『ネットが崩す公私の境』 漢字 意味調べノート 200字要約 簡単に 授業

『ネットが崩す公私の境』は、高校教科書・現代の国語で学ぶ評論です。ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。

そこで今回は、『ネットが崩す公私の境』のあらすじや要約、意味調べなどを含めわかりやすく解説しました。

『ネットが崩す公私の境』のあらすじ

 

本文は大きく4つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①思想家ニーチェは、著者と読者について「誰もが読むことができるという事態は、書くことばかりか、考えることまで腐敗させる」と述べた。この言葉は、少数の著者が多数の読者を啓蒙し教化する、という活字書物文化を揶揄している。暇つぶしの気楽な読書態度では、「書かれたもの」の精神を読み解くことはできないのだ。

②<著者という権威>の成立は、活版印刷術の成立以降である。だが、インターネットの登場により、権威者の一方的な情報発信と、受動的に享受する多数の読者という上下構造がなくなり、誰でもが簡単に著者になるようになった。

③情報発信の総量は、メディア形態の技術的制約により決められ、マス・メディアにおける著者・情報発信者数は、構造上少数とならざるを得なかった。だが、インターネットでは情報の総量を制限したり、情報を内容や質によって淘汰したりする力がはたらかないのである。

④インターネットでは、<発想>と<発表>との間の落差がほとんど存在せず、<自我境界>が曖昧化、拡大化し、プライベートとパブリックの境がなくなる。今後は誰もが著者になる時代となるだろうが、誰もが公表できるという事態は、今度は何を腐敗させることになるだろうか。

『ネットが崩す公私の境』の要約&本文解説

 
200字要約従来、マス・メディアにおける著者・情報発信者数は、メディア形態の構造上少数にならざるを得なかった。だが、インターネットの普及により、情報の総量を制限したり情報の内容や質によって淘汰したりする力がはたらかなくなり、プライベートとパブリックの境がなくなるようになった。ニーチェは活字書物文化を「考えることまで腐敗させる」と揶揄したが、誰もが著書になる時代となると今度は何を腐敗させることになるだろうか。(199文字)

筆者はまず、第一段落でニーチェの言葉を紹介しています。それは、「誰もが読むことができる暇つぶしの読書は、考えることまで腐敗させる」というものです。

ニーチェのこの言葉は、「少数の著者が多数の読者を啓蒙し教化し、活字文化を揶揄したもの」だと述べています。「啓蒙」とは「知識のない人に正しい知識を与えて、教え導くこと」、「教化」とは「人を教え導くこと」です。

裏を返せば、「啓蒙」=「無知な人々に知識を教えてやる」、「教化」=「一定の教えに感化させる」というような高圧的・洗脳的な意味とも解釈することもできます。

ニーチェはこのような少数の著者が書いた本を、多数の読者がただ何となくといった感覚で読む活字書物文化を否定していたということです。

次の第二段落・第三段落では、「著者の権威性」がインターネットの登場により崩壊したことを述べています。

これまでのテレビやラジオ、新聞、雑誌といったメディアは、著者や情報発信者が少ないのが当たり前でした。ところが、今はインターネットで無限に近い情報を必要かつ的確に抽出する事できます。

また、私たち個人もSNSやブログといった個人媒体により簡単に情報を発信することができるようになりました。

この事により、筆者は「プライベート(個人)とパブリック(公)の境が溶け落ちるようになくなった」と述べています。

最後の第四段落では、今後は誰もが著者となり、誰もが公表できる時代になるため、今度は何が腐敗をさせることになるのだろうか、という一文で締めくくっています。

これは、インターネットの普及により今後起こり得る問題が何なのかを、読者へ投げかけている問題提起だと言えます。

『ネットが崩す公私の境』の意味調べノート

 

