選べる社会の難しさ 国語 意味調べノート 要約 テスト対策 自己矛盾

『選べる社会の難しさ』は、高校教科書・現代の国語に出てくる評論です。ただ、実際に本文を読むと内容や筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。

そこで今回は、『選べる社会の難しさ』のあらすじや要約、語句の意味、テスト対策などを含め簡単に解説しました。

『選べる社会の難しさ』のあらすじ

 

本文は、6つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①コミュニケーション・メディアが社会に与える影響を考える時、「選択」がキーワードになる。携帯電話やインターネットを通じたコミュニケーションは、常に誰かを選択したり、誰かから選択されるからだ。だが、多くのことが選択可能となり、自分の好きな相手や情報しか選ばない傾向はプラスだけでなくマイナスの面も多い。

②例えば、コンピュータ検索では、自分の思いつくキーワードのみで検索するため、極めて狭い範囲の文献しか集められない。ネットショッピングも同様で、全ては「想定内」に収まってしまう。

③また、専門的な情報をもったエージェントに頼った場合、彼らの集めた情報が本人にとって信頼できて有効なものかどうかはわからない。その結果の責任を持つのは本人である。「自己責任」というのは、耐えられない人も増えてくる。

④加えて、インターネットは民主主義を危うくする可能性もある。ネットでの情報収集は、自分の興味関心によって行われ、議論や適切な判断が難しくなるからだ。

⑤現在では、多様なメディアや情報源に接触する機会が増えたため、公平性についてかつてのような厳密なルール運用は不要とする意見も強まりつつある。情報源としての専門家やエージェント、メディア・コントロール、どれも不十分なら、私たち一人一人が情報をよりよく「選ぶ」方法を身につける必要があるが、それは難しい。

⑥「選べない社会」へ再び戻ることは考えられないため、「選べること」を賞賛するだけでなく、「選ばざるをえないこと」の困難さを理解し、選択に失敗した場合のセーフティーネットを用意することが求められる。

『選べる社会の難しさ』の要約&本文解説

 

200字要約コミュニケーション・メディアの普及により、私たちは人間関係や情報など多くのことが選択可能となった。だが、自分の好きな相手や情報しか選ばない傾向は、プラスだけでなくマイナスの面も多い。情報の公平性が薄まりつつある現在、私たち全員が情報をよりよく「選ぶ」方法を身に付けるのが難しいとなれば、必要なのは「選ばざるをえないこと」の困難さを理解し、選択に失敗した場合のセーフティーネットを用意することである。(199文字)

筆者はまず、第一段落で「現在の選択可能な社会」について述べています。私たちの社会は、ケータイやネットなどの普及により、多くのことが選択可能となりました。例えば、自分と好きな人と連絡をとったり、興味のある情報のみをネットで調べたりと、人間関係・情報に置いて個人の自由度が増すようになったということです。

しかしながら、こういった多くの事が選択可能な社会にはマイナスな面も多いと筆者は続けます。そのマイナス面について述べたのが、第二段落~第四段落です。ここでは、ネットショッピングや代理人への依頼、民主主義への影響など、具体的な例を挙げることで、筆者の主張を説得力のあるものとしています。

第五段落では、「現在の情報の公平性」について述べています。現代では、多くのメディアや情報に触れる機会が増えたため、昔のような厳格な情報の公平性というのはなくなってきました。そのため、私たち全員が正しい情報を選ぶ方法を身に付けるのは難しいと筆者は述べます。

そして最後の段落で、筆者は「選択可能な社会で必要なもの」について述べています。現在のような、多くの選択ができる社会では、情報の選択に失敗した場合のセーフティーネット、つまり安全や安心を提供する仕組みを用意することが必要であると述べています。

この最後の一文は、筆者の主張でもあり読者への問題提起でもあると言えます。

『選べる社会の難しさ』の意味調べノート

 

