『スキーマと記憶』は、今井むつみによる評論文です。高校教科書・論理国語にも採用されています。
ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『スキーマと記憶』のあらすじや要約、意味調べなどを簡単に解説しました。
『スキーマと記憶』のあらすじ
本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①私たちは、人の話や文章、映像など、日常で起こっている何かを理解するために、常に行間を補っている。この行間を補うために使う常識的な知識を、心理学では「スキーマ」と呼ぶ。海外の前衛的な映画の字幕や専門家向けの文章なども、スキーマがないと、表面的には理解できても何を言っているのか分からない。それは、スキーマが足りないために、書かれていないことの行間を補えないからだ。
②同じことが記憶についても言える。先生の説明やテキストの内容なども、様々なスキーマを使って行間を補うことが必要だ。結局、私たちは、物事を客観的には記憶できない。日常生活における記憶は、「客観的な出来事の記録」ではなく、知識のフィルターを通して解釈され、構築されたものなのだ。
③スキーマによって、実際には見なかったものを見たと思ってしまうなど、記憶がゆがめられることもある。人の記憶には、常にスキーマが混入する。記憶の貯蔵庫の中から情報を引き出す時、客観的な情報とスキーマを分離することはほぼ不可能なのだ。
④一枚の単純な絵の記憶でさえ、些細なことでゆがめられる。ある実験では、名前という知識が図形の記憶に影響を与えていることが分かった。また、別の実験では、記憶は最初に貯蔵庫に入るときだけでなく、思い出されるまでの間に外から入ってきた情報によっても変わることが明らかになった。記憶は、繊細で変わりやすいものなのだ。
『スキーマと記憶』の要約&本文解説
筆者はまず、私たちが物事を理解する際に「スキーマ」という知識を使い、行間を補っていることを述べています。
「スキーマ」とは、私たちが日常的に持っている常識や経験に基づく知識のことで、これを使うことで、文章や会話の中に書かれていない部分を推測したり、理解したりすることができると説明しています。
一方で、筆者は、このスキーマによって、私たちの記憶がゆがめられてしまう場合もあるということを問題視しています。
記憶というのは、単なる出来事をそのまま保存するものではなく、私たちの知識や過去の経験をもとに再構築されるものです。
また、私たちの記憶は常にスキーマに影響されており、実際に起こったことと異なる記憶が作られることもあります。
このように、私たちの記憶は客観的なものではなく、スキーマというフィルターを通して解釈される主観的なものであるため、正確さを欠く場合があります。
そのため、スキーマは私たちの認識に大きな影響を与える一方で、記憶が歪められる原因にもなりうるということを筆者は主張しているのです。
『スキーマと記憶』の意味調べノート
【事象(じしょう)】⇒現実の出来事。現象。
【前衛的(ぜんえいてき)】⇒従来の常識や伝統にとらわれず、新しいものや独創的なものを追求するさま。
【回想(かいそう)】⇒過去のことをふりかえって思いおこすこと。
【ましてや】⇒それに加えて。
【論旨(ろんし)】⇒論文や議論の主旨。
【突き詰める(つきつめる)】⇒物事を最後のところまできわめる。
【客観的(きゃっかんてき)】⇒特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま。
【主観的(しゅかんてき)】⇒自分ひとりのものの見方や感じ方によっているさま。
【半面(はんめん)】⇒一方で。
【頻繁(ひんぱん)】⇒しきりに行われるさま。
【鮮明(せんめい)】⇒あざやかではっきりしているさま。
【一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)】⇒こまかな一つ一つの動作や行動。
【つぶさに】⇒細かいところまで詳しく。詳細に。
【曖昧(あいまい)】⇒物事がはっきりしないこと。明確でないこと。
【典型的(てんけいてき)】⇒あるものの特徴がよく現れているさま。
【衝突(しょうとつ)】⇒突き当たること。ぶつかること。
【ごく】⇒数が少ない、または程度が非常に小さいことを強調する言葉。
【含意(がんい)】⇒表面に現れない意味を含みもつこと。
【繊細(せんさい)】⇒感情などがこまやかなさま。デリケート。
『スキーマと記憶』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①過去をカイソウする。
②センモン的な話をする。
③ヒンパンに事件が起こる。
④記憶がセンメイによみがえる。
⑤センサイな感覚をしている。
まとめ
今回は、『スキーマと記憶』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。