花のいざない 要約 解説 意味調べノート 文学国語 テスト問題

『花のいざない』は、教科書・文学国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『花のいざない』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。

『花のいざない』のあらすじ

 

本文は、五つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①太古の昔から人間の心には、花に寄せる、ある感性のようなものが持ち続けられてきた。人と自然との触れ合いにおいては、いちばん大きな窓口になるのが「花」である。とくに日本では、自然の風物は、四季の移り変わりという形で、人間の生活に密接な関わりを昔から持ち続けてきた。日本には、花にまつわる独特の習慣が数多く存在している。

②こうした中から、世阿弥の「花」論、すなわち演技者の肉体を通して発言するあらゆる魅力を花にたとえる、という考え方は、ごく自然に発想され、受け入れられてきた。しかし、世阿弥の説いている「花」の概念は、観客が反応するもののことであり、どのように感じるかは、観客次第である。舞台に立つ演技者は、観客の多様な受け取り方と対峙することになる。

③自然の花は、見せるために咲いているのではない。宇宙的時空の絶対的必然の瞬間に、ふと、咲く、誰かのためにではない。それが「花」だ。役者も誰かに向けて見せようとは思わずに、かつ観客の要求に応えて演技するものではなければならない。自然の花と人との出会いが一期一会であるように、舞台と観客との協調と闘争を繰り返すような関係も、そのような出会いになるべきではないだろうか。

④日本語の「自然」という語には「フト」という意味がある。この「フト」には、偶然の意と、必然の意が含まれる。また、「自然にそうなった」などと現代語としても使われる。「自然」は動くものなのだ。宇宙の法則に従って動き、しかも予見できない。これは無常観につながる考え方で、常ならず流動するところに、存在の真理を観ずるものである。

⑤自然の中で咲く花も、咲く側と見る側とが、「フト」出会ったときに、「花」の美しさが際立つものである。舞台においても。役者は自然に咲いている花みたいに、観客一人一人がさまざまなイメージを育み持てる、ひともとの花のようにありたいものである。舞台はその花の物語を語っている。

『花のいざない』の要約&本文解説

 

200字要約人は太古から花を愛し、四季の変化とともに生活に取り入れてきた。世阿弥の「花」論もその延長にあり、演技の魅力を花に例えている。観客は演技を多様に受け取り、舞台は一期一会の場となる。自然の花は誰かのためではなく、偶然と必然の中で咲くものである。舞台もまた、役者が自然に演じ、観客が解釈を育む場である。役者は花のように咲き、観客との関係の中で演技を完成させることが重要であり、それが舞台芸術の本質とされる。(200文字)

この文章は、舞台芸術における役者の演技と観客の関係を、「花」の例を使って説明しています。

まず最初に、演技は花が自然に咲くように、無理に見せようとせず自然であるべきだという点が述べられています。

花は、誰かに見せようとして咲くのではなく、自然の法則に従って偶然に咲きます。同様に、役者も観客に見せようと演技するのではなく、自然に自分の演技を表現することが大切です。

無理に感情を作り出すのではなく、素直に自分を表現することこそが、観客に本当に伝わる演技を生むのです。

次に、観客の反応が最も重要であることが強調されています。役者がどんなに素晴らしい演技をしても、それが観客にどう受け取られるかが最も大切です。

舞台芸術は、役者が演技するだけでは完成しません。観客がその演技をどう感じ、どう解釈するかによって、初めて演技の真価が問われます。

つまり、舞台は役者と観客との共同作業であり、観客の感じ方や反応によって完成するというわけです。

さらに、舞台と観客の関係は一期一会であるべきだという点が述べられています。花が一度きりの瞬間に咲くように、舞台での演技もまた、観客との出会いが一度きりであることを意味します。

その瞬間に観客が感じ取るものこそが、演技の価値を決定します。役者は観客との一期一会の出会いを大切にし、その場での演技に集中しなければならないということです。

結論として、この文章では、役者の演技は自然体で行い、観客がそれをどう感じるかが舞台芸術の本質であると述べられています。

『花のいざない』の意味調べノート

 

【めづる】⇒かわいがる。愛する。

【事あるごとに】⇒何か出来事があるたびに。

【洋の東西を問わず】⇒東洋と西洋の区別なく。

【花に寄せる】⇒花に思いをかける。花に対して好意の気持ちを抱く。

【感性(かんせい)】⇒物事を心に深く感じ取る働き。感受性。

【たけなわ】⇒真っ盛り。物事の勢いが最も盛んなとき。

【かこつけて】⇒口実にして。

【概念(がいねん)】⇒物事の大まかな意味内容。

【いとも】⇒全く。

【種々雑多(しゅしゅざった)】⇒色々なものが多く入り混じっていること。

【投げ出す】⇒放棄する。途中であきらめる。

【背負う】⇒負担や責任を引き受ける。

【おのずから】⇒自然に。

【しかるべきところ】⇒あるべき場所。

【しかるべき時節】⇒そのようにあるべき時期や季節。

【一期一会(いちごいちえ)】⇒一生に一度しかない出会い。

【フト】⇒なんとはなしに。不意に。

【無常観(むじょうかん)】⇒すべてのものは常に変化し、永遠に同じ状態を保つものはないという考え方。

【常ならず(つねならず)】⇒一定せず。定まりなく。

【色香(いろか)】⇒色と香り。

『花のいざない』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ケッコンの話を聞く。

クッタクのない表情が素敵だ。

オウカンをかぶると気分が変わる。

ジアイに満ちた言葉をかけられた。

カンキャクの応援が嬉しい。

解答①結婚 ②屈託 ③王冠 ④慈愛 ⑤観客
問題2『いちばん大きな窓口になるのが「花」というものなのではないかと思う。』とあるが、「いちばん大きな窓口になる」とは、どういうことか?
解答人と自然との触れ合いにおいては、「花」が最も自然を代表するものであり、人間は「花」を通して自然と関わりを持つことが多いということ。
問題3「永久の難しさ」とは、どのようなことか?
解答観客の数だけ「おもしろい」とするものが違っていたとしても、観客のすべてに「おもしろい」と思ってもらえるような舞台を目ざすという一見不可能なことにあえて挑むこと。
問題4「宇宙的時空の絶対的必然の瞬間」とは、どのような瞬間か?
解答花が咲くときの場所や時間において、まさにそうあるべきであったような瞬間。
問題5「偶然の意と、必然の意が含まれる」とあるが、どういうことか?
解答意図しないものでありながら、そうなるべくしてなったという意味が含まれるということ。

まとめ

 

今回は、『花のいざない』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。