個人から分人へ 解説 テスト問題 教科書 本文 主張

『個人から分人へ』は、平野啓一郎氏による評論文です。教科書・現代の国語にも収録されています。

この記事では、『個人から分人へ』のあらすじや要約、語句の意味などをわかりやすく解説しました。

『個人から分人へ』のあらすじ

 

本文は、内容から4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①「個人」の語源であるラテン語の意味は、「分けられない」だった。この「個人」が、一人の人間という意味を派生させたのは主に二つの理由からだった。一つは、神が一者である以上、神と向かい合う人間もまた一なる存在でなければならないからという考え方である。もう一つは、人間が帰属するカテゴリーを細分化した果てに、最後に「分けられない」存在として残るようになったのが個人だという考え方である。近代化によって、階層的に分化させて再編成する上で、個人という概念には有効性があったので、以後、共同体に個人を対置する発想は、今日まで受け継がれている。

②だが、日常生活を顧みると、人間が分割不可能な主体であるという考え方には、どうしても無理がある。個人は分割不可能という考え方は、人格の唯一性、排他性を基本としているので、現実とは真っ向から矛盾する。「本当の自分」は一つだが、社会生活上、表面的な幾つかの顔を使い分けているという考え方もあるが、この考え方には、コミュニケーションが虚無的になる、「本当の自分」とは何か分からないという問題点がある。

③この矛盾を解決するには、複数の人格の脱中心化されたネットワークを一人の人間として理解する「分人」という概念が必要である。個性は分人の構成比率によって決定されるので、環境やつきあう相手が変わった時も一人になった時も有効な概念といえる。

④人格の複数性を改めて「分人」として概念化し、基本単位として認識することで、激動する世界の現実と、より適応的な価値観のシステムの構築が可能になる。分人という概念が有効に機能することを、私は信じる。世界を変えるためには、分人が有効に機能し、自己と他者の関係性を把握し直すところから始めなければならない。

『個人から分人へ』の要約&本文解説

 

200字要約個人の概念と対人関係の現実の矛盾を解決するには、複数の人格の脱中心化されたネットワークを一人の人間として理解する「分人」という概念が必要である。人格の複数性を「分人」として概念化し、基本単位として認識することで、激動する世界の現実と、より適応的な価値観とシステムの構築が可能になる。世界を変えるためには、分人という概念が有効に機能し、自己と他者との関係性を把握し直すところから始めなければならない。(199文字)

私たちは、一人の人間に対して「個人」という言葉をよく使います。この「個人」は、元々「分けられない」という意味でしたが、筆者は、一人の人間が首尾一貫した分割不可能な主体である、という考え方には無理があるのではと述べています。

なぜなら、私たち個々の人間は極めて多様であり、対人関係ごとに常に違った自分にもなるため、「本当の自分」などは誰一人として知らないからです。

そこで筆者は、この問題を解決するために、一人の人間を、「個人」に対して「分人」という用語で呼んでいます。「分人」とは、簡単に言えば「対人関係ごとに変わる様々な自分」のことです。

筆者は、個々の人格を分割可能な「分人」として概念化し、「分人」を基本単位として認識することで、激動する世界の現実と、より適応的な価値観とシステムの構築が可能になると述べています。

例えば、「分人」を認めることができれば、「自分のことは嫌いだけど、あの人といる時の自分は好き」などのように、自己否定を部分否定に留めることもできます。

このように、筆者は分割不可能な「個人」という概念を改め、対人関係によって異なる自分の人格を「分人」という概念で認め、この概念が有効に機能することによって、より自由で豊富な生が実現することを期待しているのです。

『個人から分人へ』の意味調べノート

 

【接頭辞(せっとうじ)】⇒単独では用いられず、常に他の語の上について、その語とともに一語を形成するもの。「お話」「こ犬」「御親切」などの「お」「こ」「御」の類。

【一神教(いっしんきょう)】⇒唯一絶対の神のみを認めて信仰する宗教。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教など。

【論理学(ろんりがく)】⇒正しい思考の筋道や知識の構造などを研究する学問。

【帰属(きぞく)】⇒ものや人が、特定のものに属すること。

【カテゴリー】⇒ジャンル。分類。

【果て(はて)】⇒物事の終わり。しまい。

【対置(たいち)】⇒二つの物事を対照させて置くこと。

【顧みる(かえりみる)】⇒振り返ること。

【首尾一貫(しゅびいっかん)】⇒初めから終わりまで、態度や方針がずっと同じで変わらないこと。

【相互作用(そうごさよう)】⇒互いに働きかけ、影響を及ぼすこと。

【真っ向(まっこう)】⇒真正面。

【矛盾(むじゅん)】⇒つじつまが合わないこと。

【苦肉の策(くにくのさく)】⇒苦しまぎれに考え出した手立て。

【否応なく(いやおうなく)】⇒招致も不承知もなしで。文句なしで。

【虚無的(きょむてき)】⇒世の中や人生などがむなしく思われるさま。この世のすべてのものに意味や価値を認めないさま。

【構成比率(こうせいひりつ)】⇒あるものが全体に占める割合。

【昔馴染み(むかしなじみ)】⇒ずっと以前から親しくしている人。

【隔離(かくり)】⇒へだて離すこと。

【自明(じめい)】⇒特に証明などをしなくても、明らかであること。

【概念化(がいねんか)】⇒特定の現象や物事などを、他者と広く共有できる概念に置き換えること。

【肯定(こうてい)】⇒正しいと認めること。

【留める(とどめる)】⇒その程度・段階・範囲内におさめて、そこから出ないようにする。

【アイデンティティ】⇒自己同一性。

【紐帯(ちゅうたい)】⇒二つのものを結びつける役割をするもの。

【断絶(だんぜつ)】⇒結びつきや関係が、切れること。

【回避(かいひ)】⇒物事を避けてぶつからないようにすること。

【従事(じゅうじ)】⇒仕事に携わること。

【リスク】⇒危険。悪いことが起こる可能性。

【軽減(けいげん)】⇒減って軽くなること。

『個人から分人へ』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①日常生活をカエリみる。

キョム的になる。

③患者をカクリする。

④自己をコウテイする。

⑤国交をダンゼツする。

⑥痛みをケイゲンさせる薬。

解答①顧 ②虚無 ③隔離 ④肯定 ⑤断絶 ⑥軽減
問題2「人格の唯一性、排他性」とは、ここではどういうことを表しているか?
解答例自分の人格は唯一の「本当の自分」だけであり、他の自分の人格の存在はいっさい認めないこと。
問題3『この現実と真っ向から矛盾する。』とあるが、「この現実」とはどういう現実か?
解答例分化する複数の人格を、すべて「本当の自分」として抱え込みながら生きていくしかないという現実。
問題4「排他的な中心としての人格を認めず、複数の人格の脱中心化されたネットワークこそを一人の人間として理解する」とはどういうことか?
解答例「本当の自分」は一人だけで分割不可能であるという唯一性・排他性を基本とした考え方ではなく、対人関係毎に違う自分の人格すべてを一人の人間として理解するということ。
問題5「自己否定も部分否定に留めることができる」とあるが、なぜか?
解答例相手との関係性により、自分の人格が変わることを肯定しているため、ある人格を否定しても別の人格を否定することにはならないから。

まとめ

 

今回は『個人から分人へ』を解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。