「胸を打たれる」という慣用句をご存知でしょうか?何か感動する場面に遭遇した時に使われる表現です。
ただ、具体的にどのような場面で使うのかといった疑問があります。また、似たような表現である「心を打たれる」との違いも気になる所です。
本記事では、「胸を打たれる」の意味や語源、使い方、同義語などを詳しく解説しました。
胸を打たれるの意味
「胸を打たれる」とは「感動させられる・激しい感情に心を揺り動かされる」といった意味を持ちます。
例えば、あなたがとても感動する映画をみたとします。あまりにも感動的な映画だったため、数日経っても心がジーンと震えるような感覚でした。
このような場面では、「胸を打たれる映画だった」などと言うことができます。
また、非常に美しい歌声で鳥肌が立つような曲を聴いた時、講演会で心に響く名言を聞いた時、恩師から心を支える一言をもらった時なども胸を打たれる体験だと言えます。
つまり、「胸を打たれる」とは、何らかの外的な要因により、その人の心が激しく感動する様子を表すということです。
この時の要因というのは、人によっても異なるため一概には断定できません。ただ、一般には次のようなものが多いです。
- 映画やドラマ、音楽などの芸術作品に触れた時。
- ためになる言葉や名言を誰かからもらった時。
- スポーツなどでひたむきに頑張る人を見た時。
胸を打たれるの語源
「胸を打たれる」の「胸」はここでは「人の心のこと」を表しています。「胸」というのは、人間の体の中で心臓の位置にあります。
人間は感情的な変化があると、心臓が高鳴ります。例えば、好きな人と話をすると心臓がドキドキしますし、人前で緊張すると心臓がバクバクしたりします。これは何も感動する場合に限らず、楽しい場合、ワクワクする場合なども心臓が高鳴ります。
この事から、日本語では心の中で感情の変化が合った時に「胸」を使うようになりました。「胸を痛める」「胸に刻む」「胸を躍らせる」などの慣用句があるのはそのためです。
「胸を打たれる」もこれらの言葉と同様に、「心を打たれる」という意味だと考えれば問題ありません。つまり、「自分の感情がまるでムチで打たれるかのように心に強く衝撃を受ける」ということです。転じて、現在では「強く感動させられる」という意味で使われていることになります。
胸を打たれるの類義語
「胸を打たれる」の類義語は以下の通りです。
- 胸に響く
- 心に響く
- 心を打たれる
- 感動させられる
- 感化させられる
- 感激させられる
- 感銘を受ける
- ジーンとする
- 琴線に触れる
「胸を打たれる」を言い換えた表現はいくつかありますが、いずれも共通しているのは「感動させられる」ということです。何らかの外的要因で感動させれるものであれば、それは「類義語」だと言えます。
なお、「心を打たれる」は「胸を打たれる」と全く同じ意味の言葉(同義語)です。なぜなら、先述したように慣用句の世界では「心」と「胸」は同じ意味を表す体の部位として使われているためです。
ただ、その他の類語は全く同じ意味の言葉というわけではありません。例えば、「胸に響く・心に響く」などは「人の言葉や行動により、感動させられる」という限定的な使い方をします。
また、「感動させられる・感化させられる・感激させられる」などは「強く」という意味までは含まれていません。
「ジーンとする」は書き言葉よりも話し言葉で使われるという特徴があり、「琴線に触れる」は感動するという意味以外に、共感するという意味も含まれるという特徴があります。
胸を打たれるの英語訳
「胸を打たれる」は、英語だと次のように言います。
「be impressed by~」(~に感動して・感銘を受けて)
「be touched by~」(~に心を打たれる・感動する)
「impress」は「感動させる・感銘を与える」などの意味を持つ動詞です。受け身を表すbe動詞と、「~によって」という意味を持つ前置詞「by」を合わせることで「胸を打たれる」と訳すことができます。
また、「touch」はここでは「物理的に触れる」という意味ではなく、「琴線に触れる」という意味で考えると分かりやすいです。つまり、人の心の奥深い所に触れるので、「感動させられる」ということです。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
He was impressed by the movie.(彼はその映画に胸を打たれた。)
He was touched by the words of his master.(彼は師匠の言葉に胸を打たれた。)
胸を打たれるの使い方・例文
最後に、「胸を打たれる」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 昨日のドラマの最終回は、胸を打たれるシーンが何度もあった。
- 評判通り素晴らしい映画で、多くの人が胸を打たれる内容でした。
- 彼女の澄んだ美しい歌声に、聴衆たちは胸を打たれたようです。
- リーダーの勇気ある発言に対し、多くの選手たちが胸を打たれた。
- この本は私にとって胸を打たれるセリフがたくさん詰まっています。
- 先生から頂いたお言葉は、胸を打たれるものでした。本当に感謝しています。
- どんな困難があっても決して諦めないアスリートに子供達は胸を打たれた。
「胸を打たれる」という慣用句は、人が感動する様子を表す様々な場面で使うことができます。ただ、一般的にはその中でも強く感動したり激しく心を動かされたりするような時に使うことが多いです。
例えば、人気の映画やドラマの1シーンなどでは感動のあまり涙を流すような人もいます。また、誰かからもらった言葉や偶然読んだ本により、価値観が大きく変わるほど心が動かされるようなこともあります。
このような場面において、「胸を打たれる」を使うのが正しい使い方です。逆に言えば、ちょっとやそっと感動したり心が動いたりするような場面では使わない言葉ということになります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「胸を打たれる」=感動させられる・激しい感情に心を揺り動かされる。
「語源・由来」=「胸」は「心臓」、すなわち「人の心」を表すため。
「類義語」=「胸に響く・心を打たれる・感動させられる・感銘を受ける」等。
「英語訳」=「be impressed by~」「be touched by~」
「胸」を使った慣用句はいくつかありますが、「胸を打たれる」とは「激しく心を動かされること」を意味します。意味を覚えたからには、ぜひ正しい使い方をして頂ければと思います。