『贅沢の条件』は、教科書・現代の国語に出てくる文章です。ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。
そこで今回は、『贅沢の条件』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。
『贅沢の条件』のあらすじ
本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①手仕事の時代が終わり、機械生産の時代が訪れたことで、「手仕事的時間」が失われた。かつては、手仕事をするゆるい時間は物語を語り、そこには「古さ」と距離的な「はるけさ」の権威があった。手仕事をする人々は、その「物語」に耳をかしながらその権威を信じ、教訓的な「知恵」を学んでいたのだ。
②ビジネス社会の到来により、物語はすたれゆき、代わって「情報」が登場した。情報は「はるけさ」を奪い、「近さ」と「親近感」を特性とする。そして、わたしたちは手仕事に照応していた「贅沢な時間」を失ったのだ。
③物語は、わたしたちの身体のどこか深いところで記憶されて、教訓的な知恵を培ってくれる。それは贅沢の条件である「退屈」な時間でもある。わたしたちがそれを手にするには、「時をとめる術」を手にするかにかかっている。
『贅沢の条件』の要約&本文解説
現代社会の私たちは、瞬時に世の中の情報を得るようなあわただしい時の流れの中で生きています。
例えば、テレビやインターネットなどのメディアは、一秒単位でわたしたちに最新の情報を与えてくれます。
しかし、かつて手仕事をしていた農家の人々、職人の人たちなどは、もっとゆったりとした時の流れを生きていました。
筆者は、そのようなゆったりとした長い時間、つまり「退屈」こそが贅沢の条件なのだと述べています。
メディアの情報は「近さ」と「親近感」を持つことから、毎日接しているとわたしたちの退屈な時間を貪り食うように贅沢の条件を餌食にします。
こうならないためには、わたしたちが「時をとめる術」を手にし、退屈な時間を持つことが重要だと筆者は考えているわけです。
『贅沢の条件』の意味調べノート
【はるけさ】⇒時間的・距離的な遠い隔たり。古語の形容詞「はるけし」を接尾語「さ」により体言化した形。「はるけし」とは「時間的に遠く離れて久しい・距離的に遠く離れている」などの意味。
【起源(きげん)】⇒始まり。
【悠久(ゆうきゅう)】⇒果てしなく長く続くこと。長く久しいこと。
【悠長(ゆうちょう)】⇒ゆったり落ち着いていて気の長いさま。
【手仕事(てしごと)】⇒機械ではなく、手先を使ってする仕事。
【密接(みっせつ)】⇒深い関係にあること。
【呼応(こおう)】⇒通ずること。
【定住(ていじゅう)】⇒一定の場所に住居を構え、そこに住みつくこと。
【交易(こうえき)】⇒互いに品物の交換や売買をすること。
【口伝え(くちづだえ)】⇒口述によって次々と伝えていくこと。
【浸透(しんとう)】⇒考え方や習慣などが、広い範囲に行きわたること。
【遍歴(へんれき)】⇒あちこちを渡り歩くこと。
【異郷(いきょう)】⇒自分の郷里ではない、よその土地。異国。
【伝承(でんしょう)】⇒伝説・信仰・風習などを受け継いで伝えること。
【すたれる】⇒衰える。使われなくなる。行われなくなる。
【対照的(たいしょうてき)】⇒二つの事物の違いが、非常に目立つさま。
【表舞台(おもてぶたい)】⇒表立って活動のできる場所。
【照応(しょうおう)】⇒二つのものが互いに関連し、対応すること。
【経験を養う】⇒経験させて、その経験を豊かにする。
【とって代わられる】⇒今まで占めていた地位を別のものに奪われる。
【貪り食う(むさぼりくう)】⇒際限なくある行為をし続ける。ここでは、メディアは様々な情報を常に私たちに提供し、退屈な時間を奪い続けてやめることがない、という意味。
【餌食(えじき)】⇒えさとして食われるもの。ここでは、「退屈」が「メディア」の餌食になっていることを意味する。
【ドロップアウト】⇒現在の自己を規定している社会や秩序からいったん離れること。
【閑暇(かんか)】⇒ひま。
【ひとえに】⇒もっぱら。
『贅沢の条件』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①好機がトウライする。
②各地をヘンレキする。
③親のケンイを示す。
④タイクツな時間を過ごす。
⑤少しのカンカを得る。
まとめ
以上、今回は『贅沢の条件』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。