『現代の世論操作』は、林香里による評論文です。高校教科書・現代の国語にも載せられています。
ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張などが分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『現代の世論操作』のあらすじや要約、テスト対策などを含め解説しました。
『現代の世論操作』のあらすじ
本文は大きく分けて、3つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとの要旨を簡単に紹介していきます。
①現代では、かつてのような、独裁者が聴衆の前で演説を行い、扇動的に意見操作するような世論操作ではなく、マイクロ・プロパガンダと呼ばれる手法が行われている。それは、個人のあらゆるデータを引き出して調査分析し、それをもとに政治意見を誘導する、というものである。アメリカやイギリス、ドイツなどでもこの手法が行われている。
②政治家の活動をチェックし、監視するメディアは必要である。だが、現代社会では、監視すべき権力がどこにあるのか非常に見えにくくなっている。それどころか、逆に私たちのほうが、権力に監視される立場に置かれている。
③デジタル化とグローバル化の中、権力のあり方は変化している。ますます不可視化され、抽象化され、日常に偏在するようになった「権力」に対して、ジャーナリズムは監視の手綱を緩めてはいけないというのが今日の結論である。
『現代の世論操作』の要約&本文解説
筆者は第一段落で、現代では「人々はデータによって操作されるようになった」と述べています。
かつては、独裁者が聴衆の前で演説を行うような形で人々の意見操作をするのが当たり前でした。ところが、現代ではこのような形ではなく、情報技術によって世論操作が行われるようになったということです。
次の第二段落では、現代社会は監視すべき権力がどこにあるのか分かりにくくなったと述べています。それどころか、逆に私たちが権力に監視される立場になったとも述べています。
それはつまり、個人が権力により監視される時代になったということを示唆しています。
最後の第三段落では、権力のありかたが分かりにくなった時代だからこそ、権力に対する監視を緩めてはならないと述べています。
全体を通して筆者が主張したいことは、最後の第三段落に集約されていると言えます。
『現代の世論操作』の意味調べノート
【独裁者(どくさいしゃ)】⇒絶対的な権力を持ち、政治を支配する者。
【世論(よろん)】⇒世間の人々の持っている意見。「せろん」とも読む。
【陰の立役者(かげのたてやくしゃ)】⇒物事を成功させるために、裏や見えないところでそれを支えている人。「立役者」とは、物事の中心となって重要な役割を果たす人、という意味。
【投資(とうし)】⇒利益を得る目的で、事業・不動産・証券などに資金を投下すること。
【参謀(さんぼう)】⇒重要な計画・作戦などに加わり、その実行を助ける人。
【一躍(いちやく)】⇒途中の段階を飛び越えて進むこと。いっぺんに評価が上がること。副詞的にも用いる。
【収集(しゅうしゅう)】⇒研究などのために集めること。
【糾合(きゅうごう)】⇒ある目的のもとに寄せ集め、まとめること。
【人となり(ひととなり)】⇒人柄。生来の性質。
【扇動的(せんどうてき)】⇒人々の気持ちをあおり、ある行動をとるようにしむけるさま。
【ナショナリズム】⇒国家や民族の統一・独立・繁栄を目ざす思想や運動。
【タブー】⇒禁忌(きんき)。口に出したり、してはならないこと。
【極右(きょくう)】⇒極端な右翼思想。また、その思想をもつ人。「右翼」とは、保守的または国粋的な思想、立場の一派を意味する。簡単に言えば、自国の歴史や伝統が他の国よりも優れていると信じ、守っていこうとする考え方のこと。
【躍進(やくしん)】⇒めざましい勢いで進出・発展すること。
【経緯(けいい)】⇒物事の筋道。いきさつ。
【存続(そんぞく)】⇒引き続き存在すること。
【抑圧(よくあつ)】⇒むりやりおさえつけること。
【不可視化(ふかしか)】⇒目に見えないようにすること。⇔「可視化」。ここでは、対抗意見が人々の目に触れないようにすることを意味する。
【加担(かたん)】⇒力を添えて助けること。
【ジャーナリズム】⇒新聞・テレビ・雑誌・ラジオなどにより、時事的な問題の報道・解説・批評などを行う活動の総称。また、その機関。
【監視(かんし)】⇒警戒して見張ること。
【開示(かいじ)】⇒外部に情報などを明らかに示すこと。
【術(すべ)】⇒手段。方法。手立て。
【便宜を図る(べんぎをはかる)】⇒相手の都合のいいように、特別に計らうこと。「便宜」とは「都合の良いこと・便利であること」などの意味。
【従来(じゅうらい)】⇒以前から今まで。これまで。
【夜討ち朝駆け(ようちあさがけ)】⇒新聞記者などが、予告なく深夜や早朝に取材先を訪問すること。
【リーク】⇒意図的に秘密や情報などを漏らすこと。
【蓄積(ちくせき)】⇒たまること。
【コラボレーションン】⇒共同作業。合作。
【抽象化(ちゅうしょうか)】⇒ここでは、実際の様子がはっきりと分からないようにすること、という意味。
【偏在(へんざい)】⇒広く行き渡って存在すること。
【手綱を緩める(たづなをゆるめる)】⇒定めていた規制や制御を、以前よりも緩やかにする。「手綱を締める(たずなをしめる)」で個人や組織を制御することを表し、その反対語を意味する。
『現代の世論操作』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①イチヤク有名になる。
②仲間をキュウゴウする。
③群衆をセンドウする。
④世界にショウゲキを与えた事件。
⑤パソコンに情報をチクセキさせる。
次の内、本文の内容を最も適切に表した文を選びなさい。
(ア)アメリカでは、大統領が聴衆の前で扇動的に意見を操作するような、かつてのスタイルが再び注目を浴び、人々は日常的にデータを操作されるようになった。
(イ)2016年、イギリスでEUへの残留か離脱か問う国民投票が行われた際に、ネットメディアを使った広報戦略により、以前のイギリスでは考えられないようなPRが展開された。
(ウ)現代社会では、監視すべき権力がどこにあるかが非常に見えにくくなり、逆にわたしたちのほうが、ますます権力に監視される立場に置かれるようになった。
(エ)個人情報がどんどんと蓄積された今の時代においては、監視すべきメディアを強化すると同時に、私たちの行動は見張られているという強い意識を持つことが必要である。
まとめ
以上、今回は『現代の世論操作』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。