『サイエンスの視点、アートの視点』は、齋藤亜矢氏による文章です。教科書・現代の国語にも収録されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『サイエンスの視点、アートの視点』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。
『サイエンスの視点、アートの視点』のあらすじ
本文は、行空きにより3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①サイエンスとアートは、相反する点はいくらでもあげられる。だが、両者は対極に位置するわけではなく、むしろ根っこには共通するものがある。どちらも核となるのは、身のまわりの出来事や現象に目を向けて「!」を感じるこころである。サイエンスは、「!」を「?」に変えて、その答えを追究していくものであり、アートは「!」をかたちや音に表現していくものである。どんな分野に進むにしても、まずは「!」を感じるこころと「?」を探すこころを磨くことが肝心だ。
②「!」のイメージにぴったりの作品は、岡本太郎の「若い夢」だ。大学二年生の夏、屋久島で行ったフィールドワークは、五感を総動員して自然と向き合う体験だった。おのずと「!」や「?」があふれ出した。あの時、きっと自分も太郎の彫刻のような表情をしていたと思う。
③私たちは普段の生活の中で、ついついからだを忘れがちだ。だが、からだを通してしか感じられないものがある。「!」を感じるには、少しだけ頭をゆるめておく必要がある。頭よりからだを通して感じるようになると「!」に出会えるようになる。それはアートと対峙する時も同じである。サイエンスとアートの交差する場をフィールドに、自分のからだを通して「!」を探すことから始めたい。
『サイエンスの視点、アートの視点』の要約&本文解説
私たちは、サイエンス(科学)とアート(芸術)は全く違う正反対のもの同士だと考えがちです。例えば、理科の実験から得られるデータと音楽から得られる心地よさは相反するものだと考えてしまいます。
しかし、筆者はそうではないのだと主張します。筆者は、サイエンスとアートには「身のまわりの出来事や現象に「!」を感じるこころがある」という共通点があると述べています。
つまり、「わ!」や「おお!」などのように、日々のちょっとした出来事に心が動くような共通点があるということです。
そして、アートは「!」をかたちや音に表現するものであり、サイエンスは「!」を「?」に変えて答えを追究していくものだと述べています。
画家であれば自分の感動を絵にしたり、音楽家であれば感動を歌詞にしたりする一方で、研究者であれば自分の感動はどうして生まれたのだろうか?などのように答えを求めていくということです。
そして、このような感性というのは、言葉や観念(頭の中にある主観的な考え)では得ることはできず、自分のからだを通した体験からしか生まれないと筆者は述べています。
つまり、実際に自分の五感(目・耳・鼻・手・舌)を通してでしか感じることができないということです。
そのため、「!」を感じるには普段から少しだけ頭をゆるめておく必要があると述べています。言い換えれば、頭よりもからだを通して感じる必要があるということです。
全体を通した流れとしては、第一段落で筆者の主張、第二段落でその具体例、第三段落で再度、筆者の主張といった構成になっています。
『サイエンスの視点、アートの視点』の意味調べノート
【サイエンス】⇒科学。「科学」とは、広い意味では「知識や学問」を指し、狭い意味では「自然科学」を指す。
【アート】⇒芸術。
【相反する(あいはんする)】⇒互いに反対の関係にある。
【普遍性(ふへんせい)】⇒すべての物事に通じる性質。
【偶然性(ぐうぜんせい)】⇒予期しないことが起こる性質。
【解釈(かいしゃく)】⇒理解し、説明すること。
【排除(はいじょ)】⇒おしのけて取りのぞくこと。
【鑑賞(かんしょう)】⇒芸術作品を理解し、味わうこと。
【対極(たいきょく)】⇒反対の極。対立する極。
【木漏れ日(こもれび)】⇒樹木の枝葉の間をかいくぐって、漏れるように地上へ差し込む日光。
【究極(きゅうきょく)】⇒物事をつきつめ、極めること。
【核(かく)】⇒物事の中心。
【追究(ついきゅう)】⇒分からないことを明らかにしていくこと。
【着目(ちゃくもく)】⇒目をつけること。
【アプローチ】⇒目的に至るまでの道筋や方法。
【実生(みしょう)】⇒種子から発芽して生じた植物。
【実学(じつがく)】⇒実際の社会生活で役に立つ学問。医学・法律学・経済学・工学など。
【軽減(けいげん)】⇒負担・苦痛などを減らして軽くすること。
【開催(かいさい)】⇒行事や催し物を開き行うこと。
【ミステリアス】⇒神秘的なさま。不可解なさま。
【フィールドワーク】⇒野外調査。野外など現地での実態に即した調査・研究。
【指南(しなん)】⇒指導すること。教え導くこと。
【総動員(そうどういん)】⇒ある目的のために全てをかり出すこと。
【連鎖(れんさ)】⇒鎖のようにつながること。
【感性(かんせい)】⇒物事を心に深く感じ取る働き。感受性。
【観念(かんねん)】⇒物事に対して持つ考え。頭の中にある主観的な考え。
【メディア】⇒媒体。新聞・雑誌・テレビ・ラジオなど。
【頭でっかち(あたまでっかち)】⇒知識や理論が先走って行動が伴わないこと。
【対峙(たいじ)】⇒向かい合うこと。
【フィールド】⇒領域。学術上の専門分野。
『サイエンスの視点、アートの視点』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①科学はフヘン性を持つ。
②芸術作品をカンショウする。
③彼とは思想的にタイキョクをなす。
④答えをツイキュウしていく。
⑤痛みをケイゲンさせる薬。
⑥ジュモクが生い茂る。
⑦キョウレツな体験をする。
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。
(ア)サイエンスは、できる限り「私」を排除するが、アートはむしろ「わたし」がなければはじまらないものである。
(イ)地球流体力学が専門の酒井敏さんは、シェルピンスキー四面体というフラクタル構造に木漏れ日のような日除け効果があることを発見した。
(ウ)筆者は屋久島でのフィールドワークにより、ざわざわとするようなたくさんの感覚にさらされ、おのずと「!」や「?」があふれ出す体験をした。
(エ)ふだんの生活の中でわたしたちがついついからだを忘れがちになるのは、あらゆる情報に対して頭でっかちに接しているからである。
まとめ
以上、今回は『サイエンスの視点、アートの視点』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。