模倣と「なぞり」 200字要約 意味調べノート テスト問題 解説

模倣と「なぞり」は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、高校の定期テストにも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、模倣と「なぞり」のあらすじや要約、意味調べなどをまとめました。

模倣と「なぞり」のあらすじ

 

本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①模倣と「なぞり」の違いがわかりやすいのは、書道の稽古である。臨書は、かたわらに手本を置き、これを見ながら模倣する。摹書(もしょ)は、手本を半紙の下に敷き、透けて見える筆跡を上からなぞる。「模倣」は外的な(客体の)特徴の再現であり、「なぞり」は内的な(主体の)活動の「型」の反復である。スポーツでも外形の模倣だけでは上達しないが、「なぞり」によって身体の自発的な活動の「型」を自分の身体に具現させると、突然目が開けることがある。

②日本の芸道では、「なぞり」によって身につける方法を伝統としている。日本型稽古の特徴は、「模倣」「非段階性」「非透明な評価」であり、伝統芸能の学習法を西欧型レッスンの「強力な反証例」とみなしている。日本の芸道では、「形」の模倣を通じるほか「型」を身体で理解する道はない。「なぞり」には、手本である人の身になるという理解、手本と同じ心身を身につけるという成就、という二つの段階が区別される。芸道の稽古とは、自ら「ものに成る」ために、芸を自分の「ものにする」過程なのだ。

③伝統芸能では、さらに一歩進めて、自ら身につけた「型」を破ることが求められる。それは新しい「型」として固定するわけではない。志ん生の「型破り」な芸は誰にもまねられないのは、それがすでに固定した「型」ではないからだろう。各人は自在に「型」を破って、しかも予期せぬ意味を作り出すのである。

模倣と「なぞり」の要約&本文解説

 

200字要約模倣は外的な特徴の再現であり、「なぞり」は内的な活動の「型」の反復である。日本の芸道では、「なぞり」によって技術を身につけるという方法を伝統としていて、「形」の模倣を通じるほか「型」を身体で理解する道はない。芸道の稽古とは、自ら「ものに成る」ために、芸を自分の「ものにする」過程である。だが、伝統芸能ではさらに一歩進めることを求め、名人は自在に「型」を破り、予期せぬ意味を作り出すことができる。(197文字)

全体の構成としては、第一段落で「模倣となぞりの違い」について、第二段落で「日本型の稽古の特色」について、第三段落で「型破り」について説明されています。

まず本文を理解する上で、「模倣」と「なぞり」の違いを把握することが重要となります。

簡単に言えば、「模倣」とは「見た目をそっくりと真似ること」、そして「なぞり」とは「中身や考え方を追うこと」です。

野球で例えるなら、大谷選手のバッティングフォームを「そのまま形だけ真似る」のが「模倣」です。

スイングの構えや動きだけをコピーし、なぜそうしているのかまでは理解せず、「ただ同じようにやれば上手くいく」と思っているような状態です。

一方で、 大谷選手が「どうしてそのフォームにしたのか」や「どんな練習をしてきたのか」を学び、その練習方法や考え方を取り入れることが「なぞり」です。

フォームだけでなく、練習方法やトレーニングのやり方、試合中の考え方などを、自分の状況に合わせて練習するようなことです。

筆者は、日本の芸道では、「形」の模倣を通じるほか「型」を身体で理解する道はない。と述べています。

つまり、日本の芸道では、まず形を真似(模倣)することでしか、『型』というものを体で理解することはできないという意味です。

芸道(茶道、武道、書道など)では、まず師匠や手本の「見た目の形」をそのまま真似ることから始めます。これは、習得の基礎の段階を指します。

次に、単なる見た目の形ではなく、動きや技、心のあり方などを含む芸道の本質的な部分を学び、その形の奥にある意味を身体で理解して使いこなせるようになることを目指します。

