共鳴し引き出される力 現代の国語 学習の手引き 意味調べ ノート 教科書

『共鳴し引き出される力』は、教科書・現代の国語に収録されている作品です。定期テストなどにも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の考えが分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『共鳴し引き出される力』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。 

『共鳴し引き出される力』のあらすじ

 

本文は、行空きにより3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①丹野さんは、若年性アルツハイマー型認知症であるため、人の顔が認識しにくい。だが、困ることはない。それは、自分が忘れてしまっても、相手が覚えていてくれれば、その人との関係は消えることはないからだ。記憶する能力を、「個人に属するもの」ではなく「人と人との間に成立するもの」と考える発想の転換には、能力や福祉を考える上で重要なヒントが詰まっている。

②「できる/できない」を二分法的に考える能力主義は正しいだろうか?そもそも、能力は個人に属するのかという疑問がある。人は誰と仕事をするかによって引き出される能力は変わるし、道具を使うことで発揮できる能力もある。また、目の見えない知人の話では、マラソンで伴走者とリズムを同調させながら走っていると、目の前に走路が見えるときがあったようだ。

③私が「できる/できない」の二分法を警戒するのは、先回りの介助につながるからだ。「この人はできないので、やってあげよう」とする忖度は、当事者の自由やチャレンジする機会を奪ってしまう。失敗を未然に防ぐ「予防」よりも、失敗が起きた時にネットワークの中で解決できるように備えておく「予備」が重要なのだ。社会は、障害のある人々が身をもって示す能力の定義を見習うべきである。

『共鳴し引き出される力』の要約&本文解説

 

200字要約記憶するという能力を「個人に属するもの」ではなく、「人と人のあいだに成立するもの」と捉える発想の転換には、能力や福祉を考える上で重要なヒントが詰まっている。「できる/できない」を二分法的に考える能力主義は、先回りの介助につながり、当事者の自由やチャレンジする機会を奪ってしまう。社会は、他者の力を巧みに取り込み、自分をネットワーク化して生きる人たちが身をもって示す能力の定義を見習うべきである。(197文字)

筆者はまず第一段落で、記憶する能力について触れています。

私たちは通常、記憶する能力のことを個人に属するもの、つまり自分だけが覚えておくことだと考えています。しかし、筆者は、記憶というのは必ずしも自分だけが覚えておく必要はなく、人と人との間に成立するものであればよいのだと述べています。

つまり、自分ではなく相手が覚えてくれればよいということです。こういった「私が記憶する」という考え方から「私たちが記憶する」という考え方の転換には、能力や福祉を考える上での重要なヒントが詰まっていると筆者は述べています。

次の第二段落では、「能力とは個人に属するものではない」という主張を行っています。そもそも、能力は誰と仕事をするかによっても変わりますし、道具を使う事により引き出される能力があったりもします。

また、目の見えない知人がマラソンで伴走者と「共鳴」の感覚を得たエピソードを紹介し、一方通行ではない「人と人との間に成立する能力」があることを紹介しています。

第三段落では、「できる/できない」という二分法の能力主義を否定しています。こういった考え方は、「この人はできないだろう。ならやってあげよう」というような先回りの介助につながり、当事者の自由やチャレンジする機会を奪ってしまいます。

そういった失敗を未然に防ぐことではなく、失敗が起きた時にそれをネットワークの中で解決できるような予備をしておくことが重要だと述べています。

最終的に筆者は、他者の力を巧みに取り組み、自分をネットワーク化して生きる人たちが身をもって示す能力の定義に、社会は習うべきであると結論付けています。

これはつまり、社会全体が、障害を持つ人たちの能力を見本として習うべきということです。

『共鳴し引き出される力』の意味調べノート

 

【当事者(とうじしゃ)】⇒その事柄に直接関係している人。

【認識(にんしき)】⇒ある物事を知って理解すること。

【ラディカル】⇒根本的。根源的。

【転換(てんかん)】⇒別のものに変えること。

【福祉(ふくし)】⇒公的扶助やサービスによる生活の安定、充足。

【硬直(こうちょく)】⇒考え方などに柔軟性がないこと。

【能力主義(のうりょくしゅぎ)】⇒能力を重視して、人を評価すること。

【発揮(はっき)】⇒もっている能力を十分に働かせること。

【書記(しょき)】⇒文字を書きしるすこと。

【伴走者(ばんそうしゃ)】⇒視覚障害のある選手とともに走る人。「伴走」とは「マラソンなどで競技者のそばについて走ること」という意味。

【同調(どうちょう)】⇒他に調子を合わせること。

【走路(そうろ)】⇒走者がはしるための道。コース。

【全盲(ぜんもう)】⇒両眼の視力を全く失った状態。

【共鳴(きょうめい)】⇒他人の考えや行動などに心から同感すること。

【曖昧(あいまい)】⇒はっきりしないこと。

【警戒(けいかい)】⇒あらかじめ注意し、用心すること。

【先回り(さきまわり)】⇒相手より先に物事をしたり考えたりすること。

【介助(かいじょ)】⇒そばに付き添い、動作などを手助けすること。

【忖度(そんたく)】⇒他人の心中をおしはかること。おしはかって相手に配慮すること。

【リスク】⇒危険。

【未然(みぜん)】⇒まだそうなっていないこと。

【巧み(たくみ)】⇒物事を手際よく、上手に成し遂げるさま。

『共鳴し引き出される力』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

シンダンを下す。

キオク力を試す。

③社会フクシを充実させる。

④地震をケイカイする。

⑤病人をカイジョする。

⑥絶好のキカイを逃す。

解答①診断 ②記憶 ③福祉 ④警戒 ⑤介助 ⑥機会
問題2『「できる/できない」を二分法的に考える硬直した能力主義である。』とあるが、「二分法的に考える」とは、ここではどういうことか?
解答例すべての能力を、「できる」か「できないか」のどちらかでしか考えないということ。
問題3「共鳴の感覚」とは、どのような感覚か?本文中の語句を使い答えなさい。
解答例一つの体に起こる変化が相手に伝わり、更に自分に返ってきて増幅されるような感覚。
問題4

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)能力は個人に属するものではなく、人と人との間に属するものであり、誰と仕事をするか、どんな道具を使うかによっても変わる。

(イ)全盲のマラソンランナーが、「進むべき道が見える」と感じたのは、彼女と伴走者との間で共鳴の感覚を得ていたからである。

(ウ)私たちは、失敗を未然に防ぐ「予防」よりも、失敗が起きた時にネットワークの中で解決できるように備える「予備」をしておくことが重要である。

(エ)先回りの介助をすることは、失敗が起きた時にそれをネットワークの中で解決できるように備えることなので、リスクへの回避につながる。

解答(エ)先回りの介助をすることは失敗を未然に防ぐこと(予防)なので、当事者の自由やチャレンジする機会を奪ってしまう。と本文中にはある。

まとめ

 

以上、今回は『共鳴し引き出される力』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。