
『記号論と生のリアリティ』は、教科書・文学国語で学習する文章です。そのため、高校の定期テストの問題にも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『記号論と生のリアリティ』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。
『記号論と生のリアリティ』のあらすじ
本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①記号とは何か。たとえば、「か」という文字は記号である。ただ、文字や言葉だけが記号ではない。あなたが目にするもの、耳にするもののすべて、あなたが考えたり想像したりするもののすべてが記号である。要するに、あなたにとって<意味>をもつすべてのものが記号なのだ。
②人間は、「事物そのもの」を見つめることができないので、すべての事象に<意味>を与えて記号化する。そして、そのような多種多様な記号のシステムからなる世界に住んでいる。ソシュールは第一に、人間は「意味をになったもの」、すなわち記号しか認識できないことを明らかにした。第二に、記号はそれ自身のなかに意味をもっているのではなく、それをとりまく他の記号たちとの<関係ネットワーク>、すなわちシステムの中でしか意味をもちえないことを明らかにした。つまり、記号とは実体ではなく、関係的・相対的な存在であるということであった。
③記号が記号でなくなり、なまの手ざわりをもち始めることがある。「か」という文字をじっと凝視したり、大量にある「か」という文字を見ていると、なにか気味の悪い線の踊り、幽霊の大群のようなものとして立ち現れてくる。自分の顔を鏡でじっと見つめていたとしても、それが人間の顔であるのかどうかさえ、わからなくなってくる。
④記号というものは、もともと確固たるものとして必然的に存在しているわけではない。ふとしたはずみに、われわれは記号を記号として認識する日常の習慣を喪失して、うす気味わるい<無意味>の世界の露呈に遭遇することがある。つまり、記号とは不変不動のものではなく、生まれたり壊れたりするものなのだ。現代の先鋭的な記号学者たちは、記号のシステムがあらかじめ存在しているという事実の自明性を疑い、記号と意味の生成・解体のプロセスを解明しようとしているのである。
『記号論と生のリアリティ』の要約&本文解説
人間は世界を事物そのものとしてではなく、意味を与えられた「記号」として認識している。また、記号の意味は単独で決まるのではなく、他の記号との関係の中で成り立つ。しかし、その記号は絶対的なものではなく、凝視をきっかけに意味を失い、無意味の世界が露呈することがある。このように、記号は生まれたり壊れたりする不安定な存在であり、現代の記号学者たちはその生成と解体の過程を解明しようとしているのである。 (199文字)
筆者の主張の要点
人間は世界を「記号」を通してしか理解できないが、その記号は絶対的なものではなく、簡単に崩れ、生のリアリティ(なまの現実)が露出する瞬間がある。そこに記号の不安定さと、人間の認識の危うさがある。これが、この文章で筆者が言いたい核心です。
① 世界は「記号」でできている
筆者はまず、「記号」とは何かを説明しています。記号とは、文字や言葉だけでなく、音、色、形、イメージ、考え、想像など、意味をもって認識されるものすべてだと述べています。
つまり、私たちは「現実そのもの」を直接見ているのではなく、意味づけされたもの=記号として世界を見ているという考えです。
② 人間は「物そのもの」を見られない
次に筆者は、言語学者ソシュールの考えを紹介します。人間は、事物そのもの(純粋な現実)をそのまま認識することはできません。必ず「意味」を与え、記号として理解しています。
さらに重要なのは、記号の意味は、それ単体で決まるのではなく、他の記号との関係の中で決まるという点です。
たとえば、「か」という文字の意味は、「あ」や「さ」など他の文字との違いがあるからこそ成り立っています。また、「犬」という言葉の意味は、「猫」や「鳥」との違いがあるからこそ成り立つものです。
このことから筆者は、記号とは固定した実体ではなく、関係によって成り立つ不安定な存在だと示しています。
③ 記号が壊れる瞬間がある
しかし筆者は、ここで日常の感覚とは違う体験を示します。同じ文字をじっと見つめ続けたり、自分の顔を鏡で凝視し続けたりすると、それが何なのか分からなくなり、気味の悪さを感じることがあります。
