『モードの変遷』の要約&本文解説、テスト対策問題

『モードの変遷』は、教科書・文学国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所が多いです。そこで今回は、モードの変遷のあらすじや要約、語句の意味などをわかりやすく解説しました。

目次

『モードの変遷』のあらすじ

本文は、5つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①近代以降の短歌では、時代のモードが切り替わる時期に秀歌が生まれている。これは、時代の転換期に短歌が「対応」できた場合、その作品が秀歌として定着するとも言い換えられる。時代の影響を受けながらも、それに拮抗するようなアイディアを生みだせたとき、詩型にとっての新たなモードを形成するのだ。

②日本の近代という時代性に対して、短歌という詩型は「『私』の獲得」という形で対応した。自分自身の内面や感情を強く表現する「私」を、最も強靭なスタイルで作品化できた歌人が、この時代の秀歌を生み出していった。

③戦後という時代性に対しては、短歌は「言葉のモノ化」という形で対応した。虚構の「私」を含む私性の拡大を可能としたのは、言葉も一種のモノであり、「私」は改変可能だという感覚である。この考え方を推進した塚本邦雄には、近代的な短歌の「私」は戦争を防ぎえなかったという怒りがあった。しかし、後続世代へは戦後の現実に順接的な現象として「言葉のモノ化」だけが受け継がれた。

④その後、現在に至るまで、近代や戦後に匹敵する時代の波はなく、同じだけの強度を持つ短歌のモードも生まれていない。近代と戦後の二大モードは現代短歌に大きな影響を与え続けており、旧の上に次々に新が乗っていく。いわば、上塗り的な変化を示している。

⑤この二つのモードに唯一匹敵しつつある近年のモードは「『口語』の導入」だろう。それは1980年代バブル期の時代性への対応として現れた。このような短歌の「私」性、モノ化した言葉、口語性の各モードは、現在の我々の歌に大きな影響を与えている。

『モードの変遷』の要約&本文解説

200字要約

近代以降の短歌では、時代のモードが切り替わる転換期に秀歌が生まれてきた。日本の近代という時代性に対しては「私」の獲得によって対応し、戦後という時代性には言葉をモノのように扱う「言葉のモノ化」によって対応した。現在は近代や戦後に匹敵するほど強いモードは現れていないが、近年では口語の導入が新たな動きとして現れている。このような「私」性、言葉のモノ化、口語性といったモードが現代短歌に影響を与えている。

(198文字)

この文章が一番言いたいこと

穂村弘の「モードの変遷」は、短歌が時代の変化とともにどのように表現の仕方を変えてきたのかを説明した評論文です。この文章で筆者が一番言いたいことは、短歌は時代が大きく変わるときに新しい表現の方法(モード)が生まれ、そのときに優れた短歌が生まれるという点です。つまり筆者は、「短歌の歴史」は「時代に合わせて表現スタイルが変化してきた歴史」だと考えているのです。

近代の短歌:「私」を表現するモード

まず筆者は、近代の短歌について説明します。近代以前の短歌は、季節の風景や自然を詠むものが多く、作者自身の個人的な感情はあまり前面に出ていませんでした。

しかし、近代になると、作品の中で「私」という存在を強く表現する短歌が増えました。つまり、作者自身の気持ちや体験を中心にした表現です。

たとえば、昔の短歌が「春の桜がきれいだ」というように自然の美しさを詠むものだとすると、近代の短歌は「私は失恋して悲しい」というように、自分の感情を強く表現するものが増えたというイメージです。

このように「私」をはっきりと作品の中心に置く表現が、近代短歌の大きなモードでした。

戦後の短歌:「言葉のモノ化」

次に筆者は、戦後の短歌について説明します。戦後になると、短歌の表現はさらに変化します。この時代には、言葉を物のように自由に扱う発想が広がりました。

筆者はこれを「言葉のモノ化」と呼んでいます。つまり、短歌の中の「私」は必ずしも作者本人である必要はなく、架空の人物でもよくなり、言葉を自由に組み合わせて表現することが重視されるようになったのです。

たとえば、現実にはありえないような「私は宇宙でリンゴを食べている」といった内容でも、言葉の組み合わせとして面白ければ短歌として成立するという感覚です。このような新しい発想を強く推し進めたのが塚本邦雄でした。

