『未来をつくる想像力』は、教科書・現代の国語で学ぶ評論文です。ただ、本文を読むと筆者の考えが分かりにくい箇所もあります。
そこで今回は、『未来をつくる想像力』のあらすじや要約、意味調べなどを簡単に解説しました。
『未来をつくる想像力』のあらすじ
本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①メディアや産業の発達により、人々の頭の中には大量のイメージや情報が送り込まれるようになった。この事により、人間は自分でイメージをつくる力、つまり「想像力」を失うことになった。かつてのような、文字や話でしか物事を伝えられない時代には、人間は実際の姿のことを想像するしかなかった。だが、現代のように写真や映像が大量にやりとりされるようになると、人間は自分でイメージを作り出す力を次第に使わなくなっていったのだ。
②お互いの心の中にある「世界」に想像を巡らさなくなると、社会はつながる力を失い、分裂することになる。想像力には、他人を思いやり、社会を成立させている側面もあるのだ。もし人々が誰も想像しなくなる時代が来ると、最終的にはその世界には「未来」がなくなってしまう。想像力とは、人々の「未来」を成り立たせている「心のエネルギー資源」でもあるのだ。
③では、想像力を取り戻し、育てていくにはどうすればいいのか?それは、空白の時間をつくることである。テレビやパソコンを消すなどして、情報の侵入をいったん断ってみる。意識を自分で働かせて、自分のイメージを描き出す時間と空白をつくるあげることが重要だ。そうすることで、私たちの中には想像力が生み出されるようになっていくのだ。
『未来をつくる想像力』の要約&本文解説
筆者はまず、現代の人々は大量の情報が出てきたことで、自分でイメージを作り出す力(想像力)を使わなくなっていったのだと述べています。
例えば、ネットでは多くの情報を瞬時に入手することができます。グーグルやX(旧ツイッター)などは、一つの言葉を検索するだけで、私たちに大量の情報とイメージを送ることができます。一昔前の、文字や話でしか物事を伝えられない時代には考えられなかったことです。
ところが、こういった大量生産されたイメージは、かえってイメージの貧困という事態を及ぼしているのだと筆者は続けます。
筆者は、想像力が乏しくなると、「あ、あれね」「知ってる知ってる」などのように、人が持つ単独性が失われ、「みんな」みたいな存在になってしまうと述べています。こうなると、社会はつながる力を失い、分裂してしまうのだと警告しています。
ではどうすれば想像力を育てることができるのか?についてですが、それは「空白の時間をつくること」だと述べています。例えば、テレビやパソコンを消して、入ってくる情報を遮断するようなことです。
人の心はあまりにも情報が多すぎるとイメージを処理したり作り出したりする余地がなくなってしまいます。そのため、石板に書き込まれた文字を全て消し去るように、一度情報を消してまっさらな状態に戻すことが必要ということです。
このように、自分のイメージを描き出す時間と空白を作ることで、私たちの想像力が生み出されるようになると筆者は結論付けています。全体を通して筆者が主張したい内容は、最後の第三段落に集約されていると言えます。
『未来をつくる想像力』の意味調べノート
【メディア】⇒媒体。特に、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどの媒体。
【定義(ていぎ)】⇒物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること。
【推し量る(おしはかる)】⇒推測する。推量する。
【現前(げんぜん)】⇒目の前にあること。
【知覚(ちかく)】⇒感覚器官を通して外界の事物を認識し、見分けるはたらき。視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚など。
【心像(しんぞう)】⇒過去の経験や記憶に基づき、具体的に心の中に思い浮かべたもの。イメージ。
【五官(ごかん)】⇒人間が外界の事物を感じ取る五つの感覚器官。目・耳・鼻・舌・皮膚を言う。
【営み(いとなみ)】⇒行為。行い。
【壁画(へきが)】⇒建物や洞窟内の壁・天井などに描かれた絵画。
【写実的(しゃじつてき)】⇒事実をありのままに描写したさま。
【過剰(かじょう)】⇒必要な数量や程度を越えて多いこと。多すぎること。
【貧困(ひんこん)】⇒内容に乏しいこと。乏しく欠けていること。
【事態(じたい)】⇒事柄のありさま。※よくないことに使う場合が多い。
【単独性(たんどくせい)】⇒ただ一人が持つ性質。
【資源(しげん)】⇒生産活動のもとになる物質・労働力などの総称。
【持続(じぞく)】⇒保ち続けること。
【発揮(はっき)】⇒もっている能力や特性を十分に働かせること。
【スクリーン】⇒映画・スライドなどを映して見るための白い幕。
【余地(よち)】⇒余裕。余白。ゆとり。
【侵入(しんにゅう)】⇒無理に入ってくること。
【さら】⇒新しいこと。まだ一度も使っていないこと。
『未来をつくる想像力』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①実際にケイケンする。
②ラスコーのヘキガ。
③ヒンコンな精神。
④地下シゲンの枯渇。
⑤実力をハッキする。
⑥ゼッタイに必要な考え方。
⑦泥棒が不法シンニュウする。
「産業的に大量生産されたイメージ」とあるが、このことを表した例として適当なものを次の選択肢から選びなさい。
(ア)古代人が描いたラスコーの壁画
(イ)富士山の頂上から眺めた絶景
(ウ)幼少期に親から聞いた昔話
(エ)駅に貼られた新製品のポスター
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。
(ア)現代におけるイメージ過剰の状況は、逆にイメージの貧困という事態を生み出し、社会はつながる力を失い、分裂してしまうことにもなる。
(イ)想像力とは、現前の知覚に与えられていない物事の心像(イメージ)を心に浮かべることであり、古くから人間に備わっていたものである。
(ウ)私たちの想像力は大量の情報が与えられたことで乏しくなったが、問題なのは、情報が多すぎて私たちはどれを選ぶか悩まされていることである。
(エ)想像力を取り戻して育てていくには、情報の侵入をいったん断ってみるなど、自分の心の中に空白の時間をつくってあげることが必要である。
まとめ
以上、今回は『未来をつくる想像力』について解説しました。ぜひ定期テストなどのために見直して頂ければと思います。