これは、記号として意味をもっていたものが、意味を失い、「ただの形」や「ただの物」に見えてくる状態です。このとき、私たちは普段隠されている「生のリアリティ」に触れていると筆者は考えます。
④ 記号は壊れ、生まれ直す
筆者が最後に強調するのは、記号は最初から確かなものとして存在しているわけではないという点です。私たちは日常生活の中で、無意識のうちに「意味がある世界」に慣れていますが、その習慣が崩れると、無意味で不安な世界が顔を出します。
つまり、
- 記号は絶対ではない
- 記号は生まれたり、壊れたりする
- 意味の世界は人間が作り続けているもの
この事実を明らかにしようとするのが、現代の記号論だと筆者は述べています。
筆者の主張まとめ
私たちは世界を意味のある「記号」として見ているが、その意味は不安定で、崩れたときに初めて「生の現実」の不気味さに気づく。これが筆者の主張です。
『記号論と生のリアリティ』の意味調べノート
【体系(たいけい)】⇒同じ種類のものをまとまりとして整理したもの。
【システム】⇒体系。要素が互いに関係しながら動くしくみ。
【ブランド・マーク】⇒商標。商品や会社を表す印・記号。
【根底(こんてい)】⇒物事のいちばん深い土台の部分。
【強靭さ(きょうじんさ)】⇒強くしなやかで、壊れにくい性質。
【事物(じぶつ)】⇒世の中のあらゆる物事。
【還元(かんげん)】⇒ある状態になったものを、逆の経過によって元に戻すこと。
【記号学(きごうがく)】⇒記号の働きや意味を研究する学問。
【創設(そうせつ)】⇒初めて設けること。
【構築(こうちく)】⇒基礎からしっかりと作り上げること。
【凝視(ぎょうし)】⇒じっと見つめること。
【定義(ていぎ)】⇒言葉や概念の意味をはっきり決めること。
【曖昧(あいまい)】⇒はっきりせず、どちらとも言えない状態。
【いみじくも】⇒うまい具合に。ちょうどぴったり。
【付与(ふよ)】⇒与えて加えること。
【確固たるもの(かっこたるもの)】⇒しっかりして揺るがないもの。
【必然的に(ひつぜんてきに)】⇒当然そうなると考えられるように。
【露呈(ろてい)】⇒隠れていたことが表に現れること。
【遭遇(そうぐう)】⇒思いがけず出会うこと。
【先鋭(せんえい)】⇒先進的で、古い体制を鋭く批判すること。急進的なこと。
【自明性(じめいせい)】⇒証明しなくても当然のこととして受け入れられている性質。
【生成(せいせい)】⇒生まれてできること。
【解体(かいたい)】⇒壊して分けること。
『記号論と生のリアリティ』のテスト対策問題
次の仮名部分を漢字に直しなさい。
①チームにチツジョが生まれた。
②重要なカショを確認する。
③壁にキレツが走った。
④本音をトロした夜。
⑤エイリな刃に注意する。
①秩序 ②箇所 ③亀裂 ④吐露 ⑤鋭利
「こうした生のリアリティ」とは、どのようなことか。
人間はすべての事物に<意味>を与え、記号化させて生きているので、その記号のシステムの中でしか安心して生きていけないという、人間の生の現実性のこと。
「彼が明らかにしたこと」とは何か。本文中から30文字で抜き出しなさい。
記号とは、実体ではなく、関係的・相対的な存在であるということ
「あなたの顔だってそうだ。」とあるが、ここでの「そう」とは何を指すか。
記号であることをやめて、「物そのもの」とでも言いたくなるような、なまの手ざわりをもち始めてしまうこと。
「じっと凝視していると、それが人間の顔であるのかどうかさえ、わからなくなってくるはずだ。」とあるが、なぜそう言えるのか。
他人の顔は明確な意味づけができるが、自分自身の顔ははっきりと定義することができないので、じっと凝視していると、<記号>であることを停止し、顔であるのかさえ曖昧になってくるから。
次の内、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。
(ア)記号は文字だけであり、人間は文字以外の情報を意味として理解することはできない。
(イ)記号は決して変わらず、いつでも同じ意味を持ち、安定して存在している。
(ウ)記号は意味づけと関係性の中で成立し、生成や消滅も起こりうる。
(エ)記号学は記号の数を増やすことだけを目的としている。
(ウ)
まとめ
今回は、『記号論と生のリアリティ』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。