白紙 現代の国語 要約 解説 テスト問題

『白紙』は、森田真生による文章です。教科書・現代の国語にも載せられています。

この記事では、『白紙』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。

『白紙』のあらすじ

 

本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落のあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①大文字山に登った際に、山頂で遠く彼方に光るものを見た。この事をきっかけに、僕は「見える」ということを不思議に感じた。また、花瓶に生けられた花を見て、花が「見える」ということは、どこが深いところで花と直に触れ合っていることだと思えた。僕は環境のすべてと、いつの間にか心を通わせ合って、その「通いある心」が「見える」「聞こえる」「わかる」ということを、背景で支えているような気がした。

②「見える」ということは、今の人類にはあまりに不思議で奇跡的な事態なので、かえって「当たり前」ということにされてしまう。不思議なことを当たり前のこととして、「前提」としなければ人は前に進めないところがある。人は最大の謎を「前提」とすることで不思議の先に広大な知と実用の世界を構築してきたが、いまやこの世界はあまりに壮麗で、前提である原初の不思議は、不思議であることすら自覚されなくなる。

③僕は大学に入り、解答を閉じて問題と向き合うことを知った。問題を頭に入れて、あとは白紙と対峙する。それはとても怖いことであり、心細さがある。だが、自分の身一つで、白紙と辛抱強く向き合い、幾度も失敗を繰り返しながらあきらめずに挑み続け、わからない自分が「わかった」自分に変わる瞬間は、「零」から何かが生まれる鮮烈な体験である。それは、何ものにも代え難い。

④「見える」ことや「聞こえる」ことと同様に、「わかる」ことは大きな不思議だ。その喜びに立ち会おうとするならば、人は白紙と向き合う勇気をふりしぼらないといけない。最初はどんなに心細く、惨めに思えたとしても、自分の身体と一枚の白紙から始めることにしよう。

『白紙』の要約&本文解説

 
100字要約「見える」や「聞こえる」「分かる」ことは、不思議で奇跡的な事態であり、「前提」としなければ人は前に進めない。「わかる」喜びに立ち会うには、辛抱強く試行錯誤をし、自分の身体で白紙と向き合う必要がある。(99文字)

筆者は、大文字山での体験により、遠くの光がなぜ遠くに見えるのが不思議に感じます。科学的な説明はできても、なぜ目の前ではなく、遠くに見えるのかどうしても納得できずにいました。

そして、「見える」ということは、あまりに不思議で大きな謎であることに気付きます。不思議すぎて前に進めないので、当たり前のこととして前に進むしかないと考えるようになります。

この事を本文中では、「不思議であるということを前提として、人は広大な知と実用の世界を構築してきた」と書かれています。

後半では、学生時代の筆者の体験が語られています。筆者は、高校では、受験科目の「暗記」として知識とテクニックによって問題を解いていました。ところが、大学に入り、自力で解く前に解法を知ると、それは解けない問題になってしまうことを知ります。

そのため、問題を頭に入れて、あとは白紙と対峙することが重要だと考えるようになります。そして、わかることもまた大きな不思議であるため、「わかる」という瞬間を経験するためには、辛抱強く自力で試行錯誤し、白紙と向き合う勇気を持たなければいけないとも述べています。

『白紙』の意味調べノート

 

【足もとが悪い】⇒雨や雪などの悪天候により、地面がぬかるんで歩きにくいこと。

【道程(どうてい)】⇒ある地点に行き着くまでのみちのり。

【爽快(そうかい)】⇒さわやかで気持ちがよいこと。

【格別(かくべつ)】⇒普通の場合とは程度が違っていること。

【一瞥(いちべつ)】⇒ちらっと見ること。一瞬だけ見ること。

【彼方(かなた)】⇒遠くはなれたところ。あちらのほう。

【判別(はんべつ)】⇒はっきり見分けること。明確に分かること。

【凝視(ぎょうし)】⇒目をこらして見つめること。

【パターン】⇒型。様式。

【大雑把(おおざっぱ)】⇒細部にわたらず、全体を大きくとらえるさま。

【到来(とうらい)】⇒こちらへやって来ること。

【生ける(いける)】⇒諸仏の花や枝、葉などを、形を整えて花器や瓶に挿すこと。

【直に(じかに)】⇒直接。間に何も隔たりがないさま。

【ありありと】⇒はっきりと目の前に現れるさま。

【前提(ぜんてい)】⇒ある物事が成り立つための条件。

【拡張(かくちょう)】⇒範囲・速度・機能などを発達させること。

【最奥の深秘(さいおうのじんぴ)】⇒奥深い秘密の教え。「深秘」とは「深奥(しんおう)な秘密の教え」を意味する。

【括弧(かっこ)にくくる】⇒注釈が必要な言葉として扱う。

【構築(こうちく)】⇒組み立てて築くこと。

【壮麗(そうれい)】⇒規模が大きくて美しいこと。

【原初(げんしょ)】⇒物事の起こった最初。

【エッセイ】⇒随筆。随想。

【対峙(たいじ)】⇒向かい合ってにらみ合うこと。

【さまよう】⇒あてもなく歩きまわる。

【辛抱(しんぼう)】⇒つらいことや苦しいことを我慢すること。

【幾度(いくど)】⇒何度。

【試行錯誤(しこうさくご)】⇒試みや失敗を繰り返しながら、物事を解決していく方法。

【零(ゼロ)から】⇒全然何もない状態から。

【鮮烈(せんれつ)】⇒はっきりとあざやかなさま。

【取るに足らない(とるにたらない)】⇒問題として取り上げる価値もない。ささいなことである。

【何ものにも代え難い(なにものにもかえがたい)】⇒他のどんなものにも代えることができないほど大切だ。

【惨め(みじめ)】⇒かわいそうで見るにしのびないさま。痛々しいさま。

『白紙』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①相手の顔をギョウシする。

②春がトウライする。

モウマクを確認する。

ケンビキョウを使う。

⑤敵とタイジする。

⑥試行サクゴを繰り返す。

センレツな体験をする。

解答①凝視 ②到来 ③網膜 ④顕微鏡 ⑤対峙 ⑥錯誤 ⑦鮮烈
問題2筆者が不思議に思っていることを答えなさい。
解答例遠くの山の風景が「目の前」にではなくて、ずっと向こうの「あそこに」はっきりと見えること。
問題3『最大の謎を、最奥の深秘をひとまず括弧にくくること』とあるが、これを言い換えた表現をそのまま抜き出しなさい。
解答例不思議なことを当たり前のこととして、すなわち「前提」とすること。
問題4『それはとても怖いことである。』とあるが、なぜか?
解答例解くための手がかりが何もなく、答えにたどり着くかどうかわからないから。
問題5「わかる」ことの喜びを味わうためにはどうすることが必要か?
解答例どんなに心細く、惨めに思えたとしても、自分の身体と一枚の白紙から、つまり何もない状態から辛抱強く向き合い、試行錯誤すること。

まとめ

 

以上、今回は『白紙』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。