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年季が入る 意味 例文 使い方 語源 類語 短文

 

「年季が入る」という慣用句を聞いたことがありますか?

使い方としては「年季が入った服だ」「年季を入れたピアノだ」などのように用います。

何となく「古い」という意味なのかな?とは思いますが、多くの人が正確なイメージをつかめていないと思われます。

そこで、今回は「年季が入る」の意味や語源、類語・短文などを含め詳しく解説しました。

年季が入るの意味・読み方

 

最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。

【年季が入る(ねんきがはいる)】

長い間修練を積んで確かな腕をしている。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

年季が入る」は、「ねんきがはいる」と読みます。意味は「長い経験や修行によって、腕が上達していること」です。

簡単な短文を紹介すると、次のようになります。

「あの寿司屋の大将は、年季が入っているのでとても信頼できるね。」

いくら寿司職人といっても、全員が全員キャリアがあるわけではありません。場合によっては、5年や6年など中途半端な職人もいるでしょう。

つまり、上記の一文は「経験が長くてしかも腕がいい職人なので信頼できる大将である」という意を伝えているわけです。

年季が入った人は、経験によって色々な知識や技術を持っている人と言えます。したがって、「年季が入った人」=「経験豊富なベテラン」と覚えても構いません。

また、辞書の説明にはありませんが、「年季が入る」は「使い込まれた・古びた」という意味で使われることもあります。

この場合は、人ではなく「物」に対して使われるのが特徴です。例えば、「年季が入った車(使い込まれた車)」「年季が入った家(古びた家)」などの用例です。

多くの辞書にはこの用例は載せられていませんが、実際の文章ではこの意味で使われることが非常に多いです。これはなぜかと言いますと、一種の比喩表現を使っているからです。

比喩(ひゆ)」とは「何かを他の何かに置きかえて表現すること」を意味します。

要するに、「比喩」を使うことにより、「長い経験や修行をした家」のように「家を人に置き換えて表現している」ということです。さすがにこのままでは伝わりにくいので、「古びた家」という意味になるのです。

以上を整理しますと、「年季が入る」の基本的な意味は「長い経験や修行によって、腕が上達していること」ですが、物に対して使う場合は「使い込まれた・古びた」という意味も含まれることになります。

年季が入るの語源・由来

 

年季が入る」という慣用句で注目すべきは、「年季」という言葉です。「年季」の語源は「年季奉公(ねんきぼうこう)」という四字熟語からきています。

年季」とは「年を単位として定めた奉公する年数」、そして「奉公(ほうこう)」とは「他の家に一定期間住み込みで働くこと」を表します。つまり、「年季奉公」とは「一定の年数を単位として住み込んで働くこと」を意味するわけです。

また、「入る」は「水が入る」「ガソリンが入る」などのように「何かが注入されていること」を表します。以上の事から、「年季が入る」は働く年数が長く注入されているので、「経験があって腕が立つ」という意味になるわけです。

なお、よく間違えやすい使い方として「年期が入る」があります。

「年期」とは「一年を単位とする期間のこと」を指し、「決算の年期」などの使い方が一般的です。

この「年期」には、「年季」のように「奉公(働く)」という意味は含まれていません。言いかえれば、単に期間を表した言葉ということです。

したがって、「年期が入る」という表現は全くの誤りであることが分かるかと思います。

年季が入るの類義語

年季が入る 類義語 言い換え 対義語

 

続いて、「年季が入る」の類義語を紹介します。

熟す・熟成する】⇒人や果物が長い年月をかけて成長すること。
時代がつく】⇒時を経て、古びた感じや古風な趣がつくこと。
時代掛かる】⇒長い年月により、古風な感じが出ること。「掛かる」は「ががる」と読む。
時代めく】⇒時を経て、古風な趣が出てくること。
味が出る】⇒長い年月を経て、独特な雰囲気を醸し出すこと。
レトロな】⇒昔懐かしい様子。古い雰囲気を感じさせる様子。
風格が出る】⇒味わいや趣、品格などが感じられること。

