『AIは哲学できるか』は、森岡正博による評論文です。高校や中学国語の教科書にも載せられています。
ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、本作のあらすじや要約、語句の意味、テスト問題などを含め簡単に解説しました。
『AIは哲学できるか』のあらすじ
本文は大きく分けて、5つの段落から成り立っています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①人工知能(AI)の進歩は目覚ましく、学者もその例外ではない。特に、哲学の場合、考えること自体が仕事内容のすべてであるから、囲碁や将棋のような運命をたどるかもしれない。
②例えば、過去の哲学者の思考パターンを発見し、それを用いてアプリを作ることはいずれ可能になるだろう。また、過去の哲学者たちのすべてのテキストを読ませて、哲学的な思考パターンを抽出し、人間が考えそうな哲学的思考パターンの完全なリストを作成させることもできる。
③しかし、哲学的人工知能は本当に哲学の作業を行っているのかという疑問がある。そもそも哲学は、自分自身にとって切実な哲学の問いを内発的に発するところからスタートする。人工知能は、切実な哲学の問いを内発的に発することがあるのだろうか。
④もし仮にそうなのであれば、「人工知能は哲学をしている」と判断するだろうし、人工知能は正しい意味で「人間」の次元に到達したのだと判断したくなるだろう。
⑤哲学では、自律的活動と普遍的な法則や真理を発見できる思考能力が重要だと考えられてきた。だが、人工知能が人間の次元に到達するためには、それに加えて、内発的哲学能力が必要だと考えたい。人工知能が発する内発的な哲学の問いは我々の心には響かないかもしれないが、それこそが哲学に新次元を開くことになると思われる。
『AIは哲学できるか』の要約&本文解説
筆者はまず第一段落で、人工知能の進歩が目覚ましく、哲学も例外ではないと述べています。次に、第二段落でその具体例および未来予想について述べています。
第三段落では、こういった予想というのはそもそも違うのではないか?と読者に問題提起しています。”この哲学的人工知能は本当に哲学の作業を行っているのだろうか”、”人工知能は切実な哲学の問いを内発的に発することがあるのだろうか”という箇所です。
そして、第五段落で、人工知能が人間の次元に到達するには、内発的な哲学能力が必要だと述べています。全体を通して筆者が主張したいことは、この最後の第五段落に集約されていると言えます。
『AIは哲学できるか』の意味調べノート
【目覚ましい(めざましい)】⇒驚くほどすばらしい。目が覚めるほどすばらしい。
【哲学(てつがく)】⇒世界・人生などの根本原理を追求する学問。
【カント】⇒ドイツの哲学者・思想家。(1724年~1804年)
【抽出(ちゅうしゅつ)】⇒多くの中からある特定のものを抜き出すこと。
【およそ】⇒だいたい。
【振る舞い(ふるまい)】⇒言動。動作。
【根本的(こんぽんてき)】⇒物事が成り立つおおもとに関するさま。基本的であるさま。
【切実(せつじつ)】⇒身近に深くか関わっているさま。我が身に直接さし迫っているさま。
【内発的(ないはつてき)】⇒外からの働きかけによらずに、内部から自然に起こるさま。
【自律的(じりつてき)】⇒自分で立てた規範に従って動くさま。⇔「他律的」
【普遍的(ふへんてき)】⇒広く行き渡るさま。極めて多くの物事にあてはまるさま。⇔「特殊」
【真理(しんり)】⇒いつどんなときも変わることのない、正しい物事の筋道や道理。
【類(るい)】⇒同じ種類のもの。似た性質を持つもの。「人間という類」で、ここでは「人間に分類される種」という意味。
【証し(あかし)】⇒証明。証拠。
【奇妙(きみょう)】⇒珍しいこと。説明できないような不思議なこと。
『AIは哲学できるか』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ショウギが強い相手と対戦する。
②名簿から人物をチュウシュツする。
③少子高齢化はセツジツな問題である。
④生物に共通するフヘンテキな性質だ。
⑤彼は新しい次元にトウタツした。
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものはどれか?
(ア)人口知能の発達により、哲学に関しても囲碁や将棋と同じような運命をたどる可能性が出てきた。
(イ)過去の哲学者たちの思考パターンを発見するところは、人工知能の最も得意とするところである。
(ウ)哲学的人工知能に関しては、本当に哲学の作業を行っているのかという根本的な疑問はある。
(エ)人工知能が自身にとっての切実な哲学の問いを内発的に発したとしても、正しい意味で「人間」の次元に到達したとは判断できない。
まとめ
以上、今回は『AIは哲学できるか』について解説しました。ぜひテスト対策用に見直して頂ければと思います。