言葉の力 国語 解説 200字要約 あらすじ 意味調べノート テスト問題

『言葉の力』は、大岡信による文章です。中学や高校の教科書にも取り上げられています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『言葉の力』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。

『言葉の力』のあらすじ

 

本文は、大きく四つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを紹介していきます。

あらすじ

①大げさな言葉は我々をあまり感動させず、つつましくてささやかな言葉が、しばしば人を深く揺り動かす。大げさな言葉は、たいていの場合は出来あいのものである。概念的で通念によって汚され、干からびた表現である場合がほとんどだ。人の心にたたき込みたい思いを表現するには、通りのいい表現を捨てて、正反対の方向へ道を探さなければならない。詩人の中原中也は、「問題は紛糾してはいない。野望が紛糾しているだけだ。」と言った。人間の生活は、日々のささやかな営みによって構成されるものであり、表現の細部をとってみれば、どの細部もそれ自体はささやかなものである。そのささやかなものの集まりが、巨大な結果を生むのだ。

②フランス語の「贈り物」には、元々「人を喜ばせる言葉」という意味があった。日本でも、古くから和歌は言葉の贈り物として男女の間で決定的な役割を果たした。和歌では一度にわずかなことしか言えない。言葉が贈り物になりえたのは、そのようなささやなかな言葉が相手の心に浸透し、互いの心が見えてくるという効果が生じたからだ。「言葉の力」とは、まさにこういうことである。頼りなくささやかなものの集まりが、時あって驚くべき力を発揮するところに、今も昔も変わらない言葉の偉大な力がある。

③大事なすばらしい言葉は、実はその辺にごろごろ転がっている当たり前の日常の言葉であるという認識を徹底しないといけない。日常使っている言葉は、氷山の一角にすぎず、海面下にある巨大な部分(人の心)が時として顔を表に出す。言葉の本質は、口先だけのもの、語彙だけのものではなく、それを発している人間全体の世界を背負うところにある。

④桜は全身で春のピンクに色づいているが、花びらはそれらのピンクがほんの先端だけ姿を出したものすぎない。木全体の活動のエッセンスが、春という時節に桜の花びらという一つの現象になるにすぎない。言葉の一語一語は、桜の花びら一枚一枚だと言っていい。本当は全身でその花びらの色を生み出している大きな幹を、一語一語の花びらが背後に背負っているのである。そういうことを念頭に置きながら言葉を考える必要がある。そういう態度をもって言葉の中で生きていこうとするとき、一語一語のささやかな言葉の、ささやかさそのものの大きな意味が実感されてくる。それが「言葉の力」の端的な証明である。

『言葉の力』の要約&本文解説

 

200字要約言葉の力は派手な表現ではなく、日常的なささやかな言葉の中に存在する。大げさな言葉は概念的で通念に汚染されていることが多いが、ささやかな言葉は相手の心に深く浸透し、互いの心を繋ぐ。言葉は単なる口先のものではなく、それを発する人間全体の世界を背負っており、その背後にあるものを意識することで、言葉の持つ本当の意味を理解できる。言葉の力を実感するには、日常の言葉に潜む奥深さに目を向けることが重要である。(199文字)

筆者の主張を簡潔に述べるなら、 「本当に人の心を動かすのは、派手で大げさな言葉ではなく、つつましくささやかな言葉である」 というものです。

筆者は、大げさな言葉は既成の概念に汚され、心に響きにくいのに対し、ささやかな言葉は相手の心に深く浸透し、大きな力を持つと述べています。その具体例として「和歌」を挙げ、短い表現がかえって相手の心を結びつける効果を持つことを説明しています。

さらに、言葉は単なる記号ではなく、その背後には話し手の思考や人間性があり、桜の花びらが木全体を象徴するように、一語一語にも大きな世界が隠れていると述べています。

そのため、 何気ない日常の言葉を大切にすることこそが「言葉の力」の本質であると結論づけています。

要するに、

  • 大げさな言葉は心に響きにくい
  • ささやかな言葉こそが人の心を深く動かす
  • 言葉は話し手の人間性や思考を背負っている
  • 日常の一つ一つの言葉の価値を見直すことが大切

こういった内容が、筆者の主張となります。

『言葉の力』の意味調べノート

 

