ルリボシカミキリの青 問題 解説 筆者が言いたいこと 語句ノート 要約

『ルリボシカミキリの青』は、高校教科書・現代の国語に載せられている随筆文です。ただ、実際に文章を読むと筆者が言いたいことが分かりにくいと感じる箇所も多いです。

そこで今回は、『ルリボシカミキリの青』のあらすじや要約、語句の意味などを含めわかりやすく解説しました。

『ルリボシカミキリの青』のあらすじ

 

本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①子供の頃の私は、虫が大好きな昆虫少年だった。最初は蝶を捕まえようとし、卵を持ち帰って観察記録をつけたりしていた。やがて蝶への興味はもっと硬質の美しさへの希求と変わり、ルリボシカミキリへ憧れるようになった。その青色は鮮やかで深く青く、フェルメールでも出すことができない見事な文様だった。私は息を殺してずっとその青を見つめ続けた。

②私はたまたま虫が好きな気持ちが強くなり、生物学者になった。だが、今、君が好きなことがそのまま職業に通じる必要は全くない。大切なのは、何か一つ好きなことがあること、そしてその好きなことがずっと好きであり続けることの旅程が、豊かで飽きさせないということだ。そのことが、君を静かに最後まで励まし続ける。

③ルリボシカミキリの青に震えた感触が、私自身のセンス・オブ・ワンダーだった。そして、その青に息をのんだ瞬間が、私の原点であった。私は虫を集めて何がしたかったのか。それは、フェルメールでさえ作りえない青の由来、つまりこの世界のありようを記述したかったのだ。

『ルリボシカミキリの青』の要約&本文解説

 

200字要約子供の頃の私は昆虫少年だったが、中でも硬質の美しさを持つルリボシカミキリに憧れるようになった。その青色は鮮やかで深く青く、フェルメールでも出すことができない見事な文様だった。人は自分の好きなものを追求したくなるが、大切なのは何か一つ好きなことがあることだ。私にとってのセンス・オブ・ワンダーはルリボシカミキリの青に震えた感触であり、私はフェルメールでさえ作りえない青の由来を追求したかったのだ。(197文字)

子供の頃の作者は、虫が大好きで最初は蝶へ興味を示すようになります。そして、やがてルリボシカミキリへ憧れるようになります。ルリボシカミキリの美しさを、筆者は「フェルメールだって出すことができない」と表現しています。

フェルメールは青の名手と呼ばれた有名な画家ですが、その彼ですら出すことのできないほどの硬質の美しさという意味です。ここでの青は、「人工的に作られた青」に対して「自然から作られた青」という対比の意味も込められています。

そしてこの体験を元に、筆者は読者である私たちに対して「君」という言葉を使い助言を送っています。

人は、調べたり行ったり実験したりといった具体的な体験から、世界のありようを理解し、記述する方法を学んでいきます。その上で、大切なのは「何か一つ好きなことを見つけること」だと述べています。

なぜなら、好きなことがあれば、それは人生の支えとなり、自分を励まし続けてくれるからです。筆者にとってその好きなことが「ルリボシカミキリの青」だったということです。

最終的に筆者は、「フェルメールでさえ作りえない青の由来を、つまりこの世界のありようをただ記述したかったのだ」という一文で締めくくっています。

これはつまり、フェルメールでさえ作りえない青の由来を追求し、ルリボシカミキリの美しさを文字に起こして記録したかった、という意味です。

『ルリボシカミキリの青』の意味調べノート

 

【捕虫網(ほちゅうあみ)】⇒昆虫を捕えるのに使う網。

【飛来(ひらい)】⇒飛んで来ること。

【諦める(あきらめる)】⇒もう希望や見込みがないと思ってやめる。

【こずえ】⇒木の幹や枝の先。木の先端。

【縫う(ぬう)】⇒物と物の狭い間を抜けて進む。

【目を皿にする(めをさらにする)】⇒物を探し求める時などに、目を大きく見開く。

【観察(かんさつ)】⇒物事の状態や変化を理解しようと、注意深く見ること。

【一心に(いっしんに)】⇒他のことを考えずに心を一つに集中させるさま。

【脱皮(だっぴ)】⇒昆虫などが、成長のために古くなった外皮を脱ぎ捨てること。

【その都度(つど)】⇒そのたびごとに。毎回。毎度。

【文様(もんよう)】⇒模様。ものの表面にあらわれた形。

【希求(ききゅう)】⇒強く願い求めること。

【採集(さいしゅう)】⇒標本や資料にするために、取って集めること。

【斑点(はんてん)】⇒表面にまばらに散らばっている点。

【高名(こうめい)】⇒高い評価を受け、広く一般の人々に名前を知られているさま。

【書家(しょか)】⇒書道の専門家。書道にすぐれた人。

【艶やか(つややか)】⇒光沢があって美しいさま。

【漆(うるし)】⇒天然樹脂の油性塗料の一つ。ウルシの樹皮に傷をつけて採取した樹液に、油・着色剤などを加えて製した塗料。

【優美(ゆうび)】⇒上品で美しいさま。しとやかで美しいさま。

【触角(しょっかく)】⇒昆虫などの頭部から出ている、対をなす細長い突起物。

【息を殺す(いきをころす)】⇒呼吸をおさえて、音をたてないようにする。

【そらんじる】⇒暗記する。

【丹念(たんねん)】⇒細かいところまで注意を払うさま。

【廃線(はいせん)】⇒廃止された路線。

【書庫(しょこ)】⇒書物を収めておく部屋・建物。

【たなびく】⇒横に長くただよう。

【群青色(ぐんじょういろ)】⇒鮮やかな藍がかった青色。

【覆う(おおう)】⇒一面に広がり、全体をつつみこむ。

【瞬く(またたく)】⇒光がちらちらする。光が明滅する。

【僅か(わずか) 】⇒ほんのすこしであるさま。

【経る(へる)】⇒時日が過ぎる。時がたつ。

【思いをはせる】⇒遠く離れているもののことを思う。

【耳を澄ます(みみをすます)】⇒聞こうとして注意を集中する。

【目を凝らす(めをこらす)】⇒よく見ようとじっと見つめる。

【高じる(こうじる)】⇒ますます気持ちが強くなる。

【旅程(りょてい)】⇒旅の道のり。

【一瞬たりとも】⇒たとえ一瞬であっても。

【センスオブワンダー】⇒自然に対して、不思議さを感じ取る力。

【息をのむ】⇒驚いたりして息を止める。

【紛れもなく(まぎれもなく)】⇒間違いなく。

【原点(げんてん)】⇒物事の出発点。基準になる点。

【由来(ゆらい)】⇒物事がそれを起源とするところ。由緒。

『ルリボシカミキリの青』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

コンチュウを捕まえる

②網をニギりしめる。

アザやかな青色。

ダッピを繰り返す。

ロセン図を描く。

タンネンに調べる

ショウコを集める。

カガヤきを失う。

きさせない工夫。

⑩決定的なシュンカン

解答①昆虫 ②握 ③鮮 ④脱皮 ⑤路線 ⑥丹念 ⑦証拠 ⑧輝 ⑨飽 ⑩瞬間
問題2

「蝶への興味はやがてもっと硬質の美しさへの希求に変わる。」とあるが、「硬質の美しさ」とはどのような美しさか?次の選択肢から選びなさい。

(ア)鮮やかで深く青い美しさ。

(イ)優美でつややかな美しさ。

(ウ)めったに見られない美しさ。

(エ)揺るぎない絶対的な美しさ。

解答(エ)「硬質」は本来「かたい性質」という意味だが、ここでは「揺るぎない・確固とした」などの意味で考えればよい。つまり、「ずっと変わらない美しさ・不変的な美しさ」という意味。この前の文章で、脱皮をしながら成長して美しくなる蝶の話がされているが、この蝶については「成長する美しさ・可変的な美しさ」を述べている。一方で、その後のカミキリムシは、しっかりしていて壊れにくい甲虫であり、なおかつフェルメールでも出せない絶対的な美しさを持つことから、(エ)の「揺るぎない絶対的な美しさ」となる。
問題3「フェルメールでさえ作りえない青の由来を、つまりこの世界のありようをただ記述したかったのだ。」とあるが、「この世界のありようを記述したかったのだ」とは、どういうことか?
解答フェルメールでさえ作りえない青の由来を生物学者として調べ上げ、ルリボシカミキリの青色の美しさを文字に起こして記録したかったということ。
補足「この世界のありよう」とは「ルリボシカミキリが持つ青色」のこと、そして「記述」とはここでは「文字として書くこと」を意味している。つまり筆者は、写実的な絵を描くフェルメールですら作れない青の由来を、生物学者として何とか文字に起こして表現したかった、ということを述べている。
問題4

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)筆者が子供の頃見たルリボシカミキリの青は、どんな絵具をもってしても描けないほど鮮やかで深く青いものであった。

(イ)筆者は昆虫が大好きで最初は蝶の採集に熱心だったが、やがてルリボシカミキリの硬質の美しさと出会い、心を奪われるようになった。

(ウ)人は自分にとって好きなことを職業にして、一瞬たりとも飽きないように続けることが必要であり、そのことが最後の最後まで自分を励まし続ける。

(エ)筆者にとってのセンス・オブ・ワンダーは、虫が大好きだった子供の頃にルリボシカミキリの青に震えた感触であった。

解答(ウ)本文中には、「好きなことがそのまま職業に通じる必要は全くない」とある。筆者は、何でもよいので何か一つ好きなものを持ち、好きであり続けることが大事だと述べている。

まとめ

 

以上、今回は『ルリボシカミキリの青』について解説しました。ぜひ本作の内容を正しく理解して頂ければと思います。