『ラムネ氏のこと』の要約&本文解説、テスト対策問題

『ラムネ氏のこと』は、教科書・文学国語に掲載されている文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むとその内容や伝えたいことが分かりにくいと感じる箇所が多いです。そこで今回は、『ラムネ氏のこと』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。

目次

『ラムネ氏のこと』のあらすじ

あらすじ

小林秀雄と島木健作が三好達治の家で食事をしているうち、話はラムネに及ぶ。ラムネの玉を発明した者が、あれ一つの発明だけで往生を遂げたとすればをかしな奴だと小林が言う。すると、三好は居ずまいを正し、ラムネはラムネー氏なる人物の発明であり、フランスの辞書にも載っていると断言する。しかし、辞書を調べてもその名は見つからず、後日調べても、哲学者フェリシテ・ド・ラムネー氏が載っているだけで、ラムネの発明については書かれていなかった。

筆者はここから、我々の周囲にあるものは大概、天然自然のままにあるのではなく、誰かが今ある如く置いたものだと考える。フグ料理もまた、料理として通用するまでには暗黒時代があり、幾十百の殉教者が血に血をついだ作品であると想像される。

次に筆者は、信州の奈良原という鉱泉で暮らした経験を語る。そこでは鯉と茸ばかりが出され、茸は決して素性あるものではなかった。茸とりの名人が絶対に大丈夫だと言うが、滞在中、その名人は自分の茸にあたって往生を遂げてしまう。それでも部落の人々は翌日にはもう茸を食べていた。そこには、絢爛にして強壮な思索の持主、すなわちラムネ氏はいなかった。

最後に筆者は、切支丹渡来のころ、「愛」という言葉の翻訳に伴天連が困り果てた話を述べる。当時、日本語の愛は不義や邪しまなものと結びつき、生へ展開する言葉ではなかったため、伴天連は西洋のアモールに当たる語として「御大切」を発明した。既成の考えに抗い、色恋のざれごとを男子一生の業とした戯作者もまた、一人のラムネ氏であった。結果の大小ではなく、フグに徹し、ラムネに徹する者だけが、物のありかたを変えてきたのであり、それだけでよいのだと筆者は結論付ける。

『ラムネ氏のこと』の要約&本文解説

200字要約小林秀雄らの雑談は、ラムネの玉の発明者をめぐる与太話から、身近な品々の背後に無名の挑戦者がいるという発想へとつながる。フグ料理が成立するまでの無数の犠牲、奈良原で茸名人が毒茸に当たって亡くなった話、「愛」が邪悪なものとみなされた時代に反抗した戯作者など、文化は常に危険を引き受けた誰かの試みに支えられてきた。したがって、私のように恐れて何もしない者からは、決して名もなきラムネ氏は生まれないのだ。(198文字)

この文章の筆者が伝えたい中心的な主張は、私たちの身の回りにある「当たり前」は、必ず無名の誰かの努力や犠牲の積み重ねによって成り立っているということです。

物語は、小林秀雄らが小田原で語り合った、ラムネの玉の発明者をめぐる雑談から始まります。三好達治は、ラムネは「ラムネー氏」という人物が発明したからその名が付いたのだと主張しますが、辞書を調べてもそのような人物は存在しません。この一見くだらないやり取りが、筆者にとって重要な気づきの出発点となります。

ここで理解しておきたいのが、「ラムネ氏」とは実在の人物ではなく、文化や技術を切り開いた無名の挑戦者を象徴する存在だという点です。私たちは、ラムネの玉のような日常的に使っている物ほどその成り立ちを考えなくなります。しかし、どんな物にも最初に試した人が必ずいます。筆者はこの雑談から、「身近なものほど、誰かの危険を引き受けた行動の上に成り立っている」という事実に思い至るのです。

続いて筆者は、フグ料理を例に挙げます。フグは現在では安全に食べられていますが、そこに至るまでには、毒を恐れず挑戦し、命を落とした人々がいたはずです。そのため、フグ料理は、多くの失敗と犠牲の末に成立した文化だと言えます。さらに、奈良原の鉱泉での茸取り名人の話では、その名人自身が毒茸によって亡くなってしまいます。それでも村人は翌日から再び茸を食べ続けます。この描写から、文化の進歩は常に危険を引き受けた誰かの試みの上に成り立っていることが分かります。

さらに後半で筆者は、「愛」という言葉の意味をめぐる話を通して、価値観そのものを変えてきた存在にも目を向けます。恋や愛を不義・邪悪なものと見る考えが強かった日本社会の中で、人間の感情を正面から描こうとした戯作者たちは、当時の常識に逆らう存在でした。色恋を描くことは軽薄で滑稽に見えたかもしれませんが、人間の生を肯定しようとした点で、彼らも思想の面における「ラムネ氏」だったのです。

筆者は最後に、自分のように恐れて挑戦しない者の中には、決してラムネ氏は現れないと述べます。小さな工夫や一見取るに足らない挑戦であっても、それが文化や価値観を前に進めてきました。この文章は、私たちの日常の裏側にある無名の努力に目を向け、失敗を恐れず挑戦する姿勢の大切さを読者に伝えているのです。

※当時の時代背景について

この文章が書かれたのは、1941年、太平洋戦争の直前です。当時は社会全体が軍国主義に覆われ、国家への批判や自由な言論が強く制限されていた時代でした。筆者は、その重苦しい時代とラムネ氏の出ない暗黒の時代を重ね合わせています。一見すると軽やかな語り口のエッセイでありながら、その背景には、当時の息苦しい時代への示唆が巧みに込められていることが分かります。

