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提示 呈示 違い 使い分け 意味

「ていじ」を漢字で書く場合、「提示」と「呈示」の二つがあります。

「免許証を提示する」「カードを呈示する」

ただ、両者をどのように使い分ければいいのかという問題があります。そこで本記事では、「提示」と「呈示」の違いについて詳しく解説しました。

提示の意味

 

まずは、「提示」の意味からです。

【提示(ていじ)】

その場に持ち出して、人にわからせること。

出典:三省堂 大辞林

提示」とは「持ち出して、相手に分からせること」を意味します。

この場合の「持ち出す」とは、具体的な物から抽象的な物まで広く含まれると考えて下さい。例えば、以下のような使い方です。

  • 免許証を提示する
  • 根拠を提示する
  • データを提示する

いずれも形のある具体的な物から、形のない抽象的なものまで幅広く使われていることが分かるでしょう。このように、何らかのものを相手に見せて、理解してもらうような場合に「提示」を使うわけです。

呈示の意味

 

続いて、「呈示」の意味です。

【呈示(ていじ)】

相手に差し出して見せること。

出典:三省堂 大辞林

呈示」とは「差し出して、相手に見せること」を意味します。

「差し出す」とは「相手にパッと出すようなイメージ」だと考えてください。つまり、「確認のために相手に見せる」ということです。

こちらも例文を紹介しておきます。

  • カードを呈示する
  • 身分証を呈示する
  • パスポートを呈示する

「呈示」は、目に見えるような具体的な物を出す場合に使うのが特徴です。逆に言えば、データや根拠など目に見えないような対象には使わない言葉ということです。

提示と呈示の違い・使い分け

提示 呈示 違い 使い分け

 

ここまでの内容を整理すると、

提示」=持ち出して、相手に分からせること。

呈示」=差し出して、相手に見せること。

ということでした。

両者の違いを簡単に言うと、

提示」は「呈示」を含んだ言葉。

となります。

イメージとしては、次の図のように「提示」という大きな項目の中に「呈示」が入っていると考えればよいでしょう。

提示 呈示  図 分かりやすい

「提示」の方は、相手に分からせるために出します。出す物はカードなどはもちろん、問題や条件など相手に理解してもらう全ての物が含まれます。

一方で、「呈示」の方は、単に相手に見せるために出します。よって、こちらは主にカードや免許証など確認やチェックをする物が基本となるのです。

また、「提示」は意味の範囲が広いので抽象的な物にも使われます。つまり、形のある物から形のない物まで幅広く含むということです。

一方で、「呈示」の方は抽象的な物は含まれません。「呈示」は、基本的に形のある物に対して使うのです。

まとめると、以下のようになります。

提示」=分からせるために出す。形のある物・ない物全て

呈示」=単に見せるために出す。形のある物

なお、新聞やテレビなどのメディアでは、提示」を使うことで統一しているようです。逆の言い方をすれば、「呈示」の方は使わないということです。

理由については、「提示」の方が「呈示」よりも広い意味を持っているからだと思われます。

元々、この二つは明治時代までは両方使われていました。特に、法律の条文では半々程度の割合で併用されていたのです。

ところが、昭和29年の「法令用語改正」によって、以下のようなルールが決定しました。

【次のものは統一して使う。「提示/呈示」⇒「提示・示す」】

ここから、各メディアも「提示」で統一するようになったのです。よって、結論としてはどちらも使うことはできますが、提示」の方がより一般的な言葉ということになります。

提示・呈示の類義語

 

「提示・呈示」の「類義語」も確認しておきましょう。

明示(めいじ)】⇒明らかに示すこと。
表示(ひょうじ)】⇒はっきりと表し示すこと。
指示(しじ)】⇒物事をそれと指し示すこと。
提出(ていしゅつ)】⇒書類・資料などを、特定の場に出すこと。
掲示(けいじ)】⇒人に伝えるべき事柄を紙に書くなどして示すこと。
提案(ていあん)】⇒議案や意見などを出すこと。また、その議案や意見。

この中では、「明示」が一番意味が近いと言えます。「明示」の方が「明らかにする」という意味が少し強いですが、ほぼ同じ意味(同義語)と考えてよいでしょう。

一般的な言葉だと、「見せる・見せつける・示す」などで言い換えることもできます。

提示・呈示の使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきましょう。

 

【提示の使い方】

  1. 無実の証拠を提示して、相手に納得してもらった。
  2. 企画の条件を提示したが、彼は乗り気ではなかったようだ。
  3. 具体的な問題を提示し、チーム全体の改善を図るつもりです。
  4. 客観的なデータを提示し、他人との差を理解してもらう。
  5. 球団側は出来高込みという条件付きで、年俸を提示した。

【呈示の使い方】

  1. コンビニで、ポイントカードの呈示を行う。
  2. 薬局に行った際に、お薬手帳の呈示を求められた。
  3. 本物の警察官か確認するために、警察手帳の呈示を求める。
  4. 学生証を呈示すると、その図書館に入ることができる。
  5. 小切手の呈示期間をしっかりと確認するようにする。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

提示」=持ち出して、相手に分からせる。(形のある物・ない物全て)

呈示」=差し出して、相手に見せる。(形のある物)

使い分け」⇒報道機関では提示」で統一。

「提示」は広い意味で使い、「呈示」は狭い意味で使われる言葉です。そのため、もしも迷った場合は「提示」の方を使うようにしましょう。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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