『塩一トンの読書』 解説 ノート 問題 要約 意味調べ 漢字

『塩一トンの読書』は、須賀敦子による評論文です。高校教科書・現代の国語にも載せられています。

ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『塩一トンの読書』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。

『塩一トンの読書』のあらすじ

 

本文は5つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①姑は私に向かってこんなことを言った。「一人の人を理解するには、一トンの塩を一緒になめなければだめだ」と。これはつまり、たくさん使うわけでもない塩を一トンもなめつくすには非常に長い時間がかかるのと同様に、人間はなかなか理解しつくせないものだという意味だ。さらに姑は、「塩を一緒になめる」という言葉を「苦労を共にする」という意味でも使っていた。

②本、特に古典とのつきあいは人間どうしの関係に似ているかもしれない。読むたびに新鮮な驚きに出会い続けるからだ。古典には、目に見えない無数のひだが隠されていて、一トンの塩と同じで、相手を理解したいと思い続ける人間にだけ、そのひだは開かれる。

③現代社会に暮らす私たちは、本についての情報に接する機会に恵まれていて、ある本「についての」知識を、いつのまにか「実際に読んだ」経験とすり替えている。また、詩や小説の「筋」だけを知ろうとして、それが「どんなふうに」書かれているかを自分で把握する手間を省くことが多い。それでは貧弱な楽しみしか味わえないだろう。

④ずっと以前に読んだ本を読み返してみると、前に読んだ時とはすっかり印象が違い、うれしく感じることがある。それは月日が経つと、読み手自身が変わるからであり、大人になってから何かのきっかけで親しくなる友人と似ている。優れた本ほど、読み手の受容度が高く、読み手の変化に比例して新しい発見をもたらしてくれる。

⑤姑は、「素手」でしか本を読めない自分を切ながった。フォトロマンゾ(写真小説)が好きだった姑だが、スキャンダル雑誌に関しては彼女は決して読まなかった。本当のことかもしれないような話は、うそかもしれないからおもしろくないらしい。

『塩一トンの読書』の要約&本文解説

 
200字要約姑の「一人の人を理解するには、一トンの塩を一緒になめなければだめだ」という言葉は、人間を理解するのに非常に長い時間がかかることを示している。これは古典を読むことにも似ており、古典には目に見えない無数のひだが隠されていて、読み返すたびに新しいひだが開かれる。書物は「一トンの塩」をなめるように読むうちにかけがえのない友人となり、優れた本ほど、読み手の変化に応じて新しい発見をもたらしてくれるのである。(199文字)

筆者はまず、第一段落で姑のセリフを紹介しています。それは、「一人の人を理解するには、一トンの塩を一緒になめる必要がある」というものです。

塩というのは、1グラムなめるだけでも大変しょっぽいです。1トンというのは、1000キログラムですから、これをなめすつくとなると膨大な時間がかかることになります。

同様に、人間というのは気が遠くなるほど長く付き合っても、なかなか理解しつくせるものではないという意味です。

そして次の第二段落で、この事は古典を読むという行為にも共通していると述べています。古典には、目に見えない無数のひだがあり、「一トンの塩」と同じで、理解したいと思い続ける人間にだけ開かれるというものです。

ここでの「目に見えない無数のひだ」というのは、「古典に秘められている、読むたびに気付く新しい面」のことをたとえています。

第三段落では、「現代社会における読書の欠点」について、第四段落では「優れた本を読むことの重要さ」について述べています。

筆者は、優れた本というのはまるで読み手と一緒に成長したと思えるくらい、読み手の受容度が高く、あるいは広くなった分だけ新しい顔で答えてくれる、と述べています。

これはつまり、優れた本ほど、読むごとに新しい発見をもたらしてくれるという意味です。

第五段落では、「姑の読書」について述べています。姑は本物の小説は好きでしたが、スキャンダル雑誌を決して読みませんでした。なぜなら、スキャンダル雑誌というのは本当かも嘘かも分からないような話だからです。

最終的に、姑も夫も一緒に一トンの塩をなめることなく、逝ってしまったという締めくくりでこの話は終わっています。

各段落ごとに筆者の意見や挿話などがありますが、全体を通した主張としては、第四段落(優れた本を読むことの重要さ)を中心に書かれています。

『塩一トンの読書』の意味調べノート

 

【姑(しゅうとめ)】⇒夫または妻の母。

【たわいない】⇒とりとめもない。しっかりした考えがない。

【うわのそら】⇒他の事に心が奪われて、精神が集中しない状態。心が浮き立って落ち着かないさま。

【釘を刺す(くぎをさす)】⇒念を押す。注意して確かめる。

【折にふれ(おりにふれ)】⇒機会があるたびに。

【ニュアンス】⇒意味合い。

【拍子(ひょうし)】⇒ちょうどその時。

【お茶を濁す(おちゃをにごす)】⇒いいかげんにその場をごまかす。

【抜粋(ばっすい)】⇒書物や作品からすぐれた部分や必要な部分を抜き出すこと。また、そのもの。

【ないがしろにする】⇒軽んじる。

【把握(はあく)】⇒しっかりと理解すること。

【貧弱(ひんじゃく)】⇒内容がなく、必要なものを十分に備えていないこと。

【かけがえのない】⇒かわりになるものがない。このうえなく大切な。

【繕い物(つくろいもの)】⇒衣服の破れなどをつくろうこと。

【安直(あんちょく)】⇒簡単で手軽なさま。

【もてはやす】⇒多くの人が話題にする。

【むさぼる】⇒際限なく、ある行為を続ける。

【逝く(いく)】⇒死ぬ。

『塩一トンの読書』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①彼とケッコンするつもりです。

シンセンな刺身を食べる。

③転んだヒョウシに怪我をした。

ヒンジャクな内容の本。

⑤状況をハアクする。

スデで相手とたたかう。

解答①結婚 ②新鮮 ③拍子 ④貧弱 ⑤把握 ⑥素手
問題2

次の慣用句の意味を簡単に答えなさい。

たわいないことを言う。

②他言しないように釘を刺す

③冗談を言ってお茶を濁す

うわのそらで話を聞く。

折にふれて注意する

解答①とりとめもない ②注意して確かめる ③いいかげんにその場をごまかす ④他の事に心が奪われて、精神が集中しない ⑤機会があるたびに。
問題3

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)姑が言った一トンの塩を一緒になめることのたとえは、苦労を共にするという意味で塩が強調されることでもあった。

(イ)古典には無数のひだが隠されていて、読み返すたびにひだがふいに見えてくることがあり、相手を理解したいと思わなくても自然とそのひだは開かれていく。

(ウ)現代社会に暮らす私たちは、本についての情報に接する機会に恵まれていて、誰にでもあの本なら知っていると思う本が何冊かあるだろう。

(エ)古典が新しいひだを開いてくれないのは、読み手が人間的に成長していないか、あるいはいつまでも素手で本に挑もうとするからだろう。

解答(イ)本文中には、そのひだは相手と理解したいと思い続ける人間にだけ、ほんの少しずつ開かれる。とある。

まとめ

 

以上、今回は『塩一トンの読書』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。