『ラムネ氏のこと』の意味調べノート

【肴(さかな)】⇒酒を飲むときに添える食べ物。

【談たまたま(だんたまたま)】⇒話のついでに。偶然。

【居ずまいを正す(いずまいをただす)】⇒姿勢をきちんと整える。

【断言(だんげん)】⇒はっきりと言い切ること。

【ありあわせ】⇒その場にあるもの(こと)。

【憤然(ふんぜん)】⇒ひどくおこったさま。

【字引き(じびき)】⇒辞書のこと。

【いきまいている】⇒いきり立っている。

【絢爛(けんらん)】⇒華やかで美しいこと。

【強壮(きょうそう)】⇒体が強く丈夫なこと。

【思索(しさく)】⇒深く考えること。

【ますますもって】⇒いよいよ。

【天然自然(てんねんしぜん)】⇒人の手が加わらない自然のままの状態。

【今あるごとく】⇒今のままの状態で。

【事もなく(こともなく)】⇒平気で。問題なく。

【斯道(しどう)】⇒この道。この領域。

【殉教者(じゅんきょうしゃ)】⇒宗教や信仰のために命を失った人。

【枕頭(ちんとう)】⇒まくらもと。

【爾来(じらい)】⇒それから後。

【ゆめゆめ】⇒決して決して。「ゆめ」を強調した表現。

【訓戒(くんかい)】⇒いましめ。

【鉱泉(こうせん)】⇒鉱物質を含む温泉。鉱物質を多く含むわき水。

【密林(みつりん)】⇒草木が密生する深い森。

【長逗留(ながとうりゅう)】⇒長く滞在すること。長期間の滞在。

【終日(しゅうじつ)】⇒朝から晩まで。一日中。

【寧日ない(ねいじつない)】⇒落ち着く日がない。のんびりする日がない。

【素性ある茸(すじょうあるきのこ)】⇒はっきり名前の分かったきのこ。

【朴訥(ぼくとつ)】⇒飾り気がなく素朴なこと。

【好々爺(こうこうや)】⇒人柄が温厚で優しい老人。

【太鼓判を押す(たいこばんをおす)】⇒確実だと保証する。

【現に(げんに)】⇒実際に。

【それとなく】⇒遠回しに。さりげなく。

【いたずらに】⇒むだに。むなしく。

【来朝(らいちょう)】⇒外国人が日本へやって来ること。

【対訳本(たいやくぼん)】⇒原文と訳文を対にして訳した本。

【ほとほと】⇒すっかり。本当に。

【困却(こんきゃく)】⇒困り果てること。

【不義(ふぎ)】⇒道に外れた行い。

【不文律(ふぶんりつ)】⇒文書になっていないが守られる決まり。

【よこしま】⇒邪悪、不正。

【邪悪(じゃあく)】⇒悪く、よこしまなこと。

【けだし】⇒思うに。おそらく。

【デウス】⇒キリスト教での「神」。キリシタン用語。

【勧善懲悪(かんぜんちょうあく)】⇒善を勧め、悪を懲らす教え。

【不当(ふとう)】⇒正当でないこと。

【ざれごと】⇒ふざけてすること。

【男子一生の業(だんしいっしょうのわざ)】⇒男が一生をかけて取り組む大事業。

『ラムネ氏のこと』のテスト対策問題

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①彼はフンゼンと立ち去った。

②深夜にシサクを重ねる。

③彼は無罪だとダンゲンした。

④過去の選択をコウカイする。

⑤物語はカンゼン懲悪だ。

解答①憤然 ②思索 ③断言 ④後悔 ⑤勧善
問題2「この哲学者が、その絢爛にして強壮な思索をラムネの玉にもこめたとすれば、ラムネの玉はますますもって愛嬌のある品物と言わねばならない。」とあるが、「愛嬌」があると言われるのはなぜか?
解答もし、ラムネの玉という「チョロチョロと吹き上げられてふたになる」という素朴で庶民的な発明が、眼光鋭く、絢爛にして強壮な思索をもつ哲学者によって生み出されたのだとすれば、その意外な組み合わせがおかしみを感じさせ、どこか「愛嬌」があると思われるから。
問題3「この村には、ラムネ氏がいなかった。」とあるが、これはどういうことか?
解答この村にいた茸とりの名人は、後世に残る工夫や教えを語り継いだ「頓兵衛」のような存在ではなく、ただ素直に静かな最期を迎えただけで、何かを残す「ラムネ氏」のような人物ではなかったということ。
問題4「勧善懲悪という公式から人間が現れてくるはずがない。」とあるが、ここでの「勧善懲悪」とはどのようなことか?
解答人間の行動を、善悪のような単純な色分けによって判断すること。
問題5「太郎兵衛」と「頓兵衛」の違いを整理し、200文字以内で述べなさい。
解答太郎兵衛は、フグを食べて死んだ経験から「この怪物を食べてはならない」と子孫に禁じ、安全を優先して禁忌を残した人物である。一方、頓兵衛は、自らの死を引き受けつつも、フグの美味を後世に伝えようとし、「血をしぼれば食べられる」という具体的な知恵を遺して挑戦を促した人物である。つまり、太郎兵衛は危険を避ける立場であるのに対し、頓兵衛は犠牲を通して未来につながるものを残そうとする立場に立っている点で異なる。

まとめ

今回は、『ラムネ氏のこと』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。

この記事を書いた人

大学卒業後、国語の添削員として就職。その後、WEB運営会社を起業し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。
「保有資格」⇒漢字検定1級・英語検定準1級・簿記二級・宅建など。

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