『インターネット時代の音楽産業』は、吉見俊哉による評論文です。教科書・現代の国語にも収録されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『インターネット時代の音楽産業』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。
『インターネット時代の音楽産業』のあらすじ
本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①CD販売が初めて一億枚を超えたのは平成の直前、八八年のことである。それから平成前期を通じてCDは売れ続け、九五年には四億枚を超え、九〇年代は日本の音楽産業がCDの普及に支えられて空前の繁栄を謳歌した時代だった。安室奈美恵の楽曲の大流行も、その後の宇多田ヒカルの躍進も、CD販売の拡張を基盤にしていた。しかし、一九九八年を境に、CD販売は下降線をたどり、二〇〇八年までには最盛期の約半分の規模に縮小した。
②この音楽産業の変化は、同時期のインターネットの爆発的浸透が一つの要因になってもたらされたものだと考えられる。宇多田は最初からネット社会に対応した音楽の作り手で、インターネットでの発信を始めたのも早かった。対して、安室の真骨頂はステージにあり、コンサートのステージに回帰することで、再び時代の中心に躍り出た。
③コンピュータとインターネットがコミュニケーションの支配的な基盤となる社会では、文化が享受される場の共同性が二つの方向で組織されていった。インターネットのなかで言葉やイメージが絶えず交信され続けることで創出される共同性と、非日常的に人々が集まった場所で、参加者の情動を巻き込んで創り出される共同性である。これにより、ライブ・エンタテインメントの市場規模は大規模化し、巨大な利益を生んだ。
④それまでのメディアの時代とネット社会を隔てるのは、音楽世界への参加方式が決定的に変わったことである。オーディエンスは、「受け手」ではなく、「パフォーマー」として演者と一緒に場を盛り上げていくスタイルに変わった。そして参加者たちは、盛り上がっている自分たちの写真や動画をネット上にアップロードし、自分たちの物語として発信し、潜在的な参加者を増やしていった。ネット社会は、潜在的関心層を発掘し、大規模な集まりを可能にするのである。
『インターネット時代の音楽産業』の要約&本文解説
私たちはネット社会と聞くと、人々が一方的にヴァーチャルな世界に閉じ込められているようなイメージを持ちがちです。
しかし、筆者は、インターネットというのは人々を非日常的な場所に誘い、大規模な集まりを発生させるといったことも可能にしているのだと述べています。
例えば、現代の音楽フェスティバルなどは、観客が立ちながらパフォーマンスを楽しみ、一緒に歌い、跳ね、歓声を上げながら、演者と共に場を盛り上げていくのが一般的です。
そして、参加者たちはそのような盛り上がった姿を、写真や動画としてネット上にアップロードし、自分たちの物語として世の中へ発信していきます。
こうして、ネットのなかで音楽フェスの様子が話題を呼び、潜在的な参加者がどんどんと増えていくようになります。
このように、二〇〇〇年代以降のネット社会は、人々の潜在的関心層を発掘し、彼らを非日常的な場所に誘い、大規模な集まりを可能にしたと筆者は考えているわけです。
『インターネット時代の音楽産業』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①子孫がハンエイする。
②ヤクシンを遂げる。
③新しい生活が国民にシントウする。
④解決の方法をモサクする。
⑤自由をキョウジュする。
⑥東西文化のユウゴウ。
⑦リュウセイを極める。
まとめ
今回は『インターネット時代の音楽産業』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事を参照してください。