【腐敗(ふはい)】⇒精神が堕落して、弊害が生じる状態になること。

【啓蒙(けいもう)】⇒人々に正しい知識を与えて、教え導くこと。

【教化(きょうか)】⇒人を教え導き、望ましい方向に進ませること。

【揶揄(やゆ)】⇒からかうこと。

【全身全霊(ぜんしんぜんれい)】⇒その人に備わっている体力と精神力のすべて。

【権威(けんい)】⇒ある分野において優れたものとして信頼されていること。その道で第一人者と認められていること。

【変容(へんよう)】⇒姿や形が変わること。

【従来(じゅうらい)】⇒以前から今まで。これまで。

【享受(きょうじゅ)】⇒受け入れて自分のものとすること。

【崩壊(ほうかい)】⇒くずれてしまうこと。こわれてしまうこと。

【目下(もっか)】⇒現在。さしあたり。

【泣き寝入り(なきねいり)】⇒不本意ながらそのままにしてあきらめること。

【論拠(ろんきょ)】⇒議論の根拠。

【掲載(けいさい)】⇒文章などをのせること。

【匿名性(とくめいせい)】⇒自分の名前を隠したり、別の名前を使ったりする性質。

【誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)】⇒根拠のない悪口を言いふらして、他人を傷つけること。

【投書欄(とうしょらん)】⇒新聞・雑誌で読者からの投書を掲載するための欄。「投書」とは、意見・希望・苦情などの書状を関係機関などに送ること。また、その書状。

【デジタル】⇒連続的な量を、段階的に区切って数字で表すこと。

【集積(しゅうせき)】⇒集めて積み上げること。

【有用性(ゆうようせい)】⇒役に立つ性質。

【抽出(ちゅうしゅつ)】⇒多くの中からある特定のものを抜き出すこと。

【淘汰(とうた)】⇒不必要なもの、不適当なものを除き去ること。

【公(おおやけ)】⇒社会。公共。世間。

【思念(しねん)】⇒思い考えること。

【吟味(ぎんみ)】⇒念入りに調べて選ぶこと。

【自我(じが)】⇒他と対立する存在として意識した自分。

【曖昧(あいまい)】⇒物事がはっきりしないこと。

【短絡(たんらく)】⇒物事を単純、簡単に結び付けてしまうこと。

【プライベート】⇒個人的な物事であるさま。私的。

【パブリック】⇒公であるさま。公的。

【とりとめもない】⇒まとまりのない。

【発揮(はっき)】⇒もっている能力や特性などを十分に働かせること。

『ネットが崩す公私の境』のテスト問題対策

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

アクシュウを放つ。

②政治がフハイする。

③人々をケイモウする。

ケンイある賞を受賞する。

⑤自由をキョウジュする。

⑥雑誌に写真をケイサイする。

⑦よくギンミした材料。

解答①悪臭 ②腐敗 ③啓蒙 ④権威 ⑤享受 ⑥掲載 ⑦吟味
問題2「プライベートとパブリックの境が溶け落ちる」とはどういうことか?15文字以内で答えなさい。
解答個と公の境目がなくなること。(14文字)
問題3

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)ニーチェは、活字書物文化を「誰もが読むことができるのは、書くことばかりか、考えることまで腐敗させる」とし、文化の特質を揶揄した。

(イ)本の書き手を表す著者という言葉は、英語ではオーサーと言い、それは権威(オーソリティー)という言葉と深い関係にある。

(ウ)インターネットは、光速に近い検索能力により、必要な情報が瞬時に取り出せるが、情報量の過度な増加は、情報の有用性の減少につながる。

(エ)従来のメディアと異なり、インターネットでは<自我境界>が曖昧化、拡大化し、自己と世界が、いわば<短絡>してしまうという特徴がある。

解答

(ウ)情報の有用性の減少につながるのは、インターネットではなく、紙メディアにおいて一億人分の日記のような膨大な情報を修正した場合だと述べられていることから。

まとめ

 

以上、今回は『ネットが崩す公私の境』について解説しました。メディアについて論じた文章は、入試にも出題されやすいです。ぜひ内容を正しく理解して頂ければと思います。