まだ知らない自分に出会う 現代の国語 教科書 テスト問題対策 意味調べノート

『まだ知らない自分に出会う』は、松村圭一郎による文章です。高校教科書・現代の国語にも載せられています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『まだ知らない自分に出会う』のあらすじや要約、テスト問題などをわかりやすく解説しました。

『まだ知らない自分に出会う』のあらすじ

 

本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①学生たちに「なぜ本を読むと思うか?」と聞いてみると、「知識を増やすため」「新しい見方を獲得するため」といった答えが多い。ただ、私は本を読むのは「対話」だと考えている。つまり、何かを一方的に得るというよりも、ある種のコミュニケーションということだ。本を読むとき、私たちは遠く離れた人や、すでに亡くなった人、何千年前の人などの言葉を読むことができる。こんなにわくわくする経験はない。

②本を読む時、私たちは固定したメッセージを一方的に受け取っているわけではない。本は読み手の読み方によって、多様な意味が付け加えられていく。同じ人でも読み方が変わり、読む人の関心や姿勢によって本の中のメッセージが変わる。読書は対話に限りなく近いのだ。

③そもそも、対話は双方向に明確な意味を持つ言葉をやりとりしているわけではない。たとえ相手に意図したとおりの言葉が届いてなかったとしても、一応は対話は成り立つ。対話は不完全なコミュニケーションであり、相手を理解する試みが失敗し続けながらも、成り立っているように思えるプロセスなのだ。

④対話をしていると、メッセージの送り手と受け手との境目が、限りなく曖昧になることがある。最近の対談イベントでも、相手の発する言葉や思考が自分に乗り移ったかのように、思ってもみなかったことを自分が話すようなこともあった。本を読むことも人と言葉を交わすことも対話であり、どちらも知らない自分に出会う面白さを味わえるのである。

『まだ知らない自分に出会う』の要約&本文解説

 

200字要約本を読むことは対話であり、一種のコミュニケーションである。本を読むとき、私たちは固定したメッセージを一方的に受け取っているわけではなく、同じ人でも読む人の関心や姿勢によりメッセージが変わる。また、そもそも対話は双方向に明確な意味を持つ言葉のやりとりではなく、不完全なコミュニケーションである。本を読むことも人と言葉を交わすことも、知らない自分に出会うという対話のおもしろさを味わえる機会なのである。(199文字)

私たちは、何かを得るために本を読むと考えている人が多いです。しかし、筆者はそうではないのだと主張します。

筆者は、本というのは対話の一種であり、コミュニケーションなのだと言います。

本を読む時というのは、時間と空間を自由に移動しながら、私たち読み手は書き手の言葉を自由に受け取ることができます。例えば、日本から遠く離れたアメリカ人が書いた本や、千年前に亡くなった故人が書いた本なども読むことができます。

一見すると、自分と遠く離れた人や千年前の人が書いた本などを読むのは「対話」とは言い切れないイメージを持つかもしれません。しかし、本というのは同じ人でも読み方が変わるため、以前読んだ本を今読むと新鮮な感動を覚えることもあります。

また、対話というのはそもそも不完全なコミュニケーションであるため、本の書き手の言葉が読者に届くかどうかはそれほど問題ではないのだと筆者は主張します。そのため、読書というのは対話と限りなく近いものなのだと筆者は述べています。

最終的に筆者は、「本を読むこと」も「人と言葉を交わすこと」も対話であり、まだ知らない自分に出会うおもしろさを味わえるのである、という一文で締めくくっています。

全体を通して筆者が主張したいことは、第一段落と第四段落に集約されています。

つまり、本というのは何かの目的や手段のために読むものではなく、対話そのものであり、読書すること・対話することにより、まだ知らない自分に出会うおもしろさがある、ということです。

『まだ知らない自分に出会う』の意味調べノート

 

【対話(たいわ)】⇒向かい合って話し合うこと。二人の人が言葉を交わすこと。

【翻訳(ほんやく)】⇒ある言語で表された文章を他の言語に直すこと。

【固定(こてい)】⇒一定していて変化しないこと。

【多様(たよう)】⇒色々と異なるさま。

【付加(ふか)】⇒あるものに、さらに付け加えること。

【新鮮(しんせん)】⇒今までにない新しさが感じられるさま。

【懐が深い(ふところがふかい)】⇒包容力がある。心が広く、寛容である。

【そのつど】⇒そのたびごとに。毎度。毎回。

【交感(こうかん)】⇒心や感情が通い合うこと。

【双方向(そうほうこう)】⇒情報の伝達が一方向でなく、どちらからも発信してやりとりをすること。

【つきまとう】⇒常につき従って離れない。

【手に取るように】⇒すぐ目の前にあるように、はっきり見えたり聞こえたりするさま。

【把握(はあく)】⇒しっかりと理解すること。

【講義(こうぎ)】⇒大学の授業。

【意図(いと)】⇒何かをしようとすること。

【容易(ようい)】⇒たやすいこと。わけなくできること。

【了解(りょうかい)】⇒理解して認めること。

【多かれ少なかれ】⇒多くても少なくても。いずれにしろ。

【プロセス】⇒過程。経過。

【曖昧(あいまい)】⇒はっきりしないこと。あやふや。

【機会(きかい)】⇒何かをするのに都合のよい時機。ちょうどよい折。

【充実(じゅうじつ)】⇒内容が満ちて豊富なこと。

『まだ知らない自分に出会う』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①獲物をカクトクする。

②原文をホンヤクする。

シセイを正す。

フトコロが深い人物。

⑤情報を正確にトラえる。

カン違いをする。

⑦絶好のキカイを逃す。

解答①獲得 ②翻訳 ③姿勢 ④懐 ⑤捉 ⑥勘 ⑦機会
問題2『本は「書く」だけではなく、「読む」という行為によって、そのつど姿かたちを変える』とあるが、これはどういうことか?本文中の語句を使い答えなさい。
解答例本は、いろいろな読み手のたくさんの読み方によって多様な意味が付加されていったり、同じ人でも読む人の関心や姿勢で書かれているメッセージが変わったりするということ。
問題3「だとしたら、本の書き手に自分の言葉が届くかどうかはそれほど問題ではないのだ。」とあるが、なぜ問題ではないのか?
解答例対話は不完全なコミュニケーションでも成り立つものなので、本も同様に書き手は読み手の実態をつかめなくても、あるいは読み手は書き手の真意が分からなくても構わないため。
問題4

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)本を読むことは対話であり、何か別の目的を達成するための手段というよりも、ある種のコミュニケーションである。

(イ)本は、たとえ同じ人であってもその人独自の読み方によって、多様な意味が付加されていくものである。

(ウ)対話は、相手を理解する試みが失敗しつ続けながらも、なお成り立っているように思えてしまうプロセスである。

(エ)本を読むことも人と言葉を交わすことも対話であり、どちらも未知の自分に出会う面白さを味わえるのである。

解答(イ)本文中には、「本はいろいろな読み手のたくさんの読み方によって、多様な意味が付加されていく。同じ人でも読む人の関心や姿勢によって本に書かれてあるメッセージが変わるのだ。」とある。同じ人によって多様な意味が付加される、とは書かれていない。

まとめ

 

以上、今回は『まだ知らない自分に出会う』について解説しました。ぜひ定期テストのために見直して頂ければと思います。