「士気が下がる」という言い方は、会社などの組織内においてよく用いられています。
この「士気が下がる」ですが、具体的にどのような状況のことを指すのでしょうか?似たような表現である「モチベーションが下がる」との違いも気になるところです。
本記事では、「士気が下がる」の意味や使い方、類義語、言い換え表現などを詳しく解説しました。
士気が下がるの意味・読み方
まず読み方ですが、「士気が下がる」は「しきがさがる」と読みます。
意味は、「兵士が戦いに挑む時の熱意が下がること」もしくは「人々が団結して物事に挑む時の意気込みや熱意が薄れること」です。
どちらの意味でも使うことができますが、一般的には後者の意味として使うことが多いです。
例えば、あなたが働いている会社が過去最高の利益を叩き出したとします。社員たちも今まで頑張ったかいがあったと皆喜んでいました。
ところが、一生懸命頑張ったにも関わらず、給与は今までと変わらず、ボーナスも全くもらえませんでした。このような会社の行動は、社員の仕事に対する意気込みや熱意を下げてしまうので、「社員の士気が下がること」だと言えます。
あるいは、給与などの金銭面でなくても構いません。職場の上司で、自分はほとんど仕事をせずに部下に仕事を丸投げするような人がいたとします。
さらに、部下への接し方も非常に高圧的で常に文句ばかりを言うようなタイプでした。部下からすると、「この人の元で働きたくない」「この人のために頑張りたくない」と思わせてしまうような上司です。
このような上司の行動も「士気が下がる」と言うことができます。
つまり、「士気が下がる」とは「人々の熱意が薄れ、組織の求心力が失われてしまう状態」を表す言葉ということです。
士気が下がるの語源・由来
「士気が下がる」の「士気」は、元々「戦いに向かう時の兵士の心理状態」を指していました。
「士」という字は「戦士」「武士」などの熟語があるように、「戦う兵士」を表すものです。そして、「気」という字は「気分」「気合」などの熟語があるように、「人の気持ち」を表すものです。
この事から、「士気」は「兵士の心の持ちよう」を表す言葉として使われていたのです。
昔から、戦いで勝つためには兵士の数や攻撃力などの物質的な要素だけではなく、兵士の気分の状態、団結度合いなど心理的な要素が重要であると言われてきました。
例えば、どんなに自軍の戦力が整っていたとしても、体調が悪い兵士が多ければ全体としての心理は弱気になりがちです。逆に、リーダーを含め全員が好調で負けなしの状態であれば、全体としての心理も強気になります。
つまり、戦闘においては良くも悪くも兵士の心理状態が大きく影響するということです。そのため、「士気が下がる」「士気が上がる」などの言い方が多用されるようになったのです。
現在では軍事面での使用から派生し、会社などの組織や団体における人々の意気込みに対しても使われるようになっています。
士気が下がるの類義語
続いて、「士気が下がる」の類義語を紹介します。
- やる気が下がる
- やる気が失われる
- 意欲が下がる
- 気分が萎える
- 気力が薄れる
- 活気がなくなる
- 熱気がしぼむ
- 水を差される
- 求心力がなくなる
- テンションが下がる
- モチベーションが下がる
「士気が下がる」は、様々な表現で言い換えることが可能です。
いずれの言葉も「物事を行おうとする気持ちが薄れる」という意味では共通しています。ただ、全く同じ意味の言葉(同義語)というのはありません。
「士気が下がる」は集団全体に対して使う言葉であり、個人に対して使う言葉ではありません。
一方で、「やる気が下がる」「テンションが下がる」などは基本的に集団ではなく個人に対して使う表現です。この点が「士気が下がる」との違いだと言えます。
また、よく使われる表現の「モチベーションが下がる」は、「物事を行うための動機や意欲が薄れる」という意味です。
「士気が下がる」と似たような意味ですが、「士気が下がる」には「動機」という意味までは含まれません。また、「モチベーション」は集団に対しても使うこともできますが、基本は個人に対して使うという点に違いがあります。
士気が下がるの対義語
逆に、「士気が下がる」の対義語は次の通りです。
- 士気が上がる
- やる気が上がる
- やる気が出る
- 意欲が上がる
- 気分が上がる
- 気合が入る
- 活気が出てくる
- 闘志があふれ出る
- 団結心が高まる
- テンションが上がる
- モチベーションが上がる
「対義語」の場合は、「下がる」を「上がる」に代えたものが多いです。気分が高まってきたり、団結心が強くなったりする言葉が反対語となります。いずれも良い意味として使われる表現です。
士気が下がるの英語訳
「士気が下がる」は、英語だと次のように言います。
- 「demoralize」(士気をくじく)」
- 「demoralization(士気喪失)」
- 「weaken(someone’s)morale」(士気を下げる)
「demoralize」は「やる気をなくす・意欲を低下させる」などの意味を表す動詞です。この「demoralize」を名詞化した単語が「demoralization」です。「demoralization」は、「やる気をなくすこと・気力をくじくこと」という意味があります。
最後の「morale」は「士気」や「意欲」という意味です。「morale」に「weaken(~を弱くする)」を付け足すことで、「士気を下げる」と訳すことができます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
He is a boss who demoralizes his subordinates.(彼は部下の士気を下げる上司だ。)
The match was lost due to the demoralization of the team.(チームの士気が下がったことにより、試合は負けた。)
Don’t weaken their morale.(彼らの意欲を削ぐようなことはやめなさい。)
士気が下がるの使い方・例文
最後に、「士気が下がる」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 序盤で大量失点される展開となったが、選手たちは士気が下がることなく戦い抜いた。
- まさか初日に遅刻して来るなんて。チーム全体の士気が下がるようなことはやめてくれ。
- 上司のさりげない一言により、私を含め同僚たちの士気が下がるのを強く感じた。
- 社長の「ボーナスは今年もなし」という発言に、従業員たちの士気は下がってしまった。
- 来年から資格手当を支給することになったが、これは社員の士気が下がるのを防ぐ目的です。
- A社は実力に関係なく、年齢が上の者が優遇されるらしい。若手社員の士気が下がらないか心配だ。
「士気が下がる」は、例文のようにスポーツやビジネスなどに対して使われることが多い表現です。
スポーツやビジネスで成功するためには、どちらも団結力及び統率力が要求されます。一人一人の意欲によって、全体の結果が左右されるといっても過言ではありません。
しかしながら、実際にはお金などの待遇問題、人間関係の不具合など様々な問題が生じてきます。このような問題が生じた時に、「士気が下がる」を使うということです。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「士気が下がる」=人々が団結して物事に挑む時の意気込みや熱意が薄れること。
「語源・由来」=戦いに向かう兵士の心理状態が下がることから。
「類義語」=「やる気が下がる・意欲が下がる・気力が薄れる・テンションが下がる・モチベーションが下がる」など。
「対義語」=「やる気が上がる・意欲が上がる・気合が入る・テンションが上がる・モチベーションが上がる」など。
「英語訳」=「demoralize」「demoralization」「weaken(someone’s)morale」
集団の士気が下がるのは、好ましいことではありません。企業で言えば、社員の無気力、意識の低下など生産性が著しく低下してしまうという弊害があります。できれば周囲の士気を上げることを日々考え、そして実際に行っていくのが理想だと言えます。