『作業ロボットの悲劇』は、松田雄馬による評論文です。教科書・現代の国語にも採用されています。
この記事では、『作業ロボットの悲劇』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。
『作業ロボットの悲劇』のあらすじ
本文は、内容から3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①人間の手で人工知能を作るのは困難がある。人工知能には二つの概念があり、一つは「強い人工知能」で、人間のように知能を持つ機械で精神を宿す。もう一つは「弱い人工知能」で、人間の知能の一部を代替する道具である。すなわち、精神を宿すということが、両者の最たる違いである。今のところ、「強い人工知能」はまだ開発されていない。
②「弱い人工知能」には、フレーム問題がある。フレーム問題とは、自分が解決しようとしている問題に関係のある事柄をなかなか選べないということだ。囲碁や将棋などのルールが決まっているプログラムや、工場の中で決まった動作をするプログラムに関しては、やろうとしてることが既に限定されているため、フレーム問題は生じない。だが、人工知能が時々刻々と変化する無限空間に対応しようとすると、このフレーム問題が無視できないものとして表れてくる。
③フレーム問題は人間においても同様に起こり得るが、人間はフレーム問題をうまく回避している。私たちは、ロボットのように、身の回りのあらゆる事象に注意を向けていては生きていけないからだ。現在、「弱い人工知能」が開発されている一方で、「強い人工知能」は開発されておらず、開発の目途すら立っていない。人工知能研究の前進のためには、人間の心の仕組みを十分に理解することが鍵となる。
『作業ロボットの悲劇』の要約&本文解説
筆者はまず、人工知能には「強い人工知能」と「弱い人工知能」の二つの種類があることを紹介しています。
「強い人工知能」とは、人間のように精神を持つ機械であり、物事を認識したり意識を持ったりするものです。「強い人工知能」に関しては、今のところまだ開発されていません
一方で、「弱い人工知能」とは、人間の知能の一部を代替する機械であり、人間に使われる道具を意味するものです。
私たちが普段からイメージする人工知能は後者の方であり、将棋や囲碁などの人間が作ったルールの上で最善の答えを導き出すものはまさに「弱い人工知能」の代表例です。
ただ、この「弱い人工知能」には「フレーム問題」と呼ばれるものがあるのだと筆者は続けます。フレーム問題とは、今、自分が解こうとしている問題に関係のある事柄を選び出すことが極めて難しいという問題です。
人間はあらゆる事象に注意を向けていては生きられないため、「フレーム問題」をうまく回避しています。しかし、人工知能に関しては未だこの「フレーム問題」を回避することはできていない状態です。
筆者は、このような課題に目を向けながらも、人工知能研究を前に進めるためには、人間の心の仕組みを十分に研究することが手掛かりになると考えているわけです。
『作業ロボットの悲劇』の意味調べノート
【時々刻々(じじこくこく)】⇒時間の経過とともに。時を追って。
【変幻自在(へんげんじざい)】⇒思うままに姿を変えて、現れ消えること。思いのままに変化するさま。
【概念(がいねん)】⇒ある事物の共通の性質をまとめた考え。物事の大まかな意味や内容。
【提唱(ていしょう)】⇒新しい意見や主張などを唱え、発表すること。
【宿す(やどす)】⇒内に含み持つ。
【代替(だいたい)】⇒それに見合う他のもので代えること。
【サポート】⇒支えること。援助すること。
【最善(さいぜん)】⇒一番よいこと。一番適切なこと。
【相互作用(そうごさよう)】⇒互いに働きかけ、影響を及ぼすこと。
【必然的(ひつぜんてき)】⇒必ずそうなるさま。
【内包(ないほう)】⇒内にかかえていること。
【創始者(そうししゃ)】⇒ある物事を最初に始めた人。
【数多(あまた)】⇒たくさん。多く。
【台車(だいしゃ)】⇒重い物を運ぶための車の付いた台。
【推論(すいろん)】⇒ある事実をもとにして、未知の事柄をおしはかり論じること。
【改良(かいりょう)】⇒悪いところを改めて良くすること。
【悲劇(ひげき)】⇒痛ましい出来事。
【想定(そうてい)】⇒ある条件や状況を仮に設定すること。
【延々(えんえん)】⇒非常に長く続くさま。
【~までもない】⇒~する必要もない。
【ありとあらゆる】⇒あると考えられるすべての。
【既に(すでに)】⇒まぎれもなく。
【遭遇(そうぐう)】⇒不意に出あうこと。※悪いことに使う言葉。
【回避(かいひ)】⇒避けること。
【事象(じしょう)】⇒実際に起こる出来事。
【身が持たない(みがもたない)】⇒体力や心身の健康を保つことができない。
【手抜き(てぬき)】⇒しなければならないことをわざと適当に省くこと。
【目途(めど)】⇒見通し。
【鍵(かぎ)】⇒問題を解決するための重要な手がかり。
『作業ロボットの悲劇』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①改革をテイショウする。
②一部をダイタイする機能。
③問題をナイホウしている計画。
④ソウシ者の一人となる。
⑤山で熊とソウグウする。
⑥危険をカイヒする。
まとめ
今回は『作業ロボットの悲劇』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。