『越境する動物がもたらす贈り物』は、教科書・論理国語で学習する評論文です。高校の定期テストなどにも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、本作のあらすじや要約、テスト問題などをわかりやすく解説しました。
『越境する動物がもたらす贈り物』のあらすじ
①人間が動物に関心を持つ理由は、単に動物が人間にとって有用だからというわけではない。動物が人間に別の存在のあり方、別の世界の可能性、生の次元をもたらしてくれるからだ。
②人間の始原の物語から現代の絵本や児童文学に至るまで、動物は必ず登場する。それはすべて自然のうちにあらかじめ決まった場所を持たない不確定な人間の生のあり方が、動物という他なる存在者を不可欠としているからだ。「人間とは何か」という問いとその答えは、人間と動物との境界線の引き方によって象られている。そのため、思想や文学、芸術では、人間と動物を区切る境界線に関わる思想的課題が描かれてきた。
③人間と動物との物語の重要な主題群の一つに、異類婚姻譚がある。例えば、民話「鶴女房」では、傷を負っていた鶴に対して、男が純粋贈与とも言える無償の行為を行う。異類の者の行いは「恩返し」といった「返済」などではなく、新たな純粋贈与であり、「贈与のリレー」というべき力がはたらいている。
④異類婚姻譚とは、二つの異なる世界をまたぎ越す高次の死の跳躍の物語であり、次元の異なる世界を貫く「贈与のリレー」の物語である。それは、境界を越えて異類の者がやってくるとても恐ろしい物語であるとともに、自己を無際限に差し出す、この上なく美しい物語である。
『越境する動物がもたらす贈り物』の要約&本文解説
本文は、内容から四つの段落に分けることができます。
まず、第一段落では、人がなぜ動物に関心を持つのかという理由が考察されています。筆者は、それは動物が人間に対して別の存在のあり方、別の世界の可能性、生の次元をもたらしてくれるからだと述べています。
次の第二段落では、人間と動物に関わる様々な物語が紹介されるとともに、第一段落で示した理由が詳しく述べられています。
筆者は、人間というのは自然の中であらかじめ決まった場所を持たない生き方をするからこそ、動物という他なる存在者を必要としているのではと考察しています。
第三段落では、第二段落で示された物語とは異なる「異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」が挙げられています。
「異類婚姻譚」とは、人と異類(動物や想像上の生物)との婚姻を説く昔話のことです。傷を負っていた鶴を男がただかわいそうと思う気持ちだけで助けた『鶴女房』という物語が有名です。
筆者は、この鶴を助けたという男の行為はまさに純粋贈与とも言える無償の行為だと述べています。
第四段落では、最終的な筆者の結論が述べられています。
筆者は、「異類婚姻譚」は「贈与のリレー」であり、自己を無際限に差し出す美しい物語であると結論付けています。
本文中には、私たちの生きている時間というのは、私たちの命そのものであり、境界を越えて行われる自己の無条件の差し出しは、一種の「供犠」であり、「死」ぬことと同じだと書かれています。
そのため、筆者は、死をも辞さない純粋な贈与への覚悟が表れる「異類婚姻譚」は、恐ろしい物語であるとともに、この上なく美しい物語だと考えているのです。
『越境する動物がもたらす贈り物』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①キョウイの目をみはる。
②現金をゾウヨする。
③アンモクの了解。
④カジョウな自信をもつ。
⑤エッキョウして亡命する。
⑥国交をダンゼツする。
⑦助走をしてチョウヤクする。
「純粋贈与」=返礼を期待しない無条件の贈与。
「贈与交換」=贈与の前から返礼が義務的・儀礼的になされることが暗黙の前提となり、制度化されている交換。
まとめ
今回は、『越境する動物がもたらす贈り物』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。