『考える技術-考えさせない時代に抗して』は、野矢茂樹による文章です。教科書・現代の国語にも載せられています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『考える技術』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。
『考える技術』のあらすじ
本文は、内容により2つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①私は考えているとき、何をしているのか。実は、何もしていない。ただ、答えを思いつくのを持っているだけである。この「待つこと」こそ、考えることにほかならない。問いの緊張を持続させ、答えが降りてくるのを待っている間、抱え込んだ問いの観点から、すべてを見、すべてを聞く。ほとんどは問いと無関係だが、つねに問いのまなざしで見ていると、思わぬものが問いに結びつき、答えに近づくヒントになる。考えることは、せっかちな頭には無縁のことだ。現代は分からないことがあるとすぐにインターネットで調べたりウェブ上で誰かが答えてくれたりするので、自分でじっくり考えるよりも、どこかにある誰か他の人の答えを探そうとしてしまう。
②論理は考えることとは違う。考えることは雨乞いの儀式のようなものであり、論理は雨乞いの儀式の下準備の段階で活躍する。論理はまた、問題を整理したり分析したりするのに力を発揮する。問題を分析し、いくつの問題が含まれているのか、それらはどう関係しあっているのかを捉えるのだ。考える技術とは、論理の助けを借りていかに問いをうまく立てるかという、問う技術なのである。
『考える技術』の要約&本文解説
筆者はまず、「考えること」=「待つこと」なのだと述べています。例えば、何かを食べようと思い、少し考えて決める間、人はとくに何かをしたわけではありません。ただ、答えが思いつくのを待っているだけです。
すると、人は「あ、これだ」と思えるような何か食べたいものがひらめくことがあります。このように、人は問いの緊張を持続させ、答えが降りてくるのを待つことにより、思わぬものとの出会いがあるのだと筆者は考えているのです。
次に、筆者は「論理」と「考えること」との違いについて説明しています。よく「論理的に考える」などと言いますが、この二つは明確に異なる言葉なのだと筆者は述べています。
「論理」は可能なかぎり飛躍をなくそうとすることなのに対し、「考えること」は答えに向けて飛躍することを意味します。つまり、論理は、考えるための下ごしらえを整えることを指すということです。
例えば、「心とは何か」という問いは、問題が大きすぎてそのまま考えても頭が麻痺するだけで答えにたどり着きようがありません。
しかし、この問いをもっとずっと小さい、手の届く問題へと小分けにすることで、答えにたどり着くまでの飛躍をできる限り少なくすることができます。
このように、考える技術というのは、論理を助けとしていかに問いを上手に立てるかという、問う技術なのだと筆者は考えているわけです。
『考える技術』の意味調べノート
【しょっちゅう】⇒常に。いつも。
【誤解(ごかい)】⇒意味をとり違えること。間違った理解をすること。
【断じて(だんじて)】⇒けっして。
【しばしの間】⇒しばらくの間。短い間。
【哲学(てつがく)】⇒世界や人生の根本原理を追求する学問。
【及ぶ(およぶ)】⇒ある場所や範囲に達する。いたる。
【観点(かんてん)】⇒物事を見たり考えたりする立場。見地。
【せっかち】⇒先を急いで、心の落ち着きがないさま。
【無縁(むえん)】⇒関係のないこと。
【雨乞い(あまごい)】⇒日照りが続いたとき、雨が降るように神仏に祈ること。
【論理(ろんり)】⇒考えや議論などを進めていく筋道。
【飛躍(ひやく)】⇒ここでは、「答えが閃くこと」を表す。
【詰める(つめる)】⇒ここでは、「十分に検討し、物事の決着がつくようにする」という意味。
【あらかじめ】⇒前もって。
【発揮(はっき)】⇒もっている能力や特性などを十分に働かせること。
【依拠(いきょ)】⇒あるものに基づくこと。物事の根拠とすること。
【下ごしらえ】⇒ここでは、前もって準備をしておくこと。
【堅実(けんじつ)】⇒手堅く確実なこと。
【人事を尽くして天命を待つ】⇒自分ができる限りのことはして、その後の結果は運命に任せて、事の成り行きを見守ること。
【麻痺(まひ)】⇒通常の動きや働きが停止すること。
【手ごろ】⇒取り扱うのにちょうどいいこと。
『考える技術』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①キンチョウが続く。
②ムエンの出来事。
③論理がヒヤクする。
④恒例のギシキを行う。
⑤前提にイキョした意見。
⑥ケンジツな暮らしをする。
「雨乞いの儀式」⇒答えを得るために考えること。
「儀式の下準備」⇒堅実な論理力をもって問題を整理したり分析したりすること。
まとめ
今回は、『考える技術-考えさせない時代に抗して』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。