現代の短歌:「口語」の導入

そして筆者は、現在の短歌についても触れています。近代や戦後のように社会が大きく変化する時代はその後あまりなく、それに匹敵するほど強い新しいモードはまだ生まれていないと述べます。

そのため、現代の短歌はこれまでの表現の上に新しい要素が少しずつ重なっていく「上塗り」のような形で変化していると説明しています。ただし、近年の新しい流れとして、筆者は「口語の導入」に注目しています。

これは日常会話のような言葉を短歌に取り入れる表現で、たとえば「街で君を見かけた」のように、普段の会話に近い言葉で短歌を作るスタイルです。

筆者の主張まとめ

筆者はこのように、短歌には「私を強く表現する近代のモード」「言葉を自由に扱う戦後のモード」「話し言葉を取り入れる近年のモード」といった流れがあると説明しています。

つまりこの文章のテーマは、短歌の歴史は時代の変化に応じて新しい表現方法(モード)が生まれてきた歴史であるということです。短歌は昔から同じ形の詩のように見えますが、実際には社会の変化とともに表現の考え方が大きく変わり続けてきたのだと筆者は述べているのです。

『モードの変遷』の意味調べノート

【秀歌(しゅうか)】⇒特に優れていると評価される和歌や短歌。

【転換期(てんかんき)】⇒物事の流れや状況が大きく変わる重要な時期。

【拮抗(きっこう)】⇒力や勢いがほぼ同じで、互いに張り合っていること。

【強靭(きょうじん)】⇒非常に強くてしなやかで、簡単には壊れないこと。

【虚構(きょこう)】⇒現実ではなく、想像や作り事によって作られたもの。

【比喩(ひゆ)】⇒ある物事を、別の物事にたとえて表現すること。

【唯一無二(ゆいいつむに)】⇒ただ一つで、同じものが他に存在しないこと。

【冒涜(ぼうとく)】⇒神聖なものや尊いものを軽んじたり、汚したりすること。

【任意(にんい)】⇒自分の意思や判断で自由に選ぶこと。

【典型(てんけい)】⇒その特徴をよく表している代表的な例。

【嫌悪(けんお)】⇒強い嫌な気持ちを抱き、嫌いだと感じること。

【順接的(じゅんせつてき)】⇒前の事柄を受けて、自然に次の結果や内容が続くさま。

【祖国(そこく)】⇒自分の生まれた国、または自分の国。

【フェミニズム】⇒男女平等を目指し、女性の権利や地位の向上を求める考え方。

【依然として(いぜんとして)】⇒以前と同じ状態がそのまま続いているさま。

【匹敵(ひってき)】⇒力や価値などがほぼ同じで、肩を並べられること。

『モードの変遷』のテスト対策問題

問題1

次の仮名部分を漢字に直しなさい。

①報酬をカクトクする。

②社会にエイキョウを与える。

③それはテンケイ的な失敗例だ。

④動物をシイクする施設。

⑤状況はイゼンとして変わらない。

解答

①獲得 ②影響 ③典型 ④飼育 ⑤依然

問題2

「時代のモードが切り替わる時期」と同じ意味の表現を本文中から六文字で抜き出しなさい。

解答

時代の転換期

問題3

「時代の転換期に詩型としての短歌が何らかの「対応」を示しえたとき、」とあるが、「何らかの対応」とはどういうことか?

解答

時代に拮抗するようなアイディアを生みだすこと。

問題4

「日本の近代という時代性」に対して、短歌はどのような形で対応したか?本文中から六文字で抜き出しなさい。

解答

『私』の獲得

問題5

「虚構の『私』による私性の拡大」とは、具体的にどのようなことを指すか?

解答

経験していない出来事を詠うこと。

問題6

「『口語』の導入」は、どのような現象に対する「対応」として現れたか?本文中から12文字で抜き出しなさい。

解答

八〇年代バブル期の時代性

まとめ

今回は、『モードの変遷』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として活用していただければと思います。

この記事を書いた人

大学卒業後、国語の添削員として就職。その後、WEB運営会社を起業し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。
「保有資格」⇒漢字検定1級・英語検定準1級・簿記二級・宅建など。

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