【皮肉(ひにく)】⇒物事が予想や期待とは違う結果になること。

【散文(さんぶん)】⇒韻律や定型の制約がない普通の文章。

【出来あい(できあい)】⇒すでに出来上がっているもの。

【概念的(がいねんてき)】⇒具体的なものではなく、抽象的な考え方に基づくさま。

【通念(つうねん)】⇒広く一般的に受け入れられている考え。

【例証(れいしょう)】⇒具体的な例を挙げて説明すること。

【明瞭(めいりょう)】⇒はっきりしていて分かりやすいこと。

【通りのいい】⇒広く受け入れられやすい。理解されやすい。

【紛糾(ふんきゅう)】⇒議論や状況がもつれてまとまらなくなること。

【含蓄(がんちく)】⇒言葉や表現の中に深い意味が込められていること。

【複雑多岐(ふくざつたき)】⇒物事が入り組んでいて、さまざまな要素を含んでいること。

【依然(いぜん)として】⇒前の状態のままであること。

【徐々に(じょじょに)】⇒少しずつ進行するさま。

【照応(しょうおう)】⇒二つのものが互いに対応し合うこと。

【稀有(けう)】⇒めったにないこと。非常に珍しいこと。

【必需品(ひつじゅひん)】⇒生活や仕事に欠かせないもの。

【名刺代わり(めいしがわり)】⇒自分を紹介するためのものや行動。

【披瀝(ひれき)】⇒考えや気持ちを包み隠さずに述べること。

【浸透(しんとう)】⇒ある考えや影響が広がっていくこと。

【念頭に浮かぶ(ねんとうにうかぶ)】⇒考えの中に思い浮かぶこと。

【徹した(てっした)】⇒ある考えや態度を最後まで貫くこと。

【口をついて出る】⇒考える間もなく自然に言葉が出ること。

【しんから】⇒心の底から、本当に。

【あがめ奉る(あがめたてまつる)】⇒非常に敬い、大切にする。

【語彙(ごい)】⇒言葉の集まり。また、語の知識。

【変貌(へんぼう)】⇒姿や様子が大きく変わること。

【変幻(へんげん)】⇒姿や状態が次々に変わること。

【帰着(きちゃく)】⇒最終的にある結論や状態に落ち着くこと。

【氷山の一角(ひょうざんのいっかく)】⇒表面に現れているのは全体のごく一部分にすぎないこと。

【努める(つとめる)】⇒目標に向かって努力する。

【いやおうなしに】⇒自分の意思とは関係なく、強制的に。

【素人(しろうと)】⇒専門的な知識や経験を持たない人。

【上気(じょうき)】⇒興奮や高揚で顔が赤くなること。

【えもいわれぬ】⇒言葉では言いようもない。言葉では表現しきれない。

【懸命(けんめい)】⇒全力を尽くして頑張ること。

【脳裏(のうり)】⇒心の中。頭の中。

【端的(たんてき)】⇒簡潔で分かりやすいこと。

『言葉の力』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ユウワクに負けない。

②朝のアイサツを忘れずに行う。

③その考え方は少しずつシントウしている。

ケンメイに努力すれば、結果はついてくる。

⑤その言葉が今もノウリに焼き付いている。

解答①誘惑 ②挨拶 ③浸透 ④懸命 ⑤脳裏
問題2「出来合いの大げさな表現と正反対の方向」とは、どういう方向か?
解答つつましく発せられたささやかな言葉を使う方向。
問題3「通念の次元ならきわめて通りのいい種類の言葉」とあるが、これと同じ意味の表現を本文中からそのまま抜き出しなさい。
解答概念的で通念によって汚され、干からびた表現
問題4「木全体の活動のエッセンス」とは、どのようなことを指しているか?本文中から40文字以内で抜き出しなさい。
解答花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンクの色になろうとしている姿(37文字)
問題5「その一語一語の花びらが背後に背負っているのである。」とあるが、「一枚一枚の花びら」ではなく、「一語一語」の花びらと書かれているのはなぜか?
解答「一語一語」とすることで、言葉の一つ一つが桜の花びらのように背後に大きな世界を持つことを示しているから。

まとめ

 

今回は、『言葉の力』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。