貧困は自己責任なのか 要約 意味調べノート 解説 論理国語 教科書

『貧困は自己責任なのか』は、湯浅誠による文章です。教科書・論理国語にも載せられています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『貧困は自己責任なのか』の要約やあらすじ、意味調べなどを解説しました。

『貧困は自己責任なのか』のあらすじ

 

本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①インドの経済学者、センの貧困論では、基本的な潜在能力が奪われた状態こそが貧困とされる。たとえ所得が高くても、すぐに医療にかかれる環境がないなど、その人にとって望ましい状態を得られる選択の自由がなければ、それは貧困だと言える。

②センの「潜在能力」に相当する概念を”溜め”という言葉で表す。”溜め”は、外界からの刺激を吸収するクッションの役割とそこからエネルギーを汲み出す諸力の財源となる。貧困とは、”溜め”が総合的に失われ、奪われた状態のことである。”溜め”を持たない人は、失業というトラブルに見舞われると深刻な状況に陥る。”溜め”を失うと、さまざまな可能性から排除され、選択肢を失うのだ。

③以上の事から、貧困と自己責任論は相容れないことが分かる。自己責任論とは「他の選択肢を等しく選べたはず」という前提で成り立つ議論だが、貧困とは「他の選択肢を等しく選べたはず」という前提で成り立つ議論である。基本的な潜在能力を欠如させた状態、または総合的に”溜め”を奪われた状態の貧困は、自己責任論と相容れない。

『貧困は自己責任なのか』の要約&本文解説

 

200字要約センの新しい貧困論では、所得の低さよりも基本的な潜在能力が欠如した状態が貧困とされる。その人が望ましい生活状態を獲得するための個人的・社会的な選択の自由が潜在能力であり、”溜め“である。”溜め“を失うことは、自己の可能性や選択肢を奪われることを意味する。自己責任論は、他の選択肢を等しく選べたことを前提にして成立するが、貧困は他の選択肢を等しく選べない状態なので、貧困と自己責任論は相容れない。(197文字)

筆者の主張を一言で述べるなら、「貧困は自己責任と相容れない」ということになります。

まず冒頭では、経済学者であるセンの貧困論が紹介されています。彼が述べる貧困とは、単に所得が低いというわけではなく、基本的な潜在能力が奪われた状態だと定義されています。

例えば、所得が高い人であっても、腎臓障害で透析を必要とする人は、多額の治療費がかかるため、満足な生活状態を維持できなくなる可能性があります。

逆に、所得が低い人であっても、周りに自分を助けてくれる友人や家族などがいれば、その人は十分に生活していくことは可能です。

このように、貧困かどうかを判断する際には、所得の大小ではなく、その人が望ましい生活状態を獲得するための個人的・社会的な選択の自由を意味する「潜在能力」の方が重要だと筆者は考えているのです。

この潜在能力のことを、筆者は本文中では、”溜め”と表現しています。具体的には、貯金が十分にあったり、頼れる家族や友人がいたりすることです。

”溜め”があることで、人は落ち着いて次の仕事を探すことができ、逆に、”溜め”を失うことで、人はさまざまな可能性や選択肢を奪われてしまうとも述べています。

その上で、最終的に筆者は「貧困と自己責任論は相容れない」と結論付けています。

「自己責任論」では、たとえば就職できなかった際に、「いくつかの選択肢を等しく選べたはずなので、その選択の結果は自己責任である」と考えます。

一方で、「貧困」の場合は、「職種や雇用条件を選ぶ余裕すらなく、その人は選択の自由を奪われている状態にある」と考えます。

このように、どんな状態を貧困だと考えるそもそもの前提が異なるために、両者の主張は相容れないと筆者は考えているのです。

『貧困は自己責任なのか』の意味調べノート

 

【所得(しょとく)】⇒一定期間の収入や利益。

【潜在(せんざい)】⇒表面には出ずに、内にひそんで存在すること。

【唯一(ゆいいつ)】⇒ただ一つであること。それ以外にはないこと。

【欠如(けつじょ)】⇒必要な物事が欠けていること。

【概念(がいねん)】⇒あるものについての大まかな理解やイメージ。

【考慮(こうりょ)】⇒物事を、いろいろの要素を含めてよく考えること。

【依然として(いぜんとして)】⇒元のままであるさま。前の状態と変わらずに続けるさま。

【方途(ほうと)】⇒方法や手段。

【離島(りとう)】⇒陸から遠く離れた島。

【医療(いりょう)】⇒医術や医薬で病気を治すこと。

【滞納(たいのう)】⇒納めるべき金銭を、定められた期間内に納めないこと。

【困窮(こんきゅう)】⇒ひどく貧しくて生活に苦しむこと。

【溜池(ためいけ)】⇒防火や灌漑用の水をためるための人工の池。

【日照り(ひでり)】⇒雨の降らない日が続き、水が枯れること。

【干上がる(ひあがる)】⇒水分がすっかりなくなる。

【ダメージ】⇒損害。

【緩衝材(かんしょうざい)】⇒物同士がぶつかり合う際の衝撃を緩和するための材料。

【当面の間(とうめんのあいだ)】⇒しばらくの間。さしあたって。

【求職(きゅうしょく)】⇒職を探し求めること。

【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒物事が現実から離れて、具体性に欠けるさま。

【ジャーナリズム】⇒新聞・雑誌・ラジオ・テレビなど、時事的な問題を報道する活動の総称。また、その機関。

【配偶者(はいぐうしゃ)】⇒夫婦の一方からみた他方。夫または妻を指す。

【膨大(ぼうだい)】⇒きわめて数量の多いさま。

【事欠く(ことかく)】⇒不足する。なくて不自由する。

【排除(はいじょ)】⇒取り除くこと。

【自尊心(じそんしん)】⇒自らを誇る気持ち。プライド。

【相容れない(あいいれない)】⇒互いの主張や立場などが相反していて、両立しない。

『貧困は自己責任なのか』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

センザイ能力が高い人物。

イゼンとして不景気だ。

カンショウ材の役割を果たす。

キュウショク活動を始める。

⑤不要なものをハイジョする。

解答①潜在 ②依然 ③緩衝 ④求職 ⑤排除
問題2「基本的な潜在能力」とは、何か?本文中からそのまま抜き出しなさい。
解答例「十分に栄養をとる」「衣料や住居が満たされている」という生活状態に達するための個人的・社会的自由。
問題3『”溜め”の機能は、さまざまなものに備わっている。』とあるが、ここでの「さまざまなもの」とは何か?三つ挙げなさい。
解答例お金・人間関係・精神的なもの
問題4『それがいかに自己責任論と相容れないものであるかがわかるだろう。』とあるが、「それ」とは何を指すか?
解答例基本的な潜在能力を失い、”溜め”がないという貧困状態。

まとめ

 

今回は、『貧困は自己責任なのか』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。