『他者の声 実在の声』は、現代文の教科書で学ぶ評論です。ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張などが伝わりにくい箇所もあります。
そこで今回は、『他者の声 実在の声』のあらすじや要約、テスト対策などをわかりやすく解説しました。
『他者の声 実在の声』のあらすじ
本文は、大きく分けて5つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①かつて「他我問題」と「外界問題」と呼ばれる哲学上の問題があった。だが、今はないとあえて言いたい。私たちは自分の「意識」によりこの世界を認識しているが、この事を突き詰めて考えていくと、私たちが知覚しているこの世界はすべて「意識に現れた姿」となる。私は意識の内に閉じ込められ、私の意識の外にある外界と他我が完全に消え去ることになる。
②こうした「すべては私の意識である。」という考え方は、出口を持たない洞窟のような議論である。自分の意識に閉じ籠もりつつ、外界と他我について考えることは不可能なのだ。私たちはこの袋小路のような作業から抜け出し、もう一度原点に立って新しい哲学を始めなければならない。
③他我問題と外界問題を清算したつもりでも、全く別の形で新しい問題が表れてくる。それは、「他者性の問題」と「実在性の問題」である。私たちの言語はすべての意味を相手に伝えることができるのか、それとも「言語の外」とも言うべき語りえない部分を持つのか、という問題だ。実は、一つの共有された言語のもとでコミュニケーションが成立しているのは幻想であり、本当は個人によって異なる言語を使い、自分の外の言語に語りかけているのではないか。
④私たちの言語は、基本的に公共的な言語として習得される。だが、ある人の用いる言語の意味というのは、その人がどういう経験をしたかということに影響される。そのため、私の言葉の意味と他者の言葉の意味は多かれ少なかれズレを生じる。言わば、他者の言語は自分の言語の外にあると言うことができる。こうした「意味の他者性」は、「意識の他者性」とは違い、いつか理解できる予感がする。同時に実在についても、いつかは言葉で表現できそうな予感を持っている。
⑤他者の言葉を完全に理解したり、物事の存在を言葉で表現し尽くすことは今はできないかもしれない。しかし、私は私自身の手持ちの言葉を変え、私自身を変えていくだろう。そうすることで、いつかは他者の言葉や実在に出会える予感がする。
『他者の声 実在の声』の要約&本文解説
本文は、「他我問題」と「外界問題」について述べた前半と、「他者性の問題」と「実在性の問題」について述べた後半に分けられています。
まず筆者は、かつて「他我問題」と「外界問題」と呼ばれる問題があったと述べています。しかし、これらは出口を持たない洞窟のような不毛な議論であったと述べています。なぜなら、全てが自分の意識の捉えた世界だと考える以上、「他者」も「外界」も結局は消え去ることになるためです。
一方で、筆者の前に全く別の新たな問題である「他者性の問題」と「実在性の問題」が生じることになります。
「他者性の問題」とは、自分とは異なる経験をしてきた他者の言葉をどうすれば完全に理解できるのか?という問題、そして「実在性の問題」とは、物事の存在の全てを言葉で表現し尽くすにはどうすればいいのか?という問題です。
これはつまり、「言語の内と外」についての問題なのだと筆者は続けます。
筆者は、私たちが用いる言語の意味は、その人が人生経験から影響を受けている以上、実は一人一人異なっているのだと主張します。言い換えれば、他者の言語は自分の言語の外側にあるということです。
こうした「意味の他者性」そして「実在性の問題」は、意識の「他我問題」や「外界問題」と異なり、いつかは理解することも、表現することもできそうな予感を伴う問題だと筆者は述べています。
全体を通して筆者が主張したいことは、後半の第四段落と第五段落に集約されていると言えます。
『他者の声 実在の声』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①無理をショウチで頼む。
②テツガク的な話をする。
③問題をカカえる。
④コンナンな道のりを歩む。
⑤過去をセイサンする。
⑥テンケイ的な例を挙げる。
⑦相手の要求をコバむ。
まとめ
以上、今回は『他者の声 実在の声』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策として頂ければと思います。なお、本文の重要語句については以下の記事でまとめています。