類義語に関しては、「古びた」「趣が出た」などの意味を持つ言葉となります。

いずれも長い年月をかけている点は共通していますが、「年季が入る」には「腕が上達している」という意味まで含まれています。

したがって、全く同じ意味の言葉(同義語)というのはありません。

年季が入るの対義語

 

逆に、「年季が入る」の対義語としては次のような言葉が挙げられます。

未熟(みじゅく)】⇒経験や技術が足りないこと。
青二才(あおにさい)】⇒経験が浅くて若い男。
見習い(みならい)】⇒始めたばかりでお手本を見て習う人のこと。
なりたて】⇒なって間もないこと。経験が浅いこと。
新米(しんまい)】⇒仕事などに慣れていないこと。仕事の日数が少ないこと。
駆け出し(かけだし)】⇒物事を始めたばかりの人。
くちばしが黄色い】⇒年が若くて経験の足りないこと。※ひな鳥のくちばしは黄色いことから。

反対語の場合は、「経験が浅い・物事に慣れていない」などの意味を持つ言葉となります。

上記の対義語はいずれも「人」に対して使うのが基本ですが、モノに使うような場合は「新しい」「最新の」などが反対の言葉となります。

年季が入るの英語訳

 

「年季が入る」は英語だと次のような言い方があります。

 

skilled(熟練した)」

experienced(経験を積んだ)」

old(古い)」

archaic(古風な・昔風の)」

 

前半二つは、「人」に対して使う表現です。一方で、後半二つは「モノ」に対して使う表現です。

英語では「年季」という概念はないので、単純に「経験を積んでいること」や「古びた様子」を相手に伝えればよいでしょう。

それぞれの例文も紹介しておくと、次のような形です。

He is a skilled driver.(彼は熟練した腕の立つドライバーだ。)

She is an experienced teacher.(彼女は経験を積んだ教師だ。)

That  building is very old.(あのビルはとても古びているね。)

Some of these manners  are archaic.(これらの作法は古びているよ。)

年季が入るの使い方・例文

 

最後に、「年季が入る」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。

 

  1. それなりの年季を入れないと、一人前の寿司職人にはなれないものだ。
  2. あいつは10年ほど師匠の元で学んでいるため、さすがに年季が入っている
  3. 彼は学生時代からサッカーに対しては、だいぶ年季を入れていたようだ。
  4. 営業から紹介された物件は、いずれも年季の入ったアパートばかりであった。
  5. 新品のきれいなバットではなく、年季の入った木製のバットで素振りをする。
  6. 年季の入った中古車だったが、思いのほか安かったため購入することに決めた。
  7. 彼はいつものように年季の入ったピアノで、自分の好きな曲を演奏し始めた。
  8. この地域は年季の入ったビルが多い。そろそろ建て替えをする時期かもしれない。

 

「年季が入る」は、人と物の両方に対して使うことのできる慣用句です。ただ、実際に使う際には人よりも物を対象とすることの方が多いです。

特に家やアパート、ビルなどの古い建築物に使われることが多いです。これらの建物を古びた印象として読み手に伝えたい時に非常に便利な表現です。

ここで大事なのは、「物」の場合は語尾が「年季の(が)入った~」のようになる点です。間違っても、「年季が入るビル」のように使わないように注意しましょう。

モノに使うような場合は、「年季が入った」のように受け身の形で使うのが基本となります。

>>水を差すの意味とは?語源や使い方の例文、類語を解説

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

年季が入る」=長い経験や修行によって、腕が上達していること。使い込まれた・古びた。

語源・由来」=働く年数が長く注入されていることから。(年季は「年季奉公」が語源)

類義語」=「熟す・熟する・時代がつく・時代掛かる・時代めく・味が出る・レテロな・風格が出る」

対義語」=「未熟・青二才・見習い・なりたて・新米・駆け出し・くちばしが黄色い」

英語訳」=「skilled」「experienced」「old」「archaic」

日常を振り返ると、使い込まれたものというのは意外とあふれています。この記事をきっかけに、「年季が入る」を使ってみてはいかがでしょうか?

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。