『ファンタジー・ワールドの誕生』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストにも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本作のあらすじや要約、テスト問題などをわかりやすく解説しました。
『ファンタジー・ワールドの誕生』のあらすじ
本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①パプア・ニューギニアの北部にある河口付近に豪華な船が乗り込もうとしていた。観光客の国籍は様々だったが、みな底抜けに表情は明るかった。なぜなら、彼らが夢にまでみた「食人族ツアー」が始まるからだ。
②このツアーの一部始終を描いたのが、デニス・オルークの作品『カンニバル・ツアーズ』である。観光客たちは、二種類の行動を常に繰り返していた。一つは、写真を撮ることである。彼らによって撮られたスナップ写真は、被写体を現地の社会的・文化的・政治的文脈から切り離した、無色透明のアイテムである。ここでは、写真機が原住民との直接的な身体的接触を回避する防具の道具になっている。
③観光客が見せるもう一つの行動が、買い物である。彼らは現地の民芸品を執拗に値切って買う。それは、西欧と現地との間にある文化的=経済的「落差」の大きさを確認しようとしているからだ。植民地支配が終わった現在でも、西欧による形を変えた支配は続いているのだ。
④「未開文化」とは、植民地主義の想像力がうみだした、ノスタルジックな憧憬の対象であった。現代社会では、観光こそが「プリミティブ」な世界を憧憬をもって見つめるための最後の拠点となっている。現代の観光は、メディアの情報によって出発前に作り上げられた「差異」の感覚を現地で確認する旅になっている。写真や民芸品は、そのための記録・証拠品なのだ。
『ファンタジー・ワールドの誕生』の要約&本文解説
筆者は、パプアニューギニアを訪れる観光客の態度には、現地人に対する植民地主義的な考えが言い当てられていると述べています。「植民地主義」というのは、先進国が後進国に対して行う支配的な考え方のことです。
なぜそう言えるのか?ということですが、それは観光客が行う「写真撮影」と「買い物」の話から説明されています。
「写真を撮る」という行為は、現地人との直接的な身体接触を避け、間接的にコミュニケーションをとろうとする言わば断絶的な考え方です。
また、「買い物」によって安い価格を要求するというのは、自分よりも下の者に不当な商取引を持ちかける支配者的な考え方です。
このように、観光客の心の中には、現地人に対する支配的な考え方(植民地主義)が見え透いているということを筆者は指摘しているのです。
その上で、筆者は、「未開文化」とは、植民地主義の想像力が生み出したノスタルジックな憧憬の対象であり、存在しないものだと結論付けています。
これはつまり、西欧人にとっての「未開文化」とはあくまで想像上のものであり、彼らの権力によって形作られたものにすぎないということです。
そのため、現代の観光は、メディアの情報によって出発前に作り上げられた「差異」の感覚を確認する旅であり、写真や民芸品はそのための記録、証拠品であるとも述べています。
『ファンタジー・ワールドの誕生』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①平野の中央をカンリュウする川。
②ミワク的な笑顔の青年。
③危険を上手くカイヒする。
④相手をギョウシする。
⑤キョテンを東京へ移す。
⑥犯行のショウコを集める。
まとめ
今回は、『ファンタジー・ワールドの誕生』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。