『日本の社会は農業社会か』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストにも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本作のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。
『日本の社会は農業社会か』のあらすじ
本文は、内容から三つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①柴草屋という廻船商人は、町野川の河口の港で活動していた。だが、彼らは江戸時代前期の文書だと、頭振に位置付けられていることが分かった。頭振とは水呑のことで、非常に豊かで土地を持つ必要がない人々が貧しい農民に位置付けられていたのだ。また、百姓円次郎の願書が襖の下張り文書の中から出てきたが、この文書から、彼の父親は、日本海で手広く商売をしている廻船人ということが分かった。
②このことを新聞記者たちに紹介した。だが、「百姓」は農民ではなく廻船人であることをなかなか納得してもらえず、記者たちに間違った記事を書かれてしまった。この時に、百姓は農民であるというイメージが根深く浸透していることを実感した。
③その後の調査で、輪島や宇出津のような海辺の都市のほか、飯田、甲、波並のような都市的な集落も、頭振の比率がきわめて高いことが統計的に判明した。つまり、百姓は農民で、水呑は貧農というこれまでの常識が、まったく間違いである事が証明されたのだ。とすると、百姓を農民、水呑は貧農と思い込んだために、われわれは深刻な誤りをおかしてきたことになる。
『日本の社会は農業社会か』の要約&本文解説
本文では、「百姓は農民で、水呑は貧農である」という常識が誤りであったことが説明されています。
一般的には、「水呑」は、江戸時代に自分の田畑を持たなかった下層農民、つまり貧しい農民という常識があります。
しかし、当時の文書をよく読むと、実際には裕福な廻船商人であっても、土地を持つ必要が全くないことから、貧しい「水呑」に位置付けられていたことが分かりました。
また、襖の下張り文書など、細かいところまで念入りに調べたことで、百姓円次郎の父親は、手広く商売している廻船人であることも分かりました。
このように、一見正しいと考えがちな常識であっても、物事を深く追究することで、私たちは思い込みや誤った考えに気付くことができます。
本文では、石高を記した公の文書と、襖の下張り文書の両方にあたった結果、筆者はそれまでの思い込みに気付くことができました。
同様に、常識というのは多くの調査をし、さまざまな別の見方をすることで、時にはまったくの間違いであることを証明することができるのです。
『日本の社会は農業社会か』の意味調べノート
【因縁(いんねん)】⇒以前からの関係。ゆかり。
【時国家(ときくにけ)】⇒石川県珠洲市(すずし)にある歴史的な旧家で、江戸時代には能登国の豪商として知られた家系。
【融通(ゆうずう)】⇒必要な物や金を都合すること。やりくり。
【富裕(ふゆう)】⇒財産が多くあり、生活が豊かなさま。
【年貢(ねんぐ)】⇒日本の封建時代(主に江戸時代)において、農民が領主や幕府に納めた租税の一種。
【賦課(ふか)】⇒租税などを割り当てて負担させること。
【毛頭ない(もうとうない)】⇒まったくない。
【余儀なくされる(よぎなくされる)】⇒やむを得ずそのような状態になる。
【催促(さいそく)】⇒物事を早くするようにうながすこと。
【もっぱら】⇒ひたすら。ただただ。
【悪戦苦闘(あくせんくとう)】⇒困難な状況の中で、苦しみながら努力すること。
【徒労に終わる(とろうにおわる)】⇒無駄な努力で終わる。苦労が報われずに終わる。
【骨身にしみる(ほねみにしみる)】⇒心に強く感じる。痛いほどに実感する
【傑作(けっさく)】⇒言動などが突飛でひどくこっけいなこと。※「突飛」とは並み外れて風変わりなさま。
【追究(ついきゅう)】⇒分からないことを深く調べて、明らかにしようとすること。
【たずさわる】⇒ある物事に関係する。従事する。
『日本の社会は農業社会か』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①金銭をユウヅウする。
②苦しい生活をヨギなくされる。
③相手に返事をサイソクする。
④努力がトロウに終わる。
⑤根深いシントウがある。
まとめ
今回は、『日本の社会は農業社会か』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。