芥川龍之介『蜘蛛の糸』あらすじ・解説|テーマと作者の伝えたいこと

『蜘蛛の糸』は、芥川龍之介による有名な文学作品です。中学国語の教科書にも採用されています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『蜘蛛の糸』のあらすじや作者の考え、語句の意味などを簡単にわかりやすく解説しました。

目次

『蜘蛛の糸』のあらすじ


本文は、三つの段落から構成されています。以下に、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①ある日、お釈迦様(しゃかさま)は極楽の蓮池のほとりを歩いていました。池の水はすみきっていて、その下には地獄の様子が見えます。そこには犍陀多(かんだだ)という男が苦しんでいました。彼は多くの悪事を重ねた大泥棒ですが、ただ一度だけ、小さな蜘蛛(くも)の命を助けたことがあります。そのことを思い出したお釈迦様は、そのわずかな善い行いに報いようと、蓮の葉にかかっていた蜘蛛の糸を地獄へ下ろしました。

②血の池でもがいていた犍陀多は、天から銀色に光る蜘蛛の糸がたれてくるのを見つけます。これにつかまって上へ登れば、地獄から抜け出せるに違いないと思い、必死に登り始めました。やがて血の池が遠くに見えるところまで来て喜びます。しかし下を見ると、多くの罪人たちも同じ糸を登ってきています。糸が切れてしまうのを恐れた犍陀多は、「この糸は自分のものだ」と叫び、他の罪人を追い払おうとしました。

③その瞬間、蜘蛛の糸はぷつりと切れ、犍陀多は再び地獄へ真っ逆さまに落ちてしまいます。一部始終を見ていたお釈迦様は、悲しく思いました。自分だけ助かろうとする身勝手な心が、犍陀多を再び地獄へ戻したのです。極楽の蓮の花は、何事もなかったかのように静かに咲き続けていました。

『蜘蛛の糸』のテーマ&本文解説

なぜ釈迦様は犍陀多を助けようとしたのか

犍陀多(かんだた)は生前、多くの悪事を重ねた人物でしたが、たった一度だけ蜘蛛を踏み殺さずに助けたという善行を行っています。釈迦はその小さな善行を決して見逃さず、「その行いに報いる機会を与えよう」と考えました。ここで作者は、どんなに小さな善行でも、意味があり、救いのきっかけになり得るということを示しています。


蜘蛛の糸が切れた本当の理由

蜘蛛の糸が切れた理由は、糸が細かったからでも、罪人が多すぎたからでもありません。決定的な原因は、犍陀多が「この糸は自分のものだ」と叫び、他人を突き放そうとした心にあります。この瞬間、犍陀多の行動は善ではなく、強い自己中心的な欲望に変わりました。その結果、救いの象徴であった蜘蛛の糸は役目を失い、切れてしまったのです。


作者が描いた人間の弱さ

この物語で犍陀多は、最初は助かりたい一心で必死に糸をのぼりますが、希望が見えた途端、他人を蹴落とそうとします。作者はここで、人間は追い詰められたときよりも、余裕が見えたときに本性が表れるという厳しい現実を描いています。これは特別な悪人だけでなく、誰にでも起こり得る心の弱さです。


『蜘蛛の糸』が伝える最終的なメッセージ

『蜘蛛の糸』の結論は、「善い行いをしたかどうか」だけではなく、その人が最後まで他人を思いやる心を持ち続けられるかどうかが重要であるという点にあります。自分だけ助かろうとする心は、せっかく与えられた救いさえも壊してしまいます。芥川龍之介はこの物語を通して、人としてどう生きるべきか、そして本当の意味での「善」とは何かを、読者に静かに問いかけているのです。

『蜘蛛の糸』の意味調べノート

【極楽(ごくらく)】⇒仏教で、苦しみがなく幸福に満ちた世界。

【蓮池(はすいけ)】⇒蓮の花が咲いている池。極楽を象徴する場所。

【蕊(しべ)】⇒花の中心にある部分で、花粉を作るところ。

【三途の河(さんずのかわ)】⇒死者があの世へ行く途中で渡るとされる川。

【針の山(はりのやま)】⇒地獄にある責め苦の場所で、鋭い針の山。

【犍陀多(かんだた)】⇒物語の主人公で、多くの悪事を働いた大泥棒。

【罪人(ざいにん)】⇒罪を犯した人。

【悪事(あくじ)】⇒してはいけない悪い行い。

【善い事(よいこと)】⇒人や生き物を思いやる正しい行い。

【無暗に(むやみに)】⇒よく考えずに。むちゃに。

【報い(むくい)】⇒行いに対して返ってくる結果。

【翡翠(ひすい)】⇒緑色の美しい宝石。ここでは蓮の葉の色を表す。

【血の池(ちのいけ)】⇒地獄にある、罪人が苦しめられる池。

【嘆息(たんそく)】⇒悲しみや苦しみから出るため息。

【縋りつく(すがりつく)】⇒助けを求めて必死につかまること。

【相違(そうい)】⇒ちがい。

【容易(ようい)】⇒たやすいこと。簡単なこと。

【蟻の行列(ありのぎょうれつ)】⇒蟻が一列に並ぶ様子。多くの罪人が続くたとえ。

【一部始終(いちぶしじゅう)】⇒物事のはじめから終わりまで全部。

【無慈悲(むじひ)】⇒思いやりがなく冷たいこと。

【浅間しい(あさましい)】⇒見苦しい。情けない。

【頓着(とんちゃく)】⇒気にかけること。こだわること。

【午(ひる)】⇒正午ごろ。昼の時間。

『蜘蛛の糸』のテスト対策問題

問題1

お釈迦様が犍陀多を地獄から救おうと考えたのはなぜか?簡潔に答えなさい。

解答

犍陀多が生前に、小さな蜘蛛を踏み殺さずに助けたという、たった一つの善い行いをしていたから。

問題2

蜘蛛の糸は、なぜ途中で切れてしまったと考えられるか?本文の内容をもとに答えなさい。

解答

犍陀多が「この蜘蛛の糸は自分のものだ」と言い、他の罪人を助けようとせず、自分だけ助かろうとする無慈悲な心を持ったから。

問題3

犍陀多が蜘蛛の糸をのぼっている途中で、「しめた。しめた。」と笑ったときの気持ちを答えなさい。

解答

地獄から抜け出せそうだと分かり、助かることへの喜びと安心を感じている気持ち。

問題4

本文で「蜘蛛の糸」は、何を象徴していると考えられるか。最も適切なものを選びなさい。

(ア)地獄から極楽へ行くための、誰にでも平等に与えられた救済の道

(イ)過去の罪をすべて消し去る、絶対的な神の力

(ウ)人間にわずかに残された善意と、それによって与えられる救いの可能性

(エ)罪人同士が協力することで得られる集団的な救済

解答

(ウ)

蜘蛛の糸は、犍陀多がかつて蜘蛛を助けたという小さな善行をきっかけに与えられたものであり、誰にでも無条件に与えられる救いではない。また、利己心によって簡単に断ち切られてしまう点から、人間にかろうじて残る善意と、そこから生まれる不確かな救いを象徴していると考えられる。
問題5

次の内、作者が伝えたいこととして最も適切なものを選びなさい。

(ア)人は一度でも善い行いをすれば、どのような罪を犯していても必ず救われるということ。

(イ)地獄に落ちた人間は、どんな努力をしても極楽へ行くことはできないということ。

(ウ)御釈迦様であっても、罪人を試すために、わざと蜘蛛の糸を途中で切るようなことがあるということ。

(エ)人は善行によって救われる機会は与えられるが、他人を思いやる心を失えば、その救いは失われてしまうということ。

解答

(エ)

まとめ

今回は、芥川龍之介『蜘蛛の糸』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として活用していただければと思います。

この記事を書いた人

大学卒業後、国語の添削員として就職。その後、WEB運営会社を起業し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。
「保有資格」⇒漢字検定1級・英語検定準1級・簿記二級・宅建など。

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