇒構わないで、ほったらかしにする。

【くすんだ】⇒黒ずんだ色になるさま。

【たたえられた】⇒液体がいっぱいに満たされているさま。

【貯水池(ちょすいち)】⇒水をためておく人工の池。上水道・発電・農業用水などのために用いる。

【足繁く(あししげく)】⇒たびたび行くさま。

【さざなみ】⇒細かく立つ波。

【探査(たんさ)】⇒さぐりしらべること。

【結集(けっしゅう)】⇒一つにまとまり集まること。

【巡る(めぐる)】⇒周囲をまわる。

【胸が高まる(むねがたかなる)】⇒胸がどきどきする。興奮する。

【サイクル】⇒周期。

【可憐(かれん)】⇒姿や形がかわいらしく、守ってやりたくなるような気持ちにさせるさま。

【とりたてて】⇒特別に取り上げて。

【あろうことか】⇒とんでもないことに。

【キャンパス】⇒大学などの構内。

【ありありと】⇒はっきりと。

【ゆうに】⇒十分に。らくに。

【損傷(そんしょう)】⇒損なわれ傷つくこと。

【出没(しゅつぼつ)】⇒現れたり隠れたりすること。

【はやっていた】⇒あせっていた。

【微小(びしょう)】⇒非常に小さいこと。

【澱(おり)】⇒ここでは、「心の中にたまった思い」を表す。

【諦観(ていかん)】⇒あきらめの思い。

【謂い(いい)】⇒いわれ。意味。

【操作的(そうさてき)】⇒自分の都合のよいように手を加えるさま。

【介入(かいにゅう)】⇒本来の当事者でない者が、強引にかかわること。

【岐路(きろ)】⇒分かれ道。

【跪く(ひざまずく)】⇒地面や床などに膝をつく。敬意を表す動作。

【なすすべ】⇒行うことのできる手立て。

【自明(じめい)】⇒証明などをしなくても、明らかであること。

『生物と無生物のあいだ』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①発展トジョウにある。

②街がハイキョと化す。

③試合はシュウバンへ入った。

④学校にリンセツした建物。

ヒミツの場所へ通う。

⑥ロープが足にカラむ。

⑦もめ事にカイニュウする。

ヘイコウ感覚を鍛える。

解答①途上 ②廃墟 ③終盤 ④隣接 ⑤秘密 ⑥絡 ⑦介入 ⑧平衡
問題2「決して逆戻りのできない営み」と同じ意味の表現を、本文中から8文字で抜き出しなさい。
解答一回限りの折り紙
問題3

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)貯水池のオタマジャクシを見て、私は動的平衡を乱すような操作的な介入は生命に対して取り返しのつかないダメージを与えることを学んだ。

(イ)命を元通りにすることはできないという体験は、長い間私の内部に澱となって残り、私にとってのセンス・オブ・ワンダーであった。

(ウ)生命と環境との相互作用は一回限りの折り紙であるため、生命を乱すような操作的な介入は、一回性の運動を異なる岐路へと導くことになる。

(エ)生命という名の動的な平衡は決して逆戻りのできない営みであり、同時に、どの瞬間でもすでに完成された仕組みである。

解答(ア)筆者は「アオスジアゲハのサナギ」と「トカゲの卵」の二つの体験から「操作的な介入」は取り返しのつかないダメージを受けることを学んだため、誤り。

まとめ

 

以上、今回は『生物と無生物のあいだ』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。