芸というのはこのように、「形の模倣」を通じて、「型」を身体で理解することにより、自分の「ものにする」ことができると筆者は考えているのです。

その上で、最終的に筆者は、名人というのは、そこからさらに一歩進めて、自ら身につけた「型」を破り、しかも予期せぬ意味を作り出すのだと述べています。

これはつまり、本当の一流になるには、何かを真似するだけではなく、身につけた「型」をどこかで破る必要があるということです。

模倣と「なぞり」の意味調べノート

 

【模倣(もほう)】⇒まねること。

【なぞり】⇒すでに書いてある文字や絵の上をたどって書くこと。

【独創性(どくそうせい)】⇒人のまねではなく、独自の考えで物事をつくり出す能力。

【先人(せんじん)】⇒昔の人。

【鑑(かがみ)】⇒手本。模範。

【筆跡(ひっせき)】⇒書いた文字の跡。

【抽出(ちゅうしゅつ)】⇒抜き出すこと。

【要請(ようせい)】⇒求めること。

【認知(にんち)】⇒ある事柄をはっきりと認めること。

【緩急(かんきゅう)】⇒遅いことと、速いこと。

【熟練者(じゅくれんしゃ)】⇒経験が長くて、仕事が上手な人。

【目が開ける(めがひらける)】⇒真理を悟る。

【相呼応(あいこおう)】⇒物事が互いに応じあうこと。

【具現(ぐげん)】⇒実際に、具体的な形として現すこと。

【平たく言えば(ひらたくいえば)】⇒分かりやすく言えば。

【芸道(げいどう)】⇒芸能や技能の道。

【体系的(たいけいてき)】⇒物事が整理されて、整った形で構成されているさま。統一的。

【イロハ】⇒けいこ事の初歩。

【邦楽(ほうがく)】⇒日本の伝統的な音楽。

【依拠(いきょ)】⇒よりどころとすること。

【及ぶかぎり】⇒できる限り。可能な限り。

【曖昧(あいまい)】⇒はっきりしないこと。

【叱責(しっせき)】⇒他人の失敗などをしかりとがめること。

【往々にして(おうおうにして)】⇒しばしば。

【反証例(はんしょうれい)】⇒反対するための証拠となる例。

【矛盾(むじゅん)】⇒つじつまが合わないこと。

【普遍的原型(ふへんてきげんけい)】⇒すべてに共通しているような、もとになる型。

【鋳型(いがた)】⇒鋳物を作るときに、溶かした金属を注ぎ入れる型。

【鋳物(いもの)】⇒溶かした金属を型に流し込み、器物を作ること。

【表象(ひょうしょう)】⇒物事を頭の中で思い描いたり、イメージとして認識すること。

【腑に落ちる(ふにおちる)】⇒納得できる。

【境位(きょうい)】⇒置かれた状況や環境。

【継承(けいしょう)】⇒受け継ぐこと。

【仏道(ぶつどう)】⇒仏道修行により、悟りに至る道。

【成就(じょうじゅ)】⇒成し遂げること。

【陶冶(とうや)】⇒人の性質や能力を引き出して育て上げること。育成。

【体得(たいとく)】⇒実際の体験を通して自分のものとすること。

【安んじて(やすんじて)】⇒安心して。

模倣と「なぞり」のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

カンキュウをつけた描き方。

ジュクレンした技術をもつ。

③日本ブヨウの動きを学ぶ。

④学問をシュウトクする。

⑤芸のケイショウに成功する。

⑥願いがジョウジュする。

解答①緩急 ②熟練 ③舞踊 ④習得 ⑤継承 ⑥成就
問題2『一連の「呼びかけ―応答」のプロセス』とはどのようなことか?
解答例筆先の下にある手本が次の動きを要請し、手がそれに応じて手本を再現すること。
問題3『別の観点から見るなら、日本の芸道で習得すべきものは、~』とあるが、ここでの「観点」とはどのような観点のことか?
解答例訓練法、方法論という観点から転じて、訓練や稽古によって最終的に獲得すべき対象全体という観点。
問題4『型破りが「さまになる」』とは、どういうことか?
解答例「型」一般の成立の秘密を完全に体得していて、すでに固定した「型」を破っても、ちゃんとした姿や形になること。

まとめ

 

今回は、模倣と「なぞり」について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。