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寄付 寄附 違い 意味 使い分け 公用文

 

相手にお金や物資などを与えることを「寄付」もしくは「寄附」と言います。ただ、この場合どっちの漢字を使えばよいのかという問題あります。

特に公用文における使い分けは迷うという人も多いと思われます。そこで本記事では、「寄付」と「寄附」の違いについて詳しく解説しました。

寄付・寄附の意味

 

まず、「きふ」の意味を調べると次のように書かれています。

【寄付/寄附(きふ)】

金品を贈ること。特に、公共の団体や社寺などに金品などを贈ること。

出典:三省堂 大辞林

「寄付」と「寄附」は、辞書だと一つの項目として載せられています。言いかえれば、「どちらもほぼ同じ意味」ということです。

寄付・寄附」とは「公共の団体などへ金品を贈ること」を意味します。

「公共の団体」とは、例えば日本赤十字社や日本ユニセフ協会などが挙げられます。これらの団体に無償でお金や財産を提供することを「きふ」と呼んでいるのです。

よくニュースなどで、「有名人が被災地へお金を送った」という事を聞くと思います。このようなお金を贈る行為は、まさに「きふ」に含まれます。

では、実際の所「寄付」と「寄附」にはどのような違いがあるのでしょうか?

もしも同じ意味ならば、わざわざ二つを載せる必要がないはずです。その辺の理由を詳しくみていきましょう。

寄付と寄附の違い・使い分け

 

寄付 寄附 違い 使い分け

まず、「きふ」という言葉は元々は「寄附」と書いていました。

なぜなら、「腑」という字には「つく・つける・授ける」などの意味があるからです。この事から、「寄って授ける」という意味で「寄附」と書いていたのです。

ところが、戦後の漢字改革の中で」は難しい漢字なので撤廃するという流れが起きました。当時はGHQの方針などにもより、なるべく簡単な漢字にしようとしたのです。

ただ、日本側もその要求を受け入れなかったため、お互いが妥協することになります。その結果、法令及び公用文で次のようなルールが決まりました。

附属・寄附・附則・附帯・附置」の5つだけは「」を使い、これら以外は全て「」を使う。

上記5つの中に、「寄附」という漢字が含まれています。

つまり、一般的には「附」という字は使わなくして、法令・公用文での「寄附」は例外的に使うということが決まったのです。

「付」という字には「わたす・あたえる」などの意味もあります。そのため、簡単な方の「付」を使うようにしたわけです。

ちなみに、なぜ「附」が残されたのかと言いますと、当時の国語審議会で日本国憲法に「附」が使われていることが判明したからです。

憲法というのは、法律よりもさらに上にある国家権力をしばるものです。そのため、「附」という字は特別に残すことになったのです。

現在でもその名残はあるため、両者の使い分けがされているということになります。

以上から、「寄付」と「寄附」には意味の違いはほとんどなく、原則として「寄付」を用いればよいという事が分かるかと思います。ただ、先述したように公用文に関しては例外的に「寄附」を用いることになります。

なお、新聞やテレビなどのメディアも「寄付」を使うことが多いです。

メディアというのは漢字の混同を避ける傾向にあり、難しい漢字よりも簡易的な漢字を好みます。そのため、「寄付」の方を使っているわけです。

使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。

 

【寄付の使い方】

  1. グッズの売上は、被災地に全て寄付します。
  2. 日本ユニセス協会へ1億円の寄付を行った。
  3. 各地を回り、1年間で100万円の寄付金を集めた。
  4. 公園を設立するために、土地が寄付された。
  5. 余ったお金は日本赤十字社に寄付する予定です。

【寄附の使い方】

  1. 内国法人が各事業年度において支出した寄附金額のうち~。(以下略)(法人税法 第第37条1項)
  2. 雑損控除と医療費控除、寄附金控除、~(略)を行うには、まず雑損控除を行うものとする。(所得税法 第87条)
  3. 会社は、寄附金を配分団体に交付するまでの間、(~略)利子その他の収入金が生じたときは、その収入金を寄附金に充てるものとする。(お年玉付郵便葉書等に関する法律 第9条)
  4. 今年の確定申告では、所得税の寄附金控除を受ける予定です。
  5. 寄附金の控除を受けるためには、あらかじめ申告する必要がある。

 

「寄付」の方は、一般的な場面で幅広く使われていることが分かります。

一方で、身近なケースでは「税金」の計算をする場合に「寄附」を使うことが多いです。「税金」というのは複雑なため、法律によってルールが決められています。

このように法律が関わる法令文などに関しては、「寄付」ではなく「寄附」を使うことになります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

寄付/寄附」=公共の団体などへ金品を贈ること。

「違い」⇒意味自体に違いはほとんどない。

「使い分け」法令文・公用文以外は、全て「寄付」を使う。

一般的な場面では、「寄付」を使えば問題ありません。「寄附」は公文書や法律文などに対して使うと覚えておきましょう。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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