支え合うことの意味 鷲田清一 要約 意味調べノート

『支え合うことの意味』は、鷲田清一によって書かれた評論文です。教科書・論理国語にも取り上げられています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『支え合うことの意味』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『支え合うことの意味』のあらすじ

 

本文は、5つの段落から構成されています。以下に、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①先人たちは、「命の世話」を確実に代行するプロフェッショナルを養成し、その場所を整備してきた。しかし、わたしたちはそんな安楽な社会に暮らしているうちに、自分でそれらをやる能力を失ってきている。わたしたちは、市民として、地域社会の住民として、無能力になっているのだ。

②現代社会は、何か社会的に活動しようとすれば、必ず「資格」が問われる。それは、人が「何をしてきたか」「何ができるか」で評価が決まる社会のことである。すると、人は自分に「資格」を問うことになる。自分に「資格」を問うことは、自分という存在の「資格」への問いをすることである。

③近代的な社会は、誰もが同じスタートラインに着く社会である。同時に、自分で自分が誰であるかを証明しなければならない社会でもある。このような社会では、わたしたちは自分を無条件に肯定してほしいと願うようになる。しかし、これは自分の存在の意味や理由を常に他人に求める危ういことでもある。

④市民としての強さを自立というが、自立と独立とは異なる。自立とは支え合いのことであり、責任もまた支え合いに含まれる。

⑤人には、いろいろな困難や苦労を避けたいという思いがある。しかし、むしろ苦労を引き受けることの中にこそ、人として生きることの意味がある。

『支え合うことの意味』の要約&本文解説

 

100字要約わたしたちは何をするにも資格を問われる社会に生きているため、自分を無条件で肯定してほしいと願う。しかし、受け身の存在でいるのではなく、苦労を引き受けて支え合い、「自立」することにこそ生きる意味がある。(100字)

本文は、現代社会における「自立」と「支え合い」の関係を問い直す文章です。筆者の主張は、人間は一人では生きられず、互いの支えの中でこそ真の自立が実現する、という点にあります。

まず筆者は、現代社会は医療や福祉などの専門職が整備され、人々は安心して暮らせる一方で、自ら命を守ったり他者を助けたりする力を失っていると指摘します。

つまり、便利な社会に依存するあまり、地域の住民としての能力が弱まり、市民としての力が衰えているというのです。

さらに、現代は資格や能力が重視される社会で、人は「自分には資格があるのか」と不安を抱きやすくなります。これは、自分の存在そのものの意味を他者の評価に委ねる危うさを生みます。

その上で、筆者は「自立」とは「一人で生きること」ではなく「互いに支え合うこと」だと定義しています。「独立」は他者に頼らないことですが、「自立」はむしろ責任を分かち合いながら成り立つものだと考えているのです。

そして、人生には苦労や困難が避けられませんが、それを引き受けることにこそ人間らしい生き方の意味があると説きます。

たとえば、家族の介護や地域のボランティア活動は楽ではありませんが、そこで互いに支えあうことで、人と人の結びつきや生きがいを実感することができます。

このように、筆者は「人は支え合うことでこそ真に自立できる」と主張しています。便利で効率的な社会に慣れた今だからこそ、互いに支え合いながら苦労を分かち合うことの意義を改めて問い直しているのです。

『支え合うことの意味』の意味調べノート

 

【調達(ちょうたつ)】⇒必要な物を手に入れること。

【調停(ちょうてい)】⇒争いごとを仲立ちしてまとめること。

【細心(さいしん)】⇒細かいところまで注意を行き届かせること。

【養成(ようせい)】⇒人材を育て、専門の力を身につけさせること。

【安楽(あんらく)】⇒心身が楽で苦しみのないこと。

【劣化(れっか)】⇒品質や性能が悪くなること。

【認可(にんか)】⇒公的に許可を与えること。

【近代的(きんだいてき)】⇒近代らしい特徴をもつさま。

【封建的(ほうけんてき)】⇒古い支配関係や上下関係にしばられるさま。

【輪郭(りんかく)】⇒物の外形や形の大まかな姿。

【あらかじめ】⇒前もって。事前に。

【肯定(こうてい)】⇒価値があると認めること。よいと受けとめること。

【依存(いぞん)】⇒他のものに頼って成り立つこと。

【元の木阿弥(もとのもくあみ)】⇒一度よくなったものが、また元の悪い状態に戻ること。

【被災(ひさい)】⇒災害を受けること。

【免除(めんじょ)】⇒義務や負担をなくすこと。

【余力(よりょく)】⇒使い切らずに残っている力。

『支え合うことの意味』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①機械が情報をショリする。

②裁判で争いをチョウテイした。

③医者により怪我をチリョウする。

④金属が湿気でレッカしている。

⑤学生は学費をメンジョされた。

解答①処理 ②調停 ③治療 ④劣化 ⑤免除
問題2『わたしたちはそれらを自分でやる能力をしだいに失っていきます。』とあるが、「それら」とはどのようなことか?
解答互いの命を世話し合うこと。
問題3「そのことに注意してください」とあるが、「そのこと」とはどのようなことか?
解答自分をこのまま肯定してほしいと願うのは危ういことだということ。
問題4『「支え合い」が、余力のあるときに、というのではなく、常に求められるものであることの理由は、こういうところにもあります。』とあるが、「こういうところ」とはどういうところか?
解答自分が存在することの意味は、他の人たちとの関わりの中でこそ具体的に浮かび上がってくるものだというところ。
問題5

次の内、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。

(ア)現代社会は、資格がなくても誰もが自由に活動できる社会である。

(イ)自立とは独立と同じ意味であり、人は一人で責任を担うべきである。

(ウ)苦労をなるべく避けることが、人として生きる意味を見出す道である。

(エ)資格や社会制度に依存する現代では、自立や支え合い、苦労の引き受けにこそ人間としての意味がある。

解答(エ)

まとめ

 

今回は、『支え合うことの意味』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。