『開かれた文化』は、教科書・現代の国語に収録されている文章です。定期テストにも出題されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いです。そこで今回は、『開かれた文化』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。
『開かれた文化』のあらすじ
本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①イスラーム教徒が多数を占めるインドネシアで、豚の酵素が触媒として使われていたことにより逮捕者が出るという事件が起こった。この事件は、日本に暮らす大半の者にとって、実に異質で理解しづらいことなので、「文化」が違うと結論づけることが多い。そして、異質ではあるものの、そのような「文化」が存在することだけは肯定するという「文化相対主義」が発生することになる。
②ある出来事が「文化の違い」によって説明されるとき、他文化や人々を特殊化するような方向で理解してしまう者が多い。これは、現象の表面的な違いに惑わされたものである。本来の文化相対主義とは、文化の枠を越えて、人間にとって普遍的な反応であるという理解に開かれていくこと=その文化を人間として理解することでなければならない。
③文化相対主義は、自文化に対する批判的な自己認識を持ち、自文化を常に相対化して考えるものである。それは、他文化を自文化とは決定的に異なった特殊なものとして見出す「文化相対主義」とは異なる。「文化」や「文化の違い」を、反・自文化中心的な文化相対主義に基づいて理解することで、いまだ明かされていない新しい普遍性へと、私たちや世界を開いていくことだろう。
『開かれた文化』の要約&本文解説
本文を理解する上で、まず「文化相対主義」という言葉の意味を把握することが重要となります。
「文化相対主義」とは、すべての文化には価値があるので、そこに優劣はないとする考え方のことです。例えば、自国の食文化を尊重しつつも、他国の食文化もちゃんと認めるというような考え方です。
筆者は、自分達とは異なる文化に対して、単に異質だと決めつけ、それをひたすら肯定するような態度は、本来の文化相対主義ではないのだと言います。
一見すると、異文化を丸ごと肯定することは、文化相対主義に近い考え方のようにも感じます。
しかし、丸ごと肯定するということは、他文化の内部における多様な差異、ゆらぎ、せめぎあい、葛藤などを見えなくさせることでもあり、表面的に現れたものだけをとらえて、それが彼らの価値観だと単純に判断することでもあります。
筆者は、本当の意味での「文化相対主義」とは、単に異文化を肯定するのではなく、自文化を相対化して批判的な認識を持ち、批判的な対話を含めた上で理解することだと考えているわけです。
『開かれた文化』の意味調べノート
【文化(ぶんか)】⇒学問・芸術・科学・宗教などの精神的活動、およびその所産。
【酵素(こうそ)】⇒細胞内で作られ、生体内のほとんどの化学反応の触媒の働きをする、たんぱく質を主体とする高分子化合物。
【触媒(しょくばい)】⇒化学反応の前後でそれ自身は変化しないが、反応の速度を変化させる物質。水素と酸素から水を生じさせる際の白金黒 (はっきんこく)などがその例。
【~の知るところとなる】⇒~が知るという事態になる。
【記憶に新しい】⇒その出来事が発生してからまだそれほど時間が経っていない。
【言及(げんきゅう)】⇒話がある事柄までふれること。
【そのかぎりでは】⇒その点だけを取り上げて考えれば。
【価値観(かちかん)】⇒何に価値を認めるかという考え方。
【規定(きてい)】⇒物事の形を決めること。
【異質(いしつ)】⇒他と性質が異なること。
【相いれない】⇒互いの意見や主張が異なっていて両立しない。
【折り合いをつける】⇒譲り合って解決する。
【方便(ほうべん)】⇒ある目的を達するための便宜上の手段。
【紛れもない(まぎれもない)】⇒きわめて明白である。まちがえようがない。
【肯定(こうてい)】⇒そのとおりであると認めること。積極的に意義を認めること。
【文化相対主義(ぶんかそうたいしゅぎ)】⇒全ての文化には価値があるので、そこに優劣はないとする考え方。
【とりわけ】⇒多くの中で特に。
【普遍的(ふへんてき)】⇒すべてに当てはまるさま。広く行き渡るさま。
【野蛮(やばん)】⇒未成熟で原始的なさま。
【最たるもの】⇒程度がもっともはなはだしいもの。
【彼我(ひが)】⇒相手と自分。「彼我のあいだ」で、ある文化にある人と別の文化にある人との間のこと。
【通約不能な異質性(つうやくふのうないしつせい)】⇒どうしても理解しあえない違いが存在するさま。
【抹消(まっしょう)】⇒消し去ること。
【差異(さい)】⇒他のものと異なる点。ものとものの違い。
【せめぎあい】⇒互いに争うこと。
【ゆらぎ】⇒動揺すること。
【葛藤(かっとう)】⇒人と人が互いに譲らず、対立すること。
【形こそ違え】⇒形式は異なるが内容は同じであること。
【欠落(けつらく)】⇒あるべきものが抜けていること。
【僭称(せんしょう)】⇒身分を越えた称号を勝手に名乗ること。
【貶める(おとしめる)】⇒劣ったものと軽蔑する。見下す。
【自文化中心主義(じぶんかちゅうしんしゅぎ)】⇒自分の属する民族や人種を美化し、他の民族・人種を排斥しようとする考え方。
【裁断(さいだん)】⇒物事の善悪・適否を判断して決めること。
【相対化(そうたいか)】⇒他と比較して考えること。
【固有(こゆう)】⇒独特。
【およそ~というもの】⇒一般に~というもの。総じて~というもの。
【自閉的(じへいてき)】⇒他者の意見を受け付けず、自分の内部でのみ判断するような行為のさま。
【侵略(しんりゃく)】⇒武力によって、他国の主権を侵害すること。
【覇権主義(はけんしゅぎ)】⇒一つの大国が力を持ち、他を支配することを国家の政策の中心におくこと。
【補完(ほかん)】⇒不十分な部分を補って、完全なものにすること。
【グローバリゼーション】⇒国や地域を越えて、地球規模で交流や通商が拡大すること。
【言説(げんせつ)】⇒意見を言ったり物事を説明したりすること。また、その言葉。
『開かれた文化』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①豚のコウソを作る。
②意見をコウテイする。
③ヤバンな行為をしない。
④ヒガの力量の差。
⑤登録をマッショウされる。
⑥ハケンを握る。
まとめ
以上、今回は『開かれた文化』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。