「工程」と「行程」は、どちらも仕事において使われている言葉です。主に、「工程管理」「行程表」などのように用います。
製造業などに勤めている方は、よく見る言葉かと思います。ただ、この二つの使い分けに迷うという人も多いです。
そこで今回は、「工程」と「行程」の違いについて詳しく解説しました。
工程の意味・読み方
まず、「工程」の意味を調べると次のように書かれています。
【工程(こうてい)】
⇒仕事や作業を進めていく順序・段階。また、その進みぐあい。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「工程」とは「仕事や作業を進めていく順序・段階」を表します。簡単に言うと、「仕事や作業の順番」ということです。
主な使い方は、以下の通りです。
仕事の工程表を管理する。
この場合の「工程表」は、モノの製造や建物の工事などに対して使われます。
例えば、パン工場などでは以下のように大まかな順番があります。
- 12時までに小麦粉を準備する。
- 14時からパンを焼き始める
- 16時にはパンを完成させる
同様に、建物の工事の場合も順番が決められています。
- 2月までに基礎工事を行う。
- 4月までに建物を上棟する。
- 6月までに建物の竣工をする。
このような、仕事を進めていく順番や段階のことを「工程」と言うわけです。一言で、「仕事の流れ」と覚えてもよいでしょう。
行程の意味・読み方
続いて、「行程」の意味です。
【行程(こうてい)】
①目的地へ行くまでの距離。道のり。
②(比喩的に)ある目標に達するまでの過程。里程。道程。
③旅行などの日程。
④ピストンなどの往復する距離。ストローク。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「行程」には4つの意味がありますが、一般的に使われるのは①~③です。④は自動車のエンジンなどに使う専門用語なため、覚えなくて構いません。
それぞれの意味を解説すると、①は「距離や道のり」という意味です。
- 約10キロの行程。
- 歩いて1時間かかる行程。
- 迷いやすい複雑な行程。
この場合はどちらかと言うと、「道のり」よりも「距離」の意味で使われることが多いです。
そして②は「過程・プロセス」という意味です。
これは「工程」の意味と似ていますが、重要なのは「比喩的」という点です。「比喩(ひゆ)」とは「何かを他の何かに置きかえて表現すること」を言います。
例えば、「人生はドラマだ。」「太陽のように明るい人だ」のような文です。(※人生をドラマに、太陽を人に置き換えた表現)
そして、③は「(旅行などの)日程」という意味です。
- 旅行の行程を組む。
- 旅行の行程をキャンセルする。
この場合はただの日程ではなく、旅行のように「どこかに外出する日程」という点がポイントです。
工程と行程の違い
ここまでの内容を整理すると、
「工程」=仕事や作業を進めていく順序・段階。
「行程」=距離や道のり。日程。過程・プロセス。
ということでした。
両者の使い分けを簡単に言うと、
【工程】は「仕事の順番」に使い、【行程】は「距離」や「旅行の日程」に使う。
となります。
つまり、「工程」の方は仕事に対して使い、逆に「行程」の方は原則として仕事に対しては使わないということです。
ただし、「行程」には「過程・プロセス」という意味もあります。この意味の場合は比喩的に使えるのが特徴でした。
したがって、本来は仕事に使う言葉でなくても仕事に置き換えて使うこともできるのです。
典型的な例が「ロードマップ(行程表)」という言葉です。「ロードマップ」とは「企業が将来目指していく過程を比喩的にまとめたもの」です。
会社がこれから進む道を、人生のように例えることにより将来の発展を目指していきます。
元々、日本にはない言葉でしたが外来語の翻訳として一般に使われるようになりました。そのため、現在では「ロードマップ」=「行程表」と訳されているのです。
このように、「行程」の方は「過程・プロセス」という意味の場合、比喩的に使われるのがポイントとなります。
工程表と行程表の違い
以上の事から考えますと、後ろに「表」が付くとそれぞれ次のようになります。
「工程表」=製造や工事の順番・流れなどを示したもの。
「行程表」=企業が将来目指す過程を、比喩的にまとめたもの。
「工程表」は「製造業における作業スケジュール」のようなものです。
スケジュールなので、あらかじめゴールが決められています。そして、その決められたゴールに対してルール通り・マニュアル通りに進めていくというイメージです。
一方で、「行程表」の方は製造業の流れなどではなく、もっと広い分野の未来図を表したものです。そして、マニュアル通りに進めるのではなく、自分達独自の考えで「行程」を設定します。
例えば、会社の5年後の未来をまとめるとしましょう。
- 株式上場をし、会社の規模を大きくするまでの過程。
- 新しい事業を始めて、利益を倍にするまでの過程。
- 社員の数や社屋の数を今の2倍に増やすまでの過程。
こういった過程を比喩的にまとめたものが「行程表」なのです。
どちらも「先の予定を表したもの」という意味では共通しています。しかし、両者は作業の中身や進め方に関して明確な違いがあるわけです。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきます。
【工程の使い方】
- 分譲住宅の工程表を現場監督に配った。
- 工程表を見てから、実際の作業に取りかかる。
- 商品の製造工程を、管理する仕事を任された。
- 今回の不祥事は、工程管理にミスがあったため起こった。
- 実際の現場に足を運び、作業の工程を学ぶことにする。
【行程の使い方】
- 夕方には、約10キロの行程を歩き終えていた。
- 夏休みなので、ハワイ旅行の行程を組むことにした。
- 西洋人は、近代化の行程で哲学や学問を研究してきた。
- 彼が歩んできた行程は、いばらのように苦しいものだった。
- 会社が進むべき道を、行程表にまとめて発表する。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「工程」=仕事や作業を進めていく順序・段階。進み具合。
「行程」=距離や道のり。過程・プロセス。日程。
「工程表」=製造や工事の順番・流れを示したもの。(マニュアル通り進める。)
「行程表」=企業が将来目指す過程を、比喩的にまとめたもの。(独自に進める。)
「工程」は「仕事や作業の順番」に使い、「行程」は「距離」や「過程」「旅行の日程」などに使います。ポイントは、「行程」は「過程・プロセス」という比喩の意味でも使える点です。この意味の場合は両者を混同しやすいので注意しましょう。