言語は色眼鏡である 要約 意味調べ 語句 課題a 学習の手引き 教科書

『言語は色眼鏡である』は、言語について論じた評論文です。高校教科書・現代の国語にも登場します。

ただ、本文を読むとその内容や主張が分かりにくいと感じる箇所もあります。そこで今回は、『言語は色眼鏡である』のあらすじや語句の意味、テスト対策などを含め簡単に解説しました。

『言語は色眼鏡である』のあらすじ

 

本文は3つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①世界というものは一つで、誰が見ても変わらない純粋客観世界がある、という考えが存在する。だが、そういうものがあるかどうかは甚だ疑問である。我々日本語を母語とする者は、世界を日本語で見ているのであり、人間は必ず母語の色眼鏡を通して世界を見ているからだ。客観世界というものは純粋には見ることはできず、極端に言えば、人間にとって純粋客観世界はありえない。

②日本語のことを、単数、複数の別がないから論理的ではないと考える人はよくいる。だが、単数、複数の別があることは言語にとってそんなに有利なことだろうか。ある言語にはその言語の論理があり、その論理の当否を他の言語の立場から決めてはいけない。世に普遍な論理はないのである。大切なのは、論理や色眼鏡の価値に上下の区別はないということである。

③外国語を学ぶ目的は、実利だけの問題ではなく、母語と違ったもう一つの色眼鏡でこの世界を見る時、同じ客観世界は全く別に見えることを知ることである。そして、自己の幅を広げ、自分だけをよしとする態度を反省し、他の文化への寛容を学ぶことである。

『言語は色眼鏡である』の要約&本文解説

 

200字要約客観世界というのは純粋に見ることはできず、人間は必ず母語の色眼鏡を通して世界を見ている。ある言語にはその言語の論理があり、その論理の当否を他の言語の立場から決めてはいけない。世の中に普遍な論理はなく、論理や色眼鏡の価値に上下の区別もない。外国語を学ぶ目的は、母語と違った色眼鏡でこの世界を見る時、同じ客観世界が別に見えることを知ること、そして自己の幅を広げ、他の文化への寛容を学ぶことである。(196文字)

筆者はまず、「人間にとって純粋客観世界はありえない」のだと主張します。ここでの「純粋客観世界」とは、「誰が見ても変わらない世界」のことを表しています。

私たちは通常、自分が母語という色眼鏡を通して世界を見ているとは気づきません。そのため、自分の見ている世界が、純粋客観世界(ありのままの世界)であると考えがちです。

これを分かりやすく説明した具体例として、本文では「牛肉」が挙げられています。

「牛肉」というのは、英語圏ではリブ、ショート、サーロインなどのように部位ごとに様々な名称があり、当たり前のように使われていましたが、日本では江戸時代まで一般には食べられておらず、明治時代に西洋から入ってきてやっと食べられるようになったという歴史があります。

そのため、日本人にとっては細かい牛肉の部位などの言語は、世界の中に存在しないものだったと言っても過言ではありません。

一方で、日本人は、魚というのは古くから食べていましたから、ボラという魚を成長段階に応じて色んな名前で呼んでいたという背景があります。もちろん、英語圏の人にとっては魚の細かい名称というのはここまでは存在しませんでした。

このように、私たちは母語によって世界を通してみているため、人間にとっての純粋客観世界というのはありえないのだと筆者は述べています。

「牛肉」の例以外にも、英語の単数・複数の違いなどが挙げられていますが、筆者は、「各言語にはそれぞれの論理があり、論理や色眼鏡の価値に上下の区別はない」と主張しています。

したがって、外国語を学ぶ目的というのは、母語と違った色眼鏡で世界を見て、同じ客観世界が別に見えることを知り、他文化への寛容を学ぶことだと結論付けています。

『言語は色眼鏡である』の意味調べノート

 

【客観(きゃっかん)】⇒主観から独立して存在する外界の対象。「純粋客観世界」で、ここでは「誰が見ても変わらない世界」という意味。

【信仰(しんこう)】⇒特定の対象を絶対のものと信じて疑わないこと。

【甚だ(はなはだ)】⇒程度が著しいこと。たいそう。非常に。

【語彙(ごい)】⇒一つの言語の、あるいは一定の範囲についての、単語の総体。

【微細(びさい)】⇒非常に細かいさま。

【並々ならぬ(なみなみならぬ)】⇒並大抵ではない。並外れた。

【出世魚(しゅっせうお)】⇒成長するにつれて名が変わる魚。

【表裏をなす(ひょうりをなす)】⇒物事の両面を形成する。

【母語(ぼご)】⇒人が生まれて最初に習い覚えた言語。

【色眼鏡(いろめがね)】⇒偏った物の見方。先入観にとらわれた物の見方。

【とかく】⇒ある傾向が強いさま。ともすれば。ややもすると。

【論理的(ろんりてき)】⇒論理にかなっているさま。きちんと筋道を立てて考えるさま。

【捜査(そうさ)】⇒捜して調べること。

【起源(きげん)】⇒物事の起こり。始まり。

【馬蹄型磁石(ばていがたじしゃく)】⇒U字型磁石のこと。

【当否(とうひ)】⇒適切か否か。よしあし。

【普遍(ふへん)】⇒すべてのものに共通していること。例外なくすべてのものにあてはまること。

【二つの論理】⇒「三冊の本」についての、英語の論理とハンガリー語の論理。

【にわかには】⇒すぐには。急には。「にわか」とは「物事が急に起こるさま。突然。」といった意味。

【実利(じつり)】⇒実際の利益や効用。

【寛容(かんよう)】⇒心が広くて、人の言動をよく受け入れること。

『言語は色眼鏡である』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①皆の意見をハンエイさせる。

ジュンスイな考えを持つ。

ビサイにわたって説明する。

ドロボウに入られた家。

フロシキで物を包む。

フヘン的な法則を発見する。

解答①反映 ②純粋 ③微細 ④泥棒 ⑤風呂敷 ⑥普遍
問題2「しかし、そういうものがあるかどうかは甚だ疑問である。」とあるが、「そういうもの」とは何を指すか?文中から6文字で抜き出しなさい。
解答純粋客観世界
問題3筆者は「外国語を学ぶ目的」をどのように述べているか?
解答外国語で書かれた本を読んで知識を得たり、外国語を話す人と会話を楽しんだりするためだけでなく、世界平和の基礎となるように、自己の幅を広げ、自分だけをよしとする態度を反省し、他の文化への寛容を学ぶためである。
問題4

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)ある言語は、その言語社会で決まった、世界をどう捉えているかという考え方を反映している。

(イ)人間は必ず母語の色眼鏡を通して世界を見ているのであり、客観世界は純粋に見ることはできない。

(ウ)英語では、ズボンやパンツ、パンタロンなど足を一本ずつ入れてはく式の下半身に着けるものはすべて複数となる。

(エ)ある言語にはその言語の論理があるため、論理の当否を決めることができるのはその言語を話す者のみである。

解答(エ)決められるのはその言語を話す者のみである、ということではなく、その論理の当否を他の言語の立場から決めてはいけない、と筆者は述べている。

まとめ

 

以上、今回は『言語は色眼鏡である』について解説しました。言語について論じた文章は、入試にもよく出題されます。ぜひ正しく理解できるようになって頂ければと思います。