『ぬくみ』は、高校現代文の教科書で学ぶ評論です。ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくい部分もあります。
そこで今回は、『ぬくみ』のあらすじや要約、テスト対策などを簡単に解説しました。
『ぬくみ』のあらすじ
本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①人は「つながっていたい」という想いが一方にあり、他方では「切れる」という行動がある。「つながっていたい」とは、お互いに相手を思いやる関係の切望である。ゆえに、他人から無視され「自分の存在」が誰からも望まれていないと感じるとき、人は「寂しい」と思うのだ。
②近代の都市生活は、個人を「封建的」構成要素から切り離して「自由な個人」によって構成する社会を目指した。だが、「封建的」構成要素がなくなったことにより「中間世界」が消失し、「個人」はその神経をじかに「社会」に接続するようになった。その結果、人は「自分の存在」を親密な個人的関係に求めるようになった。
③現代の大規模にシステム化された社会では、「資格・条件」が個人に求められる。それは、社会にとって個人の「要・不要」をつきつけられることでもある。現代の子どもたちは、大人からその「条件」を繰り返しつきつけられるため、自分を自分として肯定してくれるつながりを求めるようになった。子どもたちの「つながっていたい」という気持ちの裏には、こうした他者との遮断の認識が深くあることを見逃してはならない。
④「相互性」とは、自分が想われる側、認められる側であると同時に、時には自分が想う側・認める側に回らなければならないことである。それが、「ささえあい」というものだ。他人に関心を持ち、「他者への想像力」を働かせることが大切なのだ。
『ぬくみ』の要約&本文解説
わたしたちは、近代化によって選択の自由を得るようになりました。そして、昔のような身分、家業、階級といった封建的な要素がなくなったことで、今までよりも社会にじかに接するようになりました。
しかし、一方で自分が誰であるかを自ら証明しなければならなくなった個人は、地縁や血縁から切り離されて寂しさを感じるようになりました。
また、今の社会というのは大規模にシステム化された「資格」が問われる社会でもあります。そのため、条件を満たしていなければ「あなたはいらない」という不要の烙印を社会から押されることになります。
もし自分が条件を満たしていなければ、人は不安を感じ、自分を自分として肯定してくれる友達や恋人を強く求めるようになります。こうして、人は誰かと「つながっていたい」という気持ちを持つようになるのです。
このように、過去の歴史を振り返ると、なぜ現代では「つながっていたい」と思う人が多くいるかが分かるかと思います。その理由は、現代社会の仕組みの中で人は自分の存在を見いだせないこと、そして社会が求める条件に自分の存在を見いだせないことが背景にあるためです。
最終的に筆者は、「相互性」の大切さについて触れています。筆者は、「相互性」とは「自分が想われる側であるだけでなく、時には自分が想う側であること」だと述べています。
つまり、「他人に関心をもってもらおう」という考えではなく、「自分が他人に関心を持とう」という考え方が必要ということです。それが「他者への想像力」なのだと結論付けています。
『ぬくみ』の意味調べノート
【隠喩(いんゆ)】⇒「~のようだ」等の語を使わずに、直接その言葉を使って他を例える技法。「暗喩」とも言う。
【拘泥(こうでい)】⇒こだわること。必要以上に気にすること。
【思いをはせる】⇒遠く離れた相手に思いをめぐらす。
【貶す(けなす)】⇒ことさらに悪い点を取り上げて非難する。
【老幼(ろうよう)】⇒老人と幼児。
【唐突(とうとつ)】⇒出し抜けであるさま。突然。
【くびき】⇒車のながえ(牛車や馬車の前に長く出た二本の棒)の先につける横木。牛馬の首にかけて車を引かせたことから、「自由を束縛すること」を意味するが、ここでは、個人を規定する社会の制度や風習を表す。
【封建的(ほうけんてき)】⇒個人の自由や権利を認めず、人間の上下関係を重視するさま。
【理念(りねん)】⇒ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え。
【血縁(けつえん)】⇒血のつながりのある関係。
【地縁(ちえん)】⇒住む土地に基づく縁故関係。
【核家族(かくかぞく)】⇒一組の夫婦とその未婚の子どもから成る家族。
【漂流(ひょうりゅう)】⇒あてもなく、さすらい歩くこと。
【スローガン】⇒団体や運動の主義・主張を、わかりやすく言い表した語句。標語。
【緻密(ちみつ)】⇒細かいところまで注意が行き届いていて、手落ちのないさま。
【緊密(きんみつ)】⇒物事の関係が密接なありさま。
【親密(しんみつ)】⇒互いの交際の深いこと。きわめて仲のよいこと。
【あまねく】⇒すみずみまで広く行き渡るさま。「あまねく静かに浸透してきている」で、「広範囲にわたり、じわじわと社会の中に現象化してきている」という意味。
【疼き(うずき)】⇒ずきずきと痛むこと。「ひりひりとした疼き」で、「身体的な痛みではなく魂の痛み」を表している。
【ツール】⇒道具。
【烙印を押される(らくいんをおされる)】⇒消すことのできない汚名を受ける。「烙印」とは「火で焼き、物に押しつけてしるしをつける金属製の印」を表す。
【募る(つのる)】⇒ますます激しくなる。こうじる。
【恒常的に(こうじょうてきに)】⇒常日頃から。日常的に。
【鬱屈(うっくつ)】⇒気が晴れないで、ふさぎこむこと。
【渇く(かわく)】⇒心から強く欲しがる。満たされぬ気持ちがいらだたしいほど高まる。
【克服(こくふく)】⇒努力して困難にうちかつこと。
【肯定(こうてい)】⇒認めること。価値があると判断すること。
【文脈(ぶんみゃく)】⇒筋道。背景。
【相互性(そうごせい)】⇒双方が同じような働きかけをし合うこと。
【道理(どうり)】⇒物事のそうあるべき筋道。
『ぬくみ』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①情報をシャダンする。
②勝敗にコウデイする。
③トウトツな発言をする。
④彼とはシンミツな間柄だ。
⑤思いがツノる。
⑥弱点をコクフクする。
まとめ
以上、今回は『ぬくみ』について解説しました。この評論は定期テストなどにもよく出題されます。ぜひ正しい読解をして頂ければと思います。