【普及(ふきゅう)】⇒広く行き渡ること。

【メディア】⇒媒体。手段。

【まつわる】⇒関連する。

【裁量(さいりょう)】⇒その人の考えによって判断し、問題を処理すること。

【文献(ぶんけん)】⇒研究上の参考資料となる文書・書物。

【類推(るいすい)】⇒似ている点をもとにして、他を推しはかること。

【趣味趣向(しゅみしゅこう)】⇒好きなことの抽象的な傾向や方向性。

【源(みなもと)】⇒物事の起こりはじめるもと。起源。

【格差(かくさ)】⇒物事の価値などの違い。

【合理的(ごうりてき)】⇒むだなく能率的であるさま。

【収集(しゅうしゅう)】⇒研究などのために集めること。

【当否(とうひ)】⇒よしあし。

【民主主義(みんしゅしゅぎ)】⇒個人が権力を持ち、それを行使する政治形態。現在では、広く一般に、人間の自由と平等を尊重する立場を指して言う。

【規範(きはん)】⇒行動や判断の基準となる模範。手本。

【利害(りがい)】⇒利益と損害。

【敵意(てきい)】⇒敵対しようとする心。相手を敵として憎む気持ち。

【懸念(けねん)】⇒心配。

【仮想敵(かそうてき)】⇒仮に想定した敵。

【軋轢(あつれき)】⇒仲が悪くなること。

【従来(じゅうらい)】⇒以前から今まで。これまで。

【厳密(げんみつ)】⇒細かい点まで手落ちなく厳しく行うさま。

【侵害(しんがい)】⇒他人の権利や所有などをおかして、損害を与えること。

【メディアリテラシー】⇒メディアの真偽を見極める力・使いこなす力。

【自己矛盾(じこむじゅん)】⇒自分自身の中で、論理や行動が食い違い、つじつまが合わなくなること。

【回帰(かいき)】⇒ひとまわりして、もとの所に帰ること。めぐりかえること。

【賞賛(しょうさん)】⇒褒めたたえること。「称賛」とも書く。

『選べる社会の難しさ』のテスト問題対策

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①ネットがフキュウする。

②友人とレンラクをとる。

③君のサイリョウに任せる。

④先行きをケネンする。

⑤権利をシンガイしない。

⑥伝統へカイキする。

解答①普及 ②連絡 ③裁量 ④懸念 ⑤侵害 ⑥回帰
問題2「自己矛盾を起こしている」とあるが、どういうことか?本文中の語句を用いて説明しなさい。
解答「メディア・リテラシーを身につけましょう」という主張自体が、自らの主張を疑って聞きなさいと言っているようなものであること。
補足「メディア・リテラシーを身につけましょう」とは「メディアによる情報の真偽を、見極める力を身につけるべきである」という意味です。ただ、もしもこの主張がメディアによって発せられたものであれば、私たちはこの主張自体も本当なのか嘘なのか見極めるべきであるということになります。仮に嘘だと判断するなら、「メディア・リテラシーなど身につけなくていい」という正反対の論理になります。それが「自己矛盾を起こしている」(自己の論理が食い違い、つじつまが合わなくなる)ということです。
問題3

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)人間関係や情報など、多くのことが選択可能となった私たちの社会では、自分の好きな相手や情報しか選ばない傾向が強まってきている。

(イ)自分の趣味趣向に従って情報を選ぶのは、趣向の源となる生育環境や人間関係が影響するため、「育つ環境」の格差が強調され、社会の不平等感が増す可能性がある。

(ウ)個人の自由や価値観の多様性が行き過ぎると、社会としての最低限のまとまりや公共性、規範がなくなる可能性があり、社会の分裂を引き起こす可能性もある。

(エ)現在では多様なメディアや情報源に触れる機会があるため、公平性について厳密なルールを必要とする意見が放送界でも強まりつつある。

解答(エ)必要ではなく「不要」と本文中にはある。

まとめ

 

以上、今回は『選べる社会の難しさ』について解説しました。情報社会について論じた文章は、入試においても出題されやすいです。ぜひ内容を正しく理解できるようになって頂ければと思います。