
『言葉を生きる』は、若松英輔によって書かれた評論文です。教科書・文学国語にも掲載されています。
ただ、本文を読むと内容が分かりにくいと感じる箇所が多いです。そこで今回は、『言葉を生きる』のあらすじや要約、語句の意味などをわかりやすく解説しました。
『言葉を生きる』のあらすじ
本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①言葉は、人生を根本的に変える力を持つ。知ることと生きることは違う。知ることは対象の周辺をなぞることだが、生きることは対象と深く交わることだ。
②柳宗悦は、亡くなった妹の生涯を語る文章を書いた。その中で、悲しみを真に慰めるのは、悲しみを深く生きることだと知る。さらに、悲しみは愛と同義であると述べた。彼にとって悲しみは、かけがえのない人生の出来事であった。悲しみは最も平等に与えられた人生の出来事であり、人は喜びよりも悲しみによって他者と、強く、深くつながっている。存在するのはかけがえのないたった一つの悲しみだけだ。だが、すべての人がかけがえのない悲しみの経験を大切にしているとは限らない。世の中の風潮が、悲しみに宿った意味を希薄にしているように思われる。悲しむ者を、いたずらに頑張れと励ましてはならない。励ましとは、黙って寄り添うことであり、相手の感情を写し取ろうとすることだ。
③柳の言葉に出会ってから、私の中で悲しみは全く姿を変えた。悲しみは悲惨な経験ではなく、むしろ人生の秘密を教えてくれる出来事に感じた。私の悲しみを慰めたのは悲しみという言葉だった。その言葉を生き始めたとき、世界は一変した。悲しみの経験は痛みの奥に光を宿している。
『言葉を生きる』の要約&本文解説
言葉は人生を根本的に変える力を持ち、知ることと生きることは異なる。知ることが対象の周辺をなぞることなのに対し、生きることは対象と深く交わることである。柳宗悦は妹の死を通して、悲しみを真に慰めるのは悲しみを深く生きることであり、悲しみは愛と同義であると述べた。また、励ましとは黙って寄り添って感情を受け止めることだと述べた。柳の言葉に出会ってから、私の中で悲しみは痛みの奥に光を宿すものへと変わった。
(199文字)筆者の主張は何か
この文章で筆者が言いたいことは、「言葉をただ知るだけでなく、その言葉を自分の人生の中で本当に生きることが大切だ」ということです。知識として理解するだけでは、人は本当の意味で変わりません。言葉を自分の経験と結びつけて受け止めたとき、はじめて人生の見え方が変わるのだ、というのが筆者の中心的な主張です。
「知る」と「生きる」の違い
本文の冒頭では、「知ること」と「生きること」は違うと述べられています。知ることは、対象のまわりをなぞることにすぎません。たとえば、「悲しみ」という言葉の意味を辞書で引いて知ったとしても、それは表面的な理解です。一方で生きることは、その悲しみを自分の体験として深く味わうことです。つまり、言葉を頭で理解する段階から、心と体で受け止める段階へ進むことが「生きる」ということなのです。
悲しみについての考え
柳宗悦は、妹を亡くした経験を通して、悲しみを深く見つめ、その意味を考えました。そして彼は、悲しみはただ乗り越えるべき苦しみではなく、愛する者を失ったからこそ生まれる、かけがえのない経験だと捉えました。つまり、悲しみは愛と切り離せないものだと考えたのです。
また、人は喜び以上に、悲しみを通して他者と強く結びつくことがあるとも述べています。だからこそ、悲しんでいる人に安易に「頑張れ」と励ますのはふさわしくありません。本当の励ましとは、無理に前向きにさせることではなく、相手の悲しみに静かに寄り添い、その思いを共に受け止めようとする姿勢なのです。
筆者の主張まとめ
筆者は、柳の言葉に出会ったことで、自分の悲しみの意味が変わったと述べています。悲しみは不幸な出来事ではなく、人生の本質を教えてくれる経験だと気づいたのです。つまりこの文章は、言葉を表面的に理解するのではなく、自分の人生の中で本当に生きることの大切さを伝えています。それが筆者の最も伝えたい主張です。
『言葉を生きる』の意味調べノート
【徒労(とろう)】⇒むだな骨折り。苦労がむくわれないさま。
【しばしば】⇒何度も。たびたび。
【なぞる】⇒あとを追うようにたどる。表面をなでるように写す。
【提唱(ていしょう)】⇒新しい考えや主張などを発表すること。
【異郷(いきょう)】⇒生まれ育った土地とは異なる土地。
【汝(なんじ)】⇒おまえ。あなた。
【傍ら(かたわら)】⇒そば。かたわら。
【悲哀(ひあい)】⇒深い悲しみ。
【同義(どうぎ)】⇒意味が同じであること。
【ことさらに】⇒わざと。特に強調して。
【固有(こゆう)】⇒そのものだけが持っている性質。
【風潮(ふうちょう)】⇒その時代や社会に広く行きわたっている考え方や傾向。
【希薄(きはく)】⇒うすいこと。関係や関心が弱いこと。
【切望(せつぼう)】⇒強く願うこと。
【安易(あんい)】⇒深く考えず、いい加減であること。
【激励(げきれい)】⇒励まし、元気づけること。
【悲惨(ひさん)】⇒見ていられないほど痛ましくむごいこと。
【向こう見ず(むこうみず)】⇒後先を考えずに行動するさま。
【矛盾(むじゅん)】⇒つじつまが合わないこと。話や考えが食いちがうこと。
『言葉を生きる』のテスト対策問題
次の仮名部分を漢字に直しなさい。
①新しい理論をテイショウする。
②彼はイキョウで暮らした。
③社会のフウチョウに流される。
④先生が選手をゲキレイした。
⑤ヒサンな事故が起きた。
①提唱 ②異郷 ③風潮 ④激励 ⑤悲惨
「むしろ、言葉だけが、そうした力を持っている。」とあるが、「そうした力」とはどのような力か?
人生を根本から変えるような力。
「世の中の風潮が、悲しみに宿った意味を希薄にしているように思われる。」とあるが、「世の中の風潮」とは、どのような風潮か?
悲しんでいる人に、頑張れというような一方的な言葉をかけて、励まそうとする風潮。
「語られない励まし」とは、どういうことか?具体的に答えなさい。
大切な人を亡くして悲しんでいる人に安易に「頑張れ」と言うのではなく、そばで黙って寄り添い、その悲しみを共に受け止めること。
「悲しみの経験は、痛みの奥に光を宿している。」とは、どのようなことか?
悲しみはただつらいだけの出来事ではなく、その深い痛みの中に人生の意味や他者とのつながりを気づかせる大切なものが含まれているということ。
次の内、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。
(ア)悲しみは避けるべき不幸であり、前向きな励ましによって早く乗り越えるべき経験である。
(イ)悲しみは人を孤立させるが、言葉によって整理することで知識として理解できる。
(ウ)悲しみは愛と深く結びついた人生に不可欠な経験であり、人を他者と結びつけるものである。
(エ)悲しみは個人的な感情にすぎず、社会的な意味や価値を持たないものである。
(ウ)
まとめ
今回は、『言葉を生きる』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として活用していただければと思います。