『無駄と進化』は、教科書・現代の国語に収録されている作品です。高校の定期テストにも出題されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『無駄と進化』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。
『無駄と進化』のあらすじ
本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①生物は、今のシステムを維持できないと存続できないし、そのシステムを変化させなければ環境の変化に対応できず、進化も起こらない。つまり、生命は「変わるべきか、変わらざるべきか」という根源的なジレンマを持っているのだ。この矛盾を解決する手段として、不均衡進化論という説がある。これは、親DNAの二本の鎖から生まれた子孫DNAは、それぞれ遺伝子の変異率が異なるというものだ。生命というシステムは、現状を維持しながら、一方では変化の可能性を探る巧妙さを併せ持つことが、DNAに刻まれているのだ。
②生物に変化をもたらす遺伝子の変異は、ランダムに起こる。生命が途切れることなく続いてきたのは、変異がランダムに起きてきたからなのだ。環境は常に変化するため、依存している環境が失われれば、それに最適化された生き物は容易に絶滅してしまう。「無駄」な変異をランダムに起こし続け、それを許容することで、現状とは違う環境で生存できるような、新しい強靭な生き物を生み出せるのだ。
③生物の多様性を生み出す「変異」は、自己複製を担う保守的な「システム」と並び、生命の存続を支える大切な要素である。「変異」は「システム」の論理から独立し、ランダムで特定の方向性を持たないことが、その本質として重要なのだ。
『無駄と進化』の要約&本文解説
筆者はまず、第一段落で生物というのは、「変わるべきか」と「変わらないべきか」というジレンマを持っていることを述べています。「ジレンマ」とは、二つの相反する事柄の板挟みにあい、どちらも選択をしかねる状態のことです。
生物というのは、今のシステムを変えずにそのまま維持できないと生き残ることはできません。一方で、そのシステムを変化させなければ環境の変化に対応できず、進化も起こりません。
そのため、生物のDNAには、自分とそっくりな子孫を作る機能と、変化に富んだ進化を担う子孫を作る機能の両方が刻まれているのだと述べています。
また、そもそも遺伝子の変異というのはランダム(偶然)に起こるのだと筆者は言います。もし変異が一方向だと、依存している環境が変われば、その生物は簡単に絶滅してしまいます。
例えば、海水にしか対応できない魚がいたとしたら、その魚は淡水に環境が変わると、生き残ることはできません。ランダムに淡水に対応する変異が起こることで、その魚は環境が変わったとしても生き残ることができます。
このように、遺伝子の変異がランダムに起こり、そこに無駄があることで、生物というのは環境の変化に対応し、進化することができるのだと筆者は述べているのです。
『無駄と進化』の意味調べノート
【仮説(かせつ)】⇒ある現象を合理的に説明するため、仮に立てる説。
【複製(ふくせい)】⇒もとの物と同じ物を別に作ること。
【肝(きも)】⇒物事の重要な点。
【変異(へんい)】⇒同種の生物の個体間に形態的・生理的な違いが現れること。
【ジレンマ】⇒二つの相反する事柄の板挟みになり、どちらも選択をしかねる状態。
【存続(そんぞく)】⇒引き続き存在すること。
【システム】⇒相互に働き合う諸要素の関係、またその全体。
【根源的(こんげんてき)】⇒物事の根源や根本にかかわるさま。
【矛盾(むじゅん)】⇒つじつまの合わないこと。
【変化に富む(へんかにとむ)】⇒様々な特徴や個性があること。
【巧妙(こうみょう)】⇒すぐれてたくみなこと。
【ランダム】⇒無作為。任意。偶然に任せるさま。
【有用(ゆうよう)】⇒役に立つこと。
【途方もない(とほうもない)】⇒並々でない。
【極論(きょくろん)】⇒極端に言うこと。
【依存(いぞん)】⇒他に頼って存在、または生活すること。
【容易(ようい)】⇒たやすいこと。
【許容(きょよう)】⇒許すこと。大目にみること。
【強靭(きょうじん)】⇒しなやかで強いこと。柔軟で粘り強いこと。
【特性(とくせい)】⇒そのものだけが持つ性質。
【縁起でもない(えんぎでもない)】⇒不吉で縁起が悪い。
【滅亡(めつぼう)】⇒ほろびてなくなること。
【致死(ちし)】⇒人を死に至らせること。
【両輪を成す(りょうりんをなす)】⇒両者が一組になって成り立つ。
【罵る(ののしる)】⇒声高に非難する。
『無駄と進化』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①現状をイジする。
②犬をクサリにつなぐ。
③イタンの説。
④コウミョウな手口。
⑤ムダを省く。
⑥生物がゼツメツする。
⑦チシ量に達する。
⑧エンギでもない話をする。
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。
(ア)「不均衡進化論」では、変化した子孫がシステムの維持に堪えないような異端児であっても、もう一方が現状維持を担ってくれるので問題ないと考える。
(イ)環境は常に変化するため、依存している環境が失われれば、それに最適化された生物は容易に絶滅してしまう。
(ウ)生物は、その環境に必要なものを生み出し、それ以外の無駄は削り落として最適化することにより、その環境下で生存できるように進化してきた。
(エ)世の中には、人間の致死量の千倍近い放射線にさらせれても平気で生きているような、全く無駄な性質を持った変な生物が存在する。
まとめ
以上、今回は『無駄と進化』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。