『目に見える制度と見えない制度』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストなどにも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『目に見える制度と見えない制度』のあらすじや要約、テスト問題などを簡単に解説しました。
『目に見える制度と見えない制度』のあらすじ
①私たちは普段、社会生活が順調に行われているときは、法律や制度をほとんど意識しない。だが、問題が起きると、それらは社会的・物理的な拘束力を持ったものになる。この変化は、自然にある物や物質的な製作物とは違った存在のしかたによるものである。
②私たち人間は、集団の中で他人との関係において生きている。この関係は、集団が大きく複雑になるにつれて、間接的なものとなり、意思の疎通を欠きやすくなる。法律や制度は、こうした集団内部での人間相互の関係を合理化し、客観化したものにほかならない。
③このように合理化され客観化された社会関係を制度的現実と名づけるなら、制度的現実は私たち人間の意志のはたらきにより、作り出されたものである。それは、人間から独立した客観的な実在、いわば第二の自然として環境を形作り、固有の法則や論理を持つようになる。法律や制度は仮構的でありながら現実的な力と意味を持つが、人の意志との結びつきが失われると、惰性的な性格が強まり表面化し、制度による人間の疎外も生じてくる。
④目に見える制度に劣らず重要なのは、歴史の内で無意識に作られた、目に見えない制度である。目に見えない制度であればあるほど、その性格と仕組みを知っておくことが必要である。無意識的な制度化、無意識による物事の秩序づけは、私たち人間が集団として無意識のうちにある目的にかなった秩序や体系を形作る活動である。
⑤私たち人間は、社会で共同生活を営む中で、意識的・無意識的に合目的的な秩序を形作り、それらを仲立ちとして互いに結びつくことにより、共同社会が形作られているのだ。
『目に見える制度と見えない制度』の要約&本文解説
本文を理解する上で、まず「目に見える制度」と「目に見えない制度」の違いを把握することが重要となります。
「目に見える制度」とは、国家、地方自治体、政党、結社、学校、会社、組合、交通機関などを構成している法律や制度のことです。
一方で、「目に見えない制度」とは、祭りや年中行事、贈与儀礼、出生儀礼、婚礼、祖先祭祀、物忌み、社会的差別、芸能や文化などを構成している習慣のことです。
私たちは、集団の中で他人との関係において生きています。この関係は、集団が大きくなり、複雑になるにつれて、間接的なものとなり、意思の疎通を欠きやすくなります。
それらを調整して統御するために、集団内部での人間相互の関係を合理化・客観化し、人間が意識的に設定したものが「目に見えない制度」です。
逆に、「目に見えない制度」は、歴史の上で無意識のうちに形成された、生活を暗黙のうちに律しているものです。本文中では、恋愛を例に具体的な説明がされています。
現代の私たちは、ドラマや恋愛小説などから無意識的に影響を受けており、お見合いによる結婚よりも自由恋愛による結婚の方が当たり前のような習慣を持っています。
しかし、歴史的に見れば、自由恋愛が成立したのは18世紀のフランスであり、それはまさに作られたもの、制度的なものでした。
文化人類学の考えでは、男女の結びつきの形は文化や時代によって違うことが明らかになっているにもかかわらず、私たちは目に見えない制度によって無意識のうちに秩序や体系を作っているのです。
このように、私たち人間は、意識的・無意識的に実に多くの制度を作り、それらを仲立ちとして結びつくことにより、共同社会を作っています。
この事こそが、本文のタイトルにもなっている「目に見える制度と見えない制度」ということになります。
『目に見える制度と見えない制度』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①物理的なコウソク力を持つ。
②物事をエンカツに進める。
③意思のソツウを図る。
④アンモクの了解となる。
⑤マジュツをかける。
まとめ
今回は、『目に見える制度と見えない制度』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。