
『建築論ノート』は、教科書・文学国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『建築論ノート』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。
『建築論ノート』のあらすじ
本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①「物を大事に扱え。」「物を粗末にするな。」という言葉は大人が子どもたちに諭す言葉である。だが、実際はこの言葉を忘れているのは大人のほうであり、巨大な建物でさえ、壊し、捨てつづけている。トマス・ハーディの詩「まぼろしの画面」は、架空の故郷が舞台である。彼がまぼろしの故郷をつくらなければならなかったのは、二十世紀初頭のイギリスに産業革命が進捗し、都市が煤煙に覆われて自然が失われつつあったからだ。当時ロンドンにいた夏目漱石の日記にも、その煤煙のひどさが記されている。また、漱石の盟友である正岡子規の同じ時期の随想にも、東京に建屋が増えて自然が消されてゆく様子がつづられている。
②ひとつの建物が新たにつくられると、その土地だけではなく周辺の自然にも人間にも影響を及ぼす。近代に入り、それはテロリズムの色彩を強めた。新しい建物は以前の風景を忘れさせ、人間関係を変え、その心理まで変えてしまう暴力的な事態なのだ。その結果、人々はひとつの建物の死を忘れてしまう。新しい建物をつくって人は本当に勝利したのだろうか。その建物が砕け散るとき、人は建物の死を無遠慮に見捨てる。この殺人事件の犯人は誰なのか、人間を操る別の原因があるのだろうか。
『建築論ノート』の要約&本文解説
「物を大事に扱え」と言いながら巨大な建物を壊し続ける近代社会は、産業革命以降、自然や風景を失わせてきた。新しくつくられた建物は、短時間に土地や周辺の自然、人間関係や心理までを変え、以前の風景や建物の死を忘れさせる。しかし、住まいは時間を幾重にも織り込んだ記憶の地図であり、古い建物は「隠れた教師」となる存在である。それを容易に壊してはつくる時代は、文化と生活と人間関係の連続殺人の時代といえる。
(197文字)この文章で筆者がいちばん言いたいのは、「建物を簡単に壊しては建て直す現代のあり方を、私たちはもっと深く考えるべきだ」ということです。
大人は子どもに「物を大事にしなさい」と言います。しかし実際には、大人のほうが大きな建物を次々と壊し、捨てています。トマス・ハーディが詩の中で失われた故郷をえがいたのは、産業革命によって自然が失われたからです。夏目漱石や正岡子規も、都市の発展で自然が消えていく様子を書き残しました。つまり、近代化は便利さと引きかえに、風景や記憶を失わせてきたのです。
筆者は、新しい建物を建てることは単なる工事ではないと言います。それは周囲の自然や人間関係、さらには人の心まで変えてしまう力を持っています。たとえば、昔からあった商店街が大型ビルに変わると、人の集まり方や地域のつながりも変わります。建物が壊れるとき、私たちはその「死」を深く考えません。
しかし本来、住まいは時間とともに記憶を重ねた存在です。古い建物は、そこで生きた人々の歴史を伝える「隠れた教師」です。それを簡単に壊す社会は、文化や人間関係までも断ち切っているのではないか。筆者はそう読者に問いかけているのです。
『建築論ノート』の意味調べノート
【粗末にする(そまつにする)】⇒大切に扱わず、いいかげんに扱う。
【諭す(さとす)】⇒よく分かるように言い聞かせて教える。
【かたわらに】⇒そばに。近くに。
【夢見心地(ゆめみごこち)】⇒夢の中にいるような、うっとりとした気持ち。
【至福(しふく)】⇒この上なく大きな幸せ。
【てんでに】⇒それぞれに。ばらばらに。
【あらぬ方(あらぬほう)】⇒思いもよらない方向。見当違いの方向。
【初頭(しょとう)】⇒ある時代や期間のはじめ。
【慈しむ(いつくしむ)】⇒かわいがり、大切にする。
【進捗(しんちょく)】⇒物事がはかどること。進み具合。
【煤煙(ばいえん)】⇒石炭などを燃やしたときに出るすすや煙。
【出るに】⇒出るにあたって。出るときに。
【塵埃(じんあい)】⇒ちりとほこり。
【盟友(めいゆう)】⇒固い約束で結ばれた親しい友人。
【早世(そうせい)】⇒若くして世を去ること。
【色彩(しきさい)】⇒色合い。または、物事の性質や傾向。
【たちどころに】⇒すぐに。その場ですぐ。
【従事(じゅうじ)】⇒ある仕事や活動にたずさわること。
【加担(かたん)】⇒悪いことや争いなどに力を貸すこと。
【幾重にも(いくえにも)】⇒何重にも。何度も重なって。
【摩滅(まめつ)】⇒すり減ること。
【巻頭(かんとう)】⇒本や雑誌の一番初めの部分。
【乳母(うば)】⇒母親の代わりに子どもを育てる女性。
【正当化(せいとうか)】⇒自分の行いを正しいと説明して認めさせること。
『建築論ノート』のテスト対策問題
「都市にはスラムが生まれ、そこに暮らす人々は悲惨にあえいだ。」とあるが、なぜか?
産業革命により煤煙が都市全体を覆い、自然が次第に失われつつあり、貧しい人々が集まるスラムは劣悪な環境にあったから。
「建物の死」とは、どのようなことか?簡潔に答えなさい。
古い建物が壊されて、存在しなくなること。
「ハーディの詩が語りかけるように、古い建物もまた「隠れた教師」になるだろう。」とあるが、古い建物が隠れた教師になるのはなぜか?
古い建物には時間が幾重にも織りこまれていて、そこに積み重ねられたさまざまな記憶が、物事を考えるうえで行きづまった人々に、思いがけないところから新しい認識や発見を導くから。
次のうち、本文の内容を最も適切に表しているものを一つ選びなさい。
(ア)近代化によって都市は発展し、人間の生活は豊かになったが、建物は老朽化すれば壊すのが当然であり、新しい建物こそが社会の進歩を示すものである。
(イ)人間は物を大切にすべきだと教えられているにもかかわらず、近代社会では建物を次々と壊し、自然や記憶を失っている。住まいは時間を織り込んだ「記憶の地図」であり、古い建物は「隠れた教師」となりうる存在である。
(ウ)産業革命によってイギリスや日本の都市は発展したが、文学者たちはその発展を歓迎し、都市の新しい風景を積極的に評価していた。
(エ)建物の建設は周囲に多少の影響を与えるが、それは一時的なものであり、最終的には人間関係や文化には大きな変化をもたらさない。
(イ)
まとめ
今回は、『建築論ノート』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として活